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若さと可能性について

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*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

絶対麗度ビューティー・レコーディング・ラボ

記事:izmy(絶対麗度ライティング)
 
 
職場の同じチームに15歳年下の女性が中途入社する、という情報が入った。
「うわっ」と思った。
8名のチームで7人男性、女性は私一人。男女比率にかかわらず、仕事は対等に進めているつもりだが、体調のことや心の動きなど、同性だからこそ共感できることがある。そんなことを思っていたこの頃だったので、このニュースは喜ばしいことだけど、なんだか心がざわついた。
 
ざわついた理由はなんだ?
女性として、ちやほやされるポジションを奪われる?!
……いや、別に今もチヤホヤされてないし! 飲み会では、男性陣が私の前でも堂々と中学生男子が話すような下ネタを披露するくらいだ。性別「女」というカテゴリでは一応認識されているけど、良く言えば「大人」として安心されてしまっている。
 
恋愛トークが好きな同僚(既婚)が、とある飲み会の挨拶で「20代の女子をうちのチームに入れて、Aくん(独身)とくっつけて、それを見届けた後に、僕は転職します!」と得意げに言っていたのを思い出した。
あー、もうこの時には彼女は採用の目途があったんだな。話がつながった。
そして、同僚の思惑通り、彼女はAくんと同じ仕事の担当になるらしい。
Aくんは「自分は自分」と独自路線を貫いている。言われた仕事をきっちりこなして、先輩や上司には迎合しない。もちろん、この飲み会にも来ていない。Aくんがいるから私も仕事が終わったら無駄に残らずサクッと帰るし、「先輩や上司に全部付き合わなくては!」とか思わなくなった。もし彼が彼女と良い仲になってゴールインでもしたら、最後の砦がなくなる。なんと、チームで独身は私ひとり!! 地球上でひとり、みたいな感覚だ!!
……いや、これもちょっと冗談交じりに大げさにコメントしたくらいだから、本当はどちらでもよい。
 
いろいろ考えを巡らせていると、斜め前の先輩の席のもとに、やや若手の男性社員がやってきた。
ふたりでひそひそと楽しそうに話している。
「どんな人なんですか?」
たぶん彼女のことだ。そして、先輩は彼女の年齢を話した。
「えー! みんなかっこよく見せようとスーツ着だしたりして!」
盛り上がっている。
 
次に先輩の席にやってきたのは社内の上席。ゴルフ焼けですらっと背が高いが、「○○大佐」と昔呼ばれていたくらいに見た目も圧がある。
「若手が来るね! 誰の下につくの?!」と大きな声で話しかける。
先輩は、恋愛トークが好きな同僚を指でさす。
「へーっ! 金の卵だね! 大事にしなきゃ!」
 
実際に彼女に会っているのは、ほんの数名。
会わなくても「女性で若い」が、すでに華。
男性たちがウキウキしているように見えた。
 
心がざわついた理由。
「若い女性」という属性が独り歩きして、実際に会う前から男性陣が浮き立つ様子を見て、結局おまいらも若い女性がいいのかー! と辟易する気持ち、だった。
 
この日は仕事場を早々に離れた。元同僚との久々の再会の日でもあるが、待ち合わせまで時間があった。気分転換にドトールでシャインマスカットのヨーグルトシェイクを飲みながら「若い」ことの魅力について思いを巡らせる。
肌ツヤ、ハリ感、瑞々しさ、とか? うん、コスメでこれらのキャッチフレーズがあったら飛びついてしまう。
生成AIに尋ねると「健康である」とか「新しさや柔軟性」といった回答もあった。これらは必ずしも年齢とは紐づかないが、そういう傾向にあるとのこと。
 
もっとも若い「生まれたての赤ちゃん」に出会うと、思わず笑顔になる。
かわいい、のはもちろんだけど、尊さを感じる。
この子はどんな人生をこれから送るんだろう? どんな大人になるのかな?
思わず未来を想像してしまう。赤ちゃんならどんな未来も無限大に想像できる。年齢が若いほど、その未来の幅は広い。
若いことの魅力は「可能性」につきるのかもしれない。
 
私の所属チームは、中途採用者のみで構成され部署異動も少ない。平均年齢40歳で、もう今さら辞めないだろうと思われる人たちが集まっている。
「可能性」よりは「先が見えている」ことの方が多い。先が見えている、ということは、安定感にも繋がっていて、安心して仕事ができるというプラスの側面もある。
そんな組織だから、「可能性」を感じられる存在が新鮮なのだ。
若手社員が歓迎されるのは、伸びしろが大きく、様々な可能性を秘めていて、成長が期待されるから、ということだな。
私は自分の心のざわつきに対して、男女という区別を超えた結論が出た。
男性社員たちのウキウキはさておき、新しい仲間が心地よく過ごせて、仕事を通じて自己実現や楽しさを感じてもらえるよう、私もサポートしていきたいなと思う。
 
しかし……
私には未来への「可能性」がないわけではないけど、可能性の幅が狭まっていることには寂しさを覚える。専門性が絞れてきた、とも言えるけど、若さにはかなわない、過ぎ去った春だなぁ、という気持ちが残ったまま、ドトールを後にし、駅前の待ち合わせ場所に向かった。
 
「お久しぶりです! わぁ! なんか雰囲気変わりましたねー!」
笑顔で元同僚が声をかけてくれた。会うのは1年ぶり。
「えっ?! そうかな? ちょっと痩せたからかな。」
「そうなんですね~! うらやましいです」
私は「絶対麗度の効果かな?」と頭をよぎったけど、それはシークレットにしているので、ホットヨガでやせた話を力説しながら街を歩き、お店に向かう。
5歳年下の元同僚とはプライベート時間でご飯を一緒に食べるのは初めて。まずは、仕事場の話、最近行った旅行先の話などを楽しんだ。
元同僚はしばらく会社を休んでいたこともあったので、この時間は気軽な感じで過ごしてほしいな、と思った。自分からオープンにしようと、昇進できなかったこと、つい最近のプレゼン中に緊張で手が震えてマウス操作ができなかったこと、婚活がうまくいかなかったこと、演劇を始めたこと、そして「独身のままだけどドレスは着たかったからウェディングフォトを撮ったんだー!」と、ドレス姿で足を組む白黒の写真を見せながら話した。
その写真を見つめ、「えー! かっこいい!!!」と満面の笑みでほめてくれた。
婚活話に対しては「結婚は煩わしそうですよね~。今はいろんな幸せの形がありますよ」とドライに反応していた元同僚がウェディングフォトには前のめりに「いくらですか?」「あとで写真とリンクください!」と質問してくれた。
そして
「わぁ~。もう希望を感じました」
「えっ?! 希望?!」
「はい! こんなふうに自分の人生を楽しんでいて、自分もこうなりたいわーと、未来への可能性を感じました」
 
ただ単純に、素直に、嬉しかった。
気遣って称賛してくれる彼女の優しさも感じながら「そんなふうに言ってくれて、ありがとう!」と、こそばゆい気持ちを飲み込むようにグラスを傾けた。
 
私にも可能性は、ある。
若さの特権かのような「無条件に与えられた、無限大の未来への可能性」は、大人になればなるほど無くなる。10代や20代の頃とは違う。
だけど、楽しもうとすれば、お金を貯めて、ダイエットをして、秘めフォトウェディングのようなイベントにも参加できる。
「ウェディングドレスを着た美しい自分」という夢が叶ったのだ。(このとき、結婚しなければウェディングドレスを着てはいけないのでは? という固定概念を捨て去ることができ、プレッシャーからも解放された)
世の中にはさまざまなサービスがあるから、探しに行けば何かしらフィットするものに出会える。良い時代だ。
 
もしかして、大人だからこそできるのは「可能性を創る」ことなのではないか。これまでの経験があってこそ「こういう選択肢もあり!」と自ら実例になることもできる。もし、自分が選びたい未来に前例がなかったり、過渡期なら、自分で創っちゃう!
 
現実には、目の前のことに手一杯で、生き延びられたら十分、という日々だけど、過ぎ去った若い年代を羨むよりも、自分で自分の未来の可能性を創りに行くぞ! 大人技を発揮してやるぞ! というくらいの心意気で過ごしていきたい。
 
 
 
 
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この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。

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2024-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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