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未来の自分のために今できる最高の投資とは?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:服部達哉(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

 「今さらバイオリンなんて始めたって、プロになれるわけでもないし、どうするつもり? ピアノとかはボケ防止にいいっていうけど。練習だレッスンだと時間とお金を使い込んで、他のことができないじゃない」
 
 バイオリンを急に始めた自分に、妻はことあるごとに問いただしてくる。単なる憧れだけからバイオリンを始めてしまったのはいいものの、こう聞かれると自分でも困ってしまっていた。これまで音楽と無縁の生活をしてきた自分にとって、人前で演奏したいという思いはない。楽器やレッスン料、毎日の練習時間にお金と時間がかかるばかりなのも事実だ。バイオリン練習時間がなければ、他にできることがたくさんあるのも事実だ。自分は一体なぜバイオリンを始め、続けているのか?
 
 何より自分を納得させられる理由が欲しかった。理由を探す? 大人は何をするにも理由を求められるものだ。子供は単に好きだから、面白いから、という理由でやりたいことをやるものだ。大人になると、そうはいかない。簡単に「趣味で」、では周囲の同意を得られないこともある。そもそも自分を納得させられない時だってある。やりたいと思いながら、やって意味あるのか? 時間とお金の無駄では? と、何かとやらない理由、言い訳を考え出して新しいことを始められなかったりする。それでもやることで何か良いことがあるとすればモチベーションもわくというものだ。脳にとって良い影響があるならやらない手はないではないか。こうして楽器演奏が脳に与える良い影響を探してみようと思った。
 
 それにしてもバイオリンに限らず、楽器演奏というのは大変な作業だ。右手と左手が別々のことをするのはもちろん、それを楽譜を見ながら、時には他の楽器と合わせながら、リズムを保っていかなければならない。上級者となればそこに自分の感情まで込め、同じ曲でも演奏者によって、また、同じ人でも演奏の仕方で印象がガラリと変わってしまう。演奏を始めたら基本的に止まれない。止まってしまった時点で音楽も止まってしまう。終わってしまうのだ。音楽として成立しなくなってしまう。
 
 そう、楽器演奏は脳に大きな負荷がかかるのだ。練習していてもあまりのできなさに悲鳴を上げたくなるほど。いや、実際に悲鳴を上げたことが何度あったことだろうか……。身体だけでなく、むしろ脳が疲労することを感じるほどだ。今まで感じたことのないほど脳を使っている感覚がある。
  
 この感覚を頼りに調べてみると、出るわ出るわ、様々な研究結果が。まず、楽器を弾くというのは、思っていた以上に脳のあらゆる領域を使っていることがわかった。弾くこと自体は運動、音を聴くことは聴覚、楽譜を見ることは視覚、楽譜を理解することは言語、楽譜や演奏方法を覚えるということは記憶力、といったように脳のあらゆる領域を使わないと楽器を弾くことはできない。楽器演奏には当然集中力が必要なため、集中力も鍛えられる。つまり、楽器習得には脳のあらゆる領域を鍛える要素がつまっているのだ。鍛えられた脳は、楽器演奏以外の日常生活での記憶力、問題解決力を高めることがわかっているらしい。
 
 何事においても子供の脳に大人の脳は勝てない。脳は年齢とともに衰えていくだけ、なんていわれていたのはもう過去の話。大人になってからだって脳は良い方向に変えられる、なんてコンテンツは世の中にあふれている。
 
 大人が楽器を始めることのメリットは、脳の柔軟性が高められ、新しいスキルの習得を簡単にすることにある。これは年齢に関係なく、脳を若く保ち、新しいことに挑戦する適応力を向上させてくれる。楽器演奏には他者との関わりも含まれるため、協調性やコミュニケーション能力が自然と養われる、なんて効果も期待できる。一言でいうと、楽器演奏は脳の機能低下を遅らせ、脳の健康維持と老化防止に効果があることが示されているのだ。
 
 「飽きずによく続くねー。どこを目指しているの?」と、また妻がからかってきた。
 
 「脳トレだ、なんていってスマホゲームをしているきみと同じ理由だよ。脳の健康のためにバイオリンを続けているつもりだよ。楽器演奏が脳に与える良い影響を与えるっていう研究結果は多いんだってさ」
 
 「そう? 私もスマホゲームですっごい頭使ってるんだけど」
 
 「楽器演奏ってのはね、脳全体を使うし、身体だって使ってる。最近ではいろいろな研究で楽器演奏っていうのは脳の健康維持と老化防止、認知症予防の効果まであるって話だよ。認知症になるリスクを60%近く減らす効果があるっていう研究もあるくらいなんだ。健康維持、老化防止、予防、っていう話だけでなく、脳を活性化させて頭が良くなるっていうんだから、やらない手はないと思うんだけどね。スマホのパズルゲームを脳トレのつもりでやっていたときより、バイオリンを始めてからの方が脳が活性化してる気がするし、集中力も増したようにも感じるんだよね」
 
 趣味は好きなことをやればいい。ストレス発散、リラックス効果が得られるだけでも十分とは思うものの、それ以上の意味を求めがちなのが大人だ。楽器演奏では難しすぎて、できなさすぎて、自分の出す音がひどすぎて逆にストレスになったりもするものだ。それでも楽器練習を続ける自分の目的、モチベーションとなっているのは脳のためだ。誰にでも宣言するわけではないけれど、自分では納得した。楽器を続ける理由はこれだ。
 
「きみもボケたくはないだろ? だから、バイオリンを弾くことで未来の自分を守る。それって今できる最高の投資だと思わない?」

 
 
 
 
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2024-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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