美術館を家に持って帰る方法
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記事:鈴木(ライティング・ゼミ6月コース)
美術館を家に持って帰る方法
私は美術館に行くのが好きだ。
今回は、私の美術館の楽しみ方を書いていこうと思う。
というのも、最近美術館で見た展示があまりにも楽しくて、この興奮を人に伝えたいと思ってしまったからである。
美術館に行くのが趣味だと聞くと「高尚な趣味をお持ちですね」とか、「芸術的センスがある人が行くところでしょ」などと思っている人に読んで欲しい。
まず、私は絵を描くのが下手だ。絵の描き方を習ったこともない。センスもない。それは自他ともに認めているところだ。
だから、絵画の技法なんてほとんど知らないし、良し悪しもまったくわからない。
水彩画と油絵と彫刻とデッサンぐらいしか、言葉も知らない。
そんな私でも、ひとつの展示だけで2時間みっちり楽しんでしまう方法を、今から書いていこうと思う。
まず、私が絵を観ながらしていることは、これだ。
「この絵っていったいどういうことなの?」
「この人には世界がこんな風に見えてるってこと?」
「このタイトルでこの絵って、どこが?」
と、とにかく脳内で質問をしまくる。
これをすると、永遠に一つの絵を観ていられる。
私は絵を知らないだけに、わけのわからないことだらけだ。
そのわけのわからなさを楽しむのだ。
中でも、空の描写は私の心をつかむことが多い。
「空ってこんな色だっけ?」
という風景画が、本当にたくさんある。
一般的に、晴れているときの空の色は、青だ。
だけど、美術館に飾られている空の色は、一口に青と言ってしまうにはもったいないくらい、いろいろな青であふれている。
青だけで100色くらいは、余裕であると思う。
そう思って青空が描かれている絵をよーく観てみると、空の中にいかにたくさんの色が描かれているのかがわかるのだ。
灰色、黄色、緑色、オレンジ色、白色など、ここには書ききれない、青以外の色の、カケラと言うか、痕跡が見えてくる。
それを見つけると、なんだかうれしくなる。
うれしくなると同時に、
「この色にこの色を重ねてこうなってるのか。いやいや、頭の中どうなってんの」
という感情にもなる。
油絵の魅力はほかにもある。
色の履歴が見られるということは、筆の履歴も見られるということだ。
絵に描かれている絵の具を観ると、筆に絵の具をのせてどこからどのように描いたのかが、なんとなくわかる。
生まれてから一回も絵の具で絵を描いたことがない人はいないはずなので、筆につけた絵の具がどうやって紙につくのかは、なんとなくわかると思う。
それがわかる人ならば、油絵に描かれている絵の具の形をみて、どこからどうやって筆を動かしたのかが、わかることがあると思う。
「ここでこの色をのせるの? なんで?」となる。
また、見る場所を変えると、光の当たる位置が変わって、少し印象が変わることがある。
絵に光が反射しないポジションを探しながら
「この絵の本当の色はどんな色だろう?」
と探すのもおもしろい。
そうやって展示されている絵をじっくり観てから、最後にもう1周する。
言い忘れていたが、私は最低でも美術館を2周する。
なぜかというと、1周目でお気に入りの絵に目星をつけておいて、2周目で本当にこの絵が一番のお気に入りなのかを確かめつつ、ほかの絵を眺めるためだ。
1周目と2周目では、絵の見え方や、気になる絵が変わることがある。
美術館ではよく、〇〇展と言う形で、一人の画家の絵を集めて展示している。
その場合、絵を描いた年代順に展示されていることが多い。
「はじめは顔が濃い人の絵を描いていたのに、いつの間にかみんなマネキンになっちゃって、顔もつるんとして目や口が描かれてないし、三角定規まで出てきちゃって、部屋の中に部屋もあるし、どうしちゃったの?」
というように、画家が自分のスタイルを確立していった過程が目に見える。
そうやってひとりの画家が自分のスタイルを確立していく過程を観てからもう1周すると、
「この景色、他の絵でも見たような気がする」
「あの絵ってもしかして、この絵の進化系かな?」
という気付きがある。
ストーリーを知っているからこそ、お気に入りになる絵があるのだ。
そういう絵を見つけてしまうたびに、2周してよかったな、と思う。
そうして2周してから、ショップに行ってお気に入りの絵のポストカードを買う。
1枚にしようと思っているのだが、たいていそれでは収まらない。
家に帰ってそのポストカードをコレクションの中に入れる時に、ついでにほかのポストカードも見返すと、今まで美術館で自分が集めてきたお気に入りを見ることが出来る。
すると、その絵を選んだ時のことを思い出すこともあれば、逆になぜこの絵を選んだのだろう、と思う絵もある。
画家のストーリーに引っ張られて買ってしまったのだろうな、とか、この空の色はよかったなあ、とか、いろいろな感情が沸き出てくる。
こうして、家に帰ってからも美術館は続く。
***
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