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こんな時代に、紙に書く意味

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:しのP(ライティングゼミ・集中コース)
 
 

「珍しいね、紙の手帳使っているんだ」
 

職場のデスクで手帳を広げて書き込んでいた私に、同僚が話しかけてきた。
 

「昔は手帳を使っていたけど、今は使わなくなったなあ。今はこれ。全部スマホ」
 

そうだ。
紙の手帳を使う人は、めっきり少なくなった。
世代にもよるけれどもスマホ1台ですむことなのに、わざわざ手帳、持ち歩かないでしょう。
 

まさしくその通りだけれども、わたしにとっては紙の手帳は必需品だ。
紙の手帳にせっせと書き込むのにはいくつか理由がある。
 

紙のほうが、一覧性があって整理できる。
紙のほうが、手を動かすからものごとを忘れづらい。
なによりも、紙だと、ペンを使って書き込むことができるからだ。
いや、正確に言うと万年筆を使えるからだ。
 

わたしは、筆記具として万年筆を使う。
万年筆?なにそれ?昔の人が使っていたペンでしょ。
 

そう思う人がいるのも無理はないと思う。
わたしの周りでも、わざわざ万年筆を利用しているという人にはお目にかかったことがない。
 

理由は簡単で、不便だからだ。
万年筆は、ペンにインク液を注入して文字を書くことができる筆記具の一種だ。
 

ボールペンとは違ってペン先が割れており、力の入れ方でインクが出る量を調節できるので、微妙な文字の太さを調整することもできる。しかしながら液体だから、漏れたりすることがあるし、金属でできた筆先は繊細で扱いづらくもある。そのような不便さがあってなお、わたしが万年筆を使い続けている。
 

なぜなら、万年筆を利用して紙の手帳に文字を書くことは一種の心を落ち着ける行為であり、わたしのかけがえのない、大切な時間だからだ。
 

以前、新聞記事の書き写しをノートにするという作業をしていたことがあり、その時にボールペンではなく万年筆で書き写してから魅力にどっぷりはまった。そして、万年筆だからこそ、その時間が実に豊かなものになると気づいた。
 

なぜそのように思うのか、理由を3つ挙げたい。
 

まず、万年筆を使って文字を書くと、自分の文字がきれいに見える。
文字を書いていると、こんなことを思わないだろうか?
「ああ、なんてわたしの字は下手なのだろう」と。
 

以前は、ノートに書き込みするたびに自分の文字が下手すぎて何度も書き直した。いまでも、満足にきれいな字を書けない。
しかしながら、万年筆を利用すると、不思議と文字が美しくなるのだ。
どんなに下手だと思っていた時でも、「ヘタウマ」な字になる。
ペン先の個性と、インクの滲み具合、太さを調整する力加減の絶妙な組み合わせで、自分の字を好きになることができるのだ。
字を見るのが嫌ではなくなると、不思議と手帳に向かう時間が増えていった。
 

2つ目は、万年筆本体が持つ美しさに心惹かれるからだ。
伝統的な筆記具である万年筆は、様々なメーカーからたくさんの種類の万年筆が発売されている。日本のメーカーも多くの万年筆を作っているけれども、海外のメーカーでも種類が多く、コレクションしたくなるものだ。
定番万年筆から、限定品まで、実に多様な製品があり見るものを楽しませる。
イタリア製は見た目が美しくうっとりするし、ドイツ製は安定感が抜群。アメリカ製はスタイリッシュで日本製は機能的、などメーカーの特徴を楽しめる。
 

繊細なペン先は職人の手作業で、そのような手仕事を楽しめるのも特徴だ。ノートに書くときにカリカリ、シャリシャリ、ぬらぬらと。万年筆によって異なる様々な書き心地が、わたしの時間を豊かにする。
 

3つ目は、インクだ。
万年筆には、繰り返しインクを入れる。
インクがなくなったら、インクを注入するのだ。
面倒とも思えるこの時間が、私にとってはある種の儀式のような、瞑想のようなものである。
背筋を正して、呼吸を整えて、1分程度集中して万年筆にインクを吸わせる。
そして、いれたてのインクを、万年筆を通して、紙にしみこませていく。
 

また、色の種類も豊富でインクの色は黒、青が定番としてボールペンと同様にあるけれども、それぞれのメーカーが様々な色を出していて、これを選ぶのがものすごく楽しい。
特に色の名前には文学的であったりお洒落であったり、想像力をかき立てる名前がついていて、ついつい集めたくなってしまうのだ。
 

手帳に書くことを通してこのように万年筆の魅力を知り、そして万年筆の魅力をしったからこそ、手帳に向かう時間がより豊かになった。
忙しいとき、頭がぐちゃぐちゃしているとき、もやもやしているとき。
自分に戻るための、かけがえのない、私の時間である。
 

万年筆に魅力があるからこそ、机に向かい、手帳を広げ、万年筆にインクを入れて、書く。
わたしは忙しさからしばし離れて、没頭するのだ。
 

ここまで万年筆の魅力を語ってきたが、もちろん万年筆である必要はない。
ボールペンでも、鉛筆でもいいのだ。ただ、紙にものを書くという体験は、道具によって拡張され、あなたの時間をより豊かにする。
そして、そこに万年筆を加えてみるのもよいかもしれないと、私は思うのだ。
 

ぜひ、紙に書いてみるのはどうだろうか。万年筆を使って。
あえて、紙に書いてみるのだ、こんな時代に。

 
 
 
 
***
 
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2024-08-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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