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アラフォー独女がマッチングアプリで見た、一見モテそうだが残念な男性~注釈男


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:加藤 真矢(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

30代を既婚者の慰み者にされてしまい、長らくの傷心期間を経て40代からマッチングアプリを始めた私は、厳しく値踏みされる世界の洗礼を受けていた。
お会いする前にLINE交換を持ちかけられ、「LINEはお会いしてから」とやんわりとお断りしたらブロックされる、過去の恋愛遍歴を根掘り葉掘り聞かれ、辛い思いをしながら正直にお話ししたらブロックされるなど、まともに会えた試しもなかった。
 
年を取るとそもそもお会いすること自体が難しいのかという現実に疲弊していた中、現れたのがこの方だった。
 
「先週はワーケーション(バケーションとワークを掛け合わせた造語)として長野県で涼しく仕事していました!」
「仕事はベンチャーキャピタルというベンチャー企業に投資をする仕事をしています!」
 
いや、それぐらい知っとるがな。
仮にも私は大手企業勤務で、一人で生きていけるぐらいの収入はある。
プロフィールからその人のおよそのリテラシーも想像できないのだろうか。
会話にいちいち「解説」が入るこの方を『注釈男』と裏で名付けてやり取りを始めた。
 
お互い出身地が同じで、ある時、地元の酒蔵に行ってきたという写真を送ってこられた。
日本酒好きの私が興味を示したところ、
 
「何本か買ってきたので、ノリと勢いで提案しますが、飲んでみます? もしお互い関心ありということであれば、お茶しながらお話しできたら~」
 
えっ? 初対面でいきなりそんな高価なものを?
面食らいつつも、関心はある。
戸惑いながらOKをし、もし本当に初対面で日本酒を持ってこられたら恐縮してしまうので、日本酒に合うおつまみを手土産で用意して、待ち合わせ場所へ向かった。
 
待ち合わせは某高級ホテルのラウンジ。数々のドタキャンに遭ってきた私は、場所も何だかすごい所だし、無事に会えるのだろうかと訝しがりつつも、ドキドキしながら向かった。
 
果たしてその方は居た。
一足早くいらして席を確保してくださり、颯爽と迎えにきてくださった。
 
「いやあ、○○社にお勤めの方だったとは! 大変失礼いたしました!」
 
自己紹介をしてお互いの素性を明かすとがらりと態度が変わったことが気になったものの、さすがにリアルの会話に「解説」が入ることはほとんどなかった。
果たして本当に日本酒を持って来られたので、「お返しに」とおつまみをお渡ししたところ、「これは、確実にお酒に合うやつじゃないですか!」と喜んでくださった。
 
仕事内容が近しいこともあり、お話上手で会話も盛り上がる。
ベンチャーキャピタルの仕事について、未来の産業の種を作っていく仕事だと日頃感じているので、
 
「夢がある仕事ですよね」
 
とこれは本当に素直な心で、申し上げたところ、
 
「そうなんですよ!」
 
と饒舌に、お仕事で出会ったベンチャー企業経営者のお話など、活き活きと語ってくださった。
 
お話上手で、あれよあれよと2回目の約束に持ち込まれて、初回デートは無事に終了した。
 
2回目は平日ディナーデートで、単価が渋沢栄一クラスのそれなりのお値段の和・洋のレストランをいくつか提案頂いた。
一応、私を真剣なお相手候補として見てくださっているのか、お気持ちが嬉しかった。
 
リクエストしたイタリアンに向かうと雰囲気がとても素敵な所でテンションが上がる。
 
「私、ワインはあまり分からないので、お料理に合わせて選んでいただけますか?」
 
とお願いしたところ、張り切って選んでくださった。
きっと「解説」がしたいんだろうなと思ったので。
 
仕事内容が近しいことから思いがけず共通の知り合いもいて、話は盛り上がる。
時々、会話の端々に
 
「○○って、知っていますか?」
 
と、やはり「解説」がしたくてウズウズする空気を感じるが、申し訳ないが私はほとんど知っている。
微妙な違和感はありつつも、お話上手で、
 
「この後、お時間はありますか?」
 
とあれよあれよと2軒目に持ち込まれることとなった。
 
向かった2軒目は文壇バー。ロマンティックな夜景とかではなく、渋めの選択だったことに惹かれた。カウンター席がいっぱいだったのでテーブル席で。
 
「プライベートのお話をしてもいいですか?」
 
と離婚歴があることから、離婚に至った経緯や、お子さんがいることも聞かされる。
それはプロフィール上で隠しておられたので、なんだかモヤモヤとしてしまった。
その後も会話の端々に
 
「○○って、知っていますか?」
 
と「解説」をしたいウズウズが続く。大変申し訳ないが、段々と竹輪の耳になってしまった。
 
カウンター席が空いたので移動すると、さり気なく距離を詰めてこられたように感じ、気持ちが離れてしまった私はそっと距離を取った。
 
お店選びもスマートで、女性が喜ぶような気遣いもできる稀有な方だと思ったのだが、どうにも気を許しきれない違和感が何なのか、自分でも分からなかった。
しかし、知人から、
 
「そこに真矢さんがいない」
 
と言われて腑に落ちた。
 
「こんな難しいことを知っている、俺すごい!」(ドヤっ)
「こんないいお店を知っている、俺すごい!」(ドヤっ)
 
であると。別に相手が私でなくても成立する会話であると。
 
努力をして色々なことを知っておられること自体はすごいことであると思う。
しかし、こと男女関係においては、
ほかならぬ「自分」に対して関心を示してくれることにときめきを感じるものかもしれない。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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