メディアグランプリ

全県民は本当に泣いたのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:堀内真弓(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 

YouTubeの再生回数2万6千回。私の動画チャンネルの話ではありません。
私の住む茨城県が2022年に、ちょっと面白い企画をした時の動画再生回数です。
 

実は、茨城県民の知り合いがいる方はご存知かも知れませんが、私たち県民は、いばらぎ県と濁音をつけて間違われることに敏感で、すぐ「いばらきだかんねー」と特に「き」を強調して訂正する習性があります。
もはや、条件反射のようで、ボケたつもりもないのに、すぐツッコミを入れる茨城県民をきっと他県民は、「茨城県民が訛っていばらぎ県って言ってるからみんな間違えるのに!」と更にツッコミを入れたい気持ちを抑え、呆れているはずです。
 

そんなこんなで、この幾度となく繰り返される「いばらぎ」県を「いばらき」県と毎回訂正する問題に、全県民は疲れておりました。
もはや、もう、どちらでも良いとさえ思っていました。話は通じるのですから…
 

しかし、知事は茨城県の言葉の由来もあることを鑑み、ここで妥協してはならないと、茨城新聞社とコラボし、つくばにある宇宙ベンチャー企業の協力を得て、2022年10月20日茨城新聞で計画を発表しました。
 

その名も、『さらば「いばらぎ」濁点宇宙発射計画』
 

その本気度に、最初はちょっと引いてしまいそうになりました。でも、こうして本格的に全国へ知られることになれば、あの面倒な訂正のやり取りは無くなるのかも! と淡い期待が膨らみました。
YouTubeでは、まず他県の一般市民達が茨城県を何て読むのか質問され、お約束通り「いばらぎ」県と答える場面から始まります。県民と、さらに茨城県知事にインタビューし、がっかりしている様子を伝えると、知事は「とうきょうが、どうぎょうになることを考えてもらえれば、その気持ちがわかると思う」とコメントしています。いよいよ、いばらぎ県濁点摘出の儀が始まります。いばらぎ県と書いた紙から知事が「ぎ」の文字の濁点の部分を切り取り、摘出した部分を色紙に貼り付けていきます。飛んでいる様子がわかるように、カメラを取り付け、バルーンで上空3万メートルまで飛ばします。儀式として真面目に取り組んでいる姿に、多少滑稽さも感じながら、茨城のため頑張っている茨城新聞社、宇宙ベンチャー企業のことを考えると、最後まで見守らねばと気持ちが引き締まります。
そして、飛ばされた濁点がきちんと宇宙上空3万メートルまで行き、地球を見下ろすまで映されるのです。これで地球上から、物理的には茨城の濁点は無くなった! 追放された! と言うことになります。ちょっと感動しました。ここまでくだらないことに、一生懸命取り組む県民は他にあるでしょうか。
 

移り住んで40年あまり、自分の住む茨城県にそれほど愛着はなかったのですが、なんだかこの動画を見て、茨城ってかわいい、なんかくだらないことに夢中になれるっていいなって思いました。
 

それこそが、今回の狙いだったのかも知れません。全国魅力度ランキング最下位だからこそ、何かアピールしたい、県民にもっと自分の県に愛着を持ってもらいたい、と出てきた奇策だったとしたら…… 地元つくばの宇宙ベンチャー企業と協力することで成功したように思います。宇宙産業の規模は現在約50兆円ですが、2030年までに100兆円を超えると予測されています。特に注目されているのが、民間企業による宇宙旅行サービスです。現在は裕福層を中心に市場が形成されていますが、将来的には一般市民にも広がる可能性はあります。宇宙に行けるなんて、ワクワクしますね。
「地球は青かった」と自分の目で確認する日が来るまでは、今回のバルーンが叶えてくれると思います。バルーンと一緒にカメラをつけて飛ばすと、上空3万メートルに到達するまでの様子がわかり、まるで自分が宇宙まで飛んでいるようなVR体験ができます。
こうした体験は、若者が宇宙への興味を持つきっかけになるのではないでしょうか。
そして、最新の取り組みをしているベンチャー企業や日本の宇宙開発の重要な役割を担うJAXA筑波宇宙センターが県内にあることを誇りに思います。
 

その他に県内の見所として、水戸黄門に、水戸納豆、ひたち海浜公園のネモフィラのブルーや真っ赤なコキアの映えスポット、四季が美しい袋田の滝、じっくり育てる味わい深い奥久慈軍鶏、百名山の筑波山、大洗水族館、北茨城のあんこう鍋や岡倉天心美術館、鹿島神宮、日本で2番目に大きい霞ヶ浦、万博のあったつくば市、JAXA筑波宇宙センター、唯一新幹線の線路が通る古河、広大な敷地の渡良瀬遊水地、台湾や沖縄にも便のある茨城空港、日本で一番野菜を作っている鉾田、日立製作所…… などまだまだ魅力に溢れる茨城県です。
 

全県民は泣かなくても,わたしは泣いた! ありがとう、県知事! スタッフの皆さん!
こんなに素晴らしい県だと再認識できました。
そして、他県民のみなさま、これからもいばらぎ県と読んでください。また、きっと知事が奇策を考えることを県民は楽しみにしております。

 
 
 
 
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2024-08-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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