メディアグランプリ

ラーメン屋の値上げから、自分自身のイノベーションを考えてみる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:武藤正孝(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「二本で、1,000円。二本で、1,000円。二十年前のお値段です」
ふと、子供のころに聞いた、さおだけ屋のフレーズを思い出した。
 
「ネギラーメン 1,100円」
私の好きな「家系ラーメン」のお店が値上げをした。
先月まで960円だったハズだ。
 
……まぁ、良い。
 
材料費や人件費の高騰などから、ラーメン屋の経営が苦境に立たされているニュースをよく見聞きする。このお店もいろいろ大変なのだろう。
 
一人の昼食代としては少し高いかな? と一瞬思ったが、今の私は「家系ラーメンが食べたい」という欲求が勝る。美味しくいただくことにした。
 
ラーメンをすすりながら、初めて「家系ラーメン」を食べた時のことを思い出す。
 

私は愛知県の田舎出身だったため、横浜を発祥とする「家系ラーメン」を初めて口にしたのは社会人一年目のことだった。
……とは言っても、もう二十年になってしまう。
 

研修のために訪れた神奈川の地で、先輩にごちそうになったのが「家系ラーメン」との出会いであった。
 

太い麵に、こってりの醤油味。ホウレンソウや玉ねぎといった具材。当時の私にとっては新鮮な感覚であり「なんて美味いラーメンなんだ」と感じたものである。
 

「あれから二十年も経つのか」と、思い出に浸りながらラーメンをすする。
 

二十年も経過しているのである。ラーメンの値段も変わって当然だ。
私の勘違いでなければ、当時は一杯750円~800円前後だったと記憶している。
 

……ん?
 
私はラーメンを食べるのを止めた。
 
……思ったよりも高くなっていない。
私の注文が1,100円だったのは、私が+160円でネギを追加しているからである。
この店の普通の「ラーメン」であれば、940円だ。
 

私が記憶している値段と比べても、二十年前から140円~190円程度の値上げなのだ。
先月までに至っては、(ネギの分を抜くと)ほぼ値段が変わらなかったことになる。
もちろん店や地域の差があるため、一概には言えないのだが。
 

「いや、二十年前の値段だぞ」
 

周囲に聞こえないような小声で独り言をつぶやいたところで、冒頭のさおだけ屋のフレーズが頭をよぎるのである。
 

「二本で、1,000円。二本で、1,000円。二十年前のお値段です」
軽トラックから聞こえてくる、さおだけ屋のおじさんの声である。
 

社会活動が正常に機能していれば、経済が発展する。経済が発展すれば収入も上がる。収入が上がれば、人件費などで物価が上がるのも当然だ。
このため「二十年前のお値段」は、日用品ではそれだけで営業トークになってしまう。
 

私は家系ラーメンにおいて、その「二十年前のお値段」の恩恵に与っていたのか。
しかも、つい先月まで。
ラーメンの値上げは至極当然であり、むしろ「遅かった」と言える。
 

ふと、私は「ラーメンが高くなったのでは無く、ラーメンの値段に私自身の感覚がついていけていないのでは?」と、妙な緊張を感じた。
 

私自身が二十年前から進歩できているかどうか、である。とくに仕事において。
 

私は自宅に帰ると、いまだに持っている、社会人一年目に使っていたノートを出してみた。
2004年4月のある日に、先輩の営業に同行させてもらった記録があった。
なお、二十年前と今の私の勤め先は、同じIT業界の会社である。
 

大阪市内、クライアント先の4社を自転車で訪問。
① 10:00 F社 コピー機、TV会議システムの提案
② 10:20 D社 コピー機の提案
③ 10:50 K社 事務用品購買サイトの提案
④ 11:30 O社 カラーコピー機の提案
 

4社目で「カラーコピー機」とわざわざ記載しているため、最初の2社はモノクロコピー機を提案している可能性が高い。
 

また、現在のようなオンラインでのコミュニケーションツールが少ない時代である。
1社目の「TV会議システムの提案」は「高度な機材にアップグレードしてみましょう」という話ではなく「まずはネットを使って会話をしてみましょう」というレベルの話である。
 

今の私の仕事で言えば、大阪にいながら東京・広島・九州の社内各部署やクライアントと、毎週オンラインミーティングを実施している。そして、オフィスにあるコピー機がモノクロコピーしかできないような代物ではない。
 
わずか5行でも、私の周囲で技術革新が進んだことがわかる。
 

だが、当時読んでいた書籍の中に、世界的な経営学者であるドラッカーの著書があり、その中に気になる一文を見つけた。
 

「イノベーションをイノベーションたらしめるものは、科学や技術そのものではない。経済や社会にもたらす変化である。消費者、生産者、市民、学生その他の人間行動にもたらす変化である」(『マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則』 P.F.ドラッカー 著/上田惇生 編訳 より)
 

これは耳が痛い。
 

技術革新は進んでいる。だが、私自身の「人間行動」を変えることができているか? と自問自答しても「できている」と答える自信はない。
 

漫然と朝から晩まで、変化のない日々を過ごしていないだろうか?
 

……そう感じた私は、数日前に参加した天狼院書店の講座で、AIの進歩に驚いたことを思い出した。
そして、まずはこの文章の挿絵を「近未来のラーメン屋」としてAIに書かせてみた。
ごくごく小さなことかも知れないが、私自身のイノベーションの一歩である。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院カフェSHIBUYA

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20番10号
MIYASHITA PARK South 3階 30000
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸二丁目18-17
ENOTOKI 2F
TEL:04-6652-7387
営業時間:平日10:00~18:00(LO17:30)/土日祝10:00~19:00(LO18:30)


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先
Hisaya-odori Park ZONE1
TEL:052-211-9791
営業時間:10:00〜20:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00



2024-07-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事