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ベースの意味を知らなかった僕が知らなかったこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:村人F (ライティング実践教室)
 
 
「ベースって何の意味があるの?」
 
X JAPANを聴きながらそんなことを抜かしていたのは高校時代の僕だ。
ファンからしてみたら何言ってんだコイツと言われかねない暴言だろう。
 
ただ世間一般の知名度からしてもかつての僕の疑問は仕方がないものだと思う。
そもそも「ベース」が「ベースギター」という楽器の略だと知っているのはバンドに詳しい人くらいではないか?
 
ギターとドラムは音も演奏者も目立つからわかりやすい。
しかし、それに比べると「ベース」は地味だ。
形もギターと同じだし、ベーシストも玄人好みの人が多い。
OKAMOTO’sのハマ・オカモトや吉田一郎不可触世界など、名前からしてマニアックな感じ全開だ。
 
なにより、音が全然わからない。
低音部を担当していることは知っている。
しかしX JAPANなどドラム、ギター、ボーカルが爆音で演奏している状態では全然聴こえなかった。
だから存在意義も理解できていなかったのである。
 
ただ、そんな僕もいつの間にか「この曲のベース、いいなあ」なんて言っちゃう大人になっていた。
それどころか当時の己に1時間くらい語りまくりたいレベルになっている。
なぜそんな変貌を遂げたのだろうか。
 
このキッカケは、ベースソロをちゃんと聴いたことだったと思う。
 
曲はアニメ『進撃の巨人』のOPの『心臓を捧げよ!』だったか。
とにかくその中でベースだけが演奏するシーンをハッキリ聴いた。
 
カッコよかった。
お腹にズンとくる低音の振動。
ギターじゃ出せない太いけれど響く音波。
ジャカジャカ鳴らすわけでなく1音、1音を丁寧に鳴らす奏法。
 
とにかく凄いと思った。
 
そして同時に気が付いた。
「ベースってこういう音がするんだ」と。
 
それから他の曲を聴きなおしてみる。
たしかにベースがいた。
他に比べたら目立たない。
けれども抜けてしまったらすべてが崩れる。
そういうまさに、土台としての位置にベースがある。
この存在意義をようやく知ることができたのだ。
 
これだけ聞けばいい思い出と言えるだろう。
しかし、高校時代を振り返るといただけない姿勢があったなとも思う。
「ベースって何の意味があるの?」
そう疑問に思った僕は、そもそもベースの音も知らなかったのだ。
そして、その状態で「意味がない」なんて言っていた。
 
このスタンス、他でもよくやりがちではなかろうか。
 
楽器だけでも「ドラムセットにあんなにドラムある意味があるの?」、「オーケストラのバイオリンは多すぎない?」みたいな例が出てくる。
分野を変えたら「数学を勉強する意味は?」なんてのもあるだろう。
 
このように「意味があるの?」という質問は、結構でてくる。
しかし改めて考えてみると、それを聞く前に、そもそも何なのかちゃんと理解できているだろうか?
というか、ベースのように音すらわかっていない状態で疑問に思っていないか?
 
そういう危機感を覚えたわけである。
 
ただ逆にいえば「意味がわからない」という質問への答えは、思った以上にシンプルな可能性も高いのだ。
つまり試しに聴いてみれば、大体わかる場合も多い。
 
例えばドラムが大量にある理由は、核になる太鼓の音を何種か聴けば悟れる。
足で叩く一番大きなバスドラム。
独特な中音域が目立つスネア。
チッ、チッ、チッと小粋にリズムをとるシンバル、ハイハット。
こんな感じでキーとなる楽器の音を抑えるだけでも、ドラムセットの見え方がだいぶクリアになってくる。
 
他も同じだ。
「意味がわからない」と匙を投げる前に、そもそもそれが何なのか触れてみる。
それだけで一気に見えなかった世界が開ける場合も多い。
 
すると過去何回も聴いてきた曲がまた別の色を出してくれる。
 
ドラムとギターがガンガン鳴り響くなかで、縁の下の力持ちと言わんばかりに全体をベースが支えている様子。
しっかり耳を立てれば、確かに存在しているのだ。
そしてなくてはならない音だと理解できる。
このように世界が一変するわけだ。
 
そのキッカケになったのは、ベースの音をちゃんと聴いたことだった。
「何の意味があるの?」と疑問に思いつつ、そもそもどんな音なのかすらわかっていなかった楽器とちゃんと向き合ったことだった。
 
ただ、それだけで僕の音楽体験は数百倍、豊かになった。
そう考えると、低レベルに聴こえる「意味が分からない」という質問も世界を広げる大事なカギと言えるだろう。
 
その解決の道は、それが何なのかちゃんと向き合うこと。
楽器ならば、ただ音を聴くだけで済んでしまうレベルの話である。
しかし、それだけのことでも世の中は思った以上に豊かだったと気づける。
 
あなたの周りにある「意味不明」もそうかもしれない。
試しに1つ、触れあってみてはいかがだろうか?
 
 
 
 
***

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2024-08-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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