「若草物語」のベスの姿に、子育てを学ぶ
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記事:せきやようこ(ライティングゼミ9月コース)
「若草物語」に出てくる4姉妹の中で、三女のベスという少女は、その内気すぎる性格のゆえ、学校に行かず、家庭で過ごしていたらしい。
子どもの頃に見たアニメでその設定を聞いた時は、「ふうん」としか思わなかったが、数年前にこの小説をたまたま読み直した時、次男と重ねてしまった。
次男は、今年で丸8年間、学校に行っていない。学校に行けなくなったのは、小学2年生の時。ただ次男はベスと違って、お友達ともよく遊ぶ、外交的な性格だった。それが、学校になぜか突然行けなくなった。さらに、人を避け、家に引きこもるようになってしまった。
その引きこもっていた時期に、たまたま若草物語を読み直した。「ああ、ベスってそう言えば、内気だから学校に行かなかったんだっけ」と思うと同時に、「ベスが平和に過ごせるなら、家で過ごせばいい」という雰囲気の家庭に、自分にはそんなこと出来なかったなと思い、頭が下がる思いがした。次男が学校に行けなくなった初期、私はなんとかして学校に行かせようと、説得したり、脅したりしてしまったから。
ただ、自分を責めるためにこのことを振り返ったのではない。若草物語を読み直した時、ベスと次男とを重ねた時も、自分を責めるための材料にしたわけではなかった。
単に、「今も昔も、日本も外国も、やっぱり学校に行かないって選択肢は、めずらしいことなのかもしれないな」と思ったのだ。
もちろん、ある程度学校に行けるという平和な状況に社会が育っていたり、経済的に落ち着いていたり、という前提はあるにせよ。
私もそうだったが、子どもが突然「学校に行かない」「学校に行けない」となると、世間から取り残されたような、まるでレールを外されてしまったような不安に襲われる。ましてや外に出られない、人と関わりたくない、となればなおさらだ。そして、多くの人が似たようなことを思う。「外国なら、もっといろんな学びの選択肢があるのに」と。
だが、本当にそうだろうか。確かに選択肢はある。でも、やはり「学校」という形態は、子どもにある程度の水準の教育を、少ない教師の人数で行うのにとても便利だ。だから、たとえ海外であっても、「学校以外で学ぶ」という選択肢って、思っているよりもふわっと選べるものではないんじゃないだろうか。
根拠はないのだけれど、「若草物語」を久しぶりに読んだ時に、ふとそう思ったのだ。
それならば、一番大事なのって、親が子どもを真正面から見て、自信を持ってその子に合った学び方を尊重することなのかもしれない。
今、私は母なので、4姉妹の母親であるマーチ夫人の気持ちがどうだったのだろうか、と想像してみる。内気すぎる娘に、心配が一切なかったわけはないと思う。まだまだ女性の社会進出など遠く、結婚して家庭を支えることが当たり前とされていた時代だ。そんな時代に、家族以外の人との関わりを拒否する娘のことは、誰よりも心配だったのではないだろうか。
でも、マーチ夫人は、ベスの良さを認め、ベスの良さを生かすことを尊重した。それって、いつどうなるか分からない将来のことではなく、今、目の前にいるベスが幸せであることに集中したのではないだろうか。
ある日はベスの寝顔を眺めながら、ある日は家族の前だけでピアノを弾くベスの横顔を見守りながら、大きな不安に襲われることもあったのではないか。でもその度に、「無理やり外に連れ出すことは、今のベスには良くない」「今無理をすることが、ベスの将来に良い影響を与えるとは思えない」という思いがあったのではないだろうか。さらには、「たとえこのままずっと、家族としか触れ合えなくても、私たち夫婦がベスを守って行く」という覚悟があったのではないだろうか。
結局ベスは、若くしてこの世を去る。物語だから、結果がわかっているから言えることかもしれないが、それを思うとマーチ夫人の選択は、大正解だったと思うのだ。生きている時間は短かったけれど、ベスは幸せだったと思う。しかも、お隣のおじいさんや、近所の貧しい家族との親交を深めることさえした。全く人と関われないのではなく、一度に沢山の人に広げるのがしんどかったのでは、と勝手に推測する。そして、ベスが家族以外に世界を広げることが出来たのは、家庭の中で、安心して自分というものを少しずつ確立できたからではないかと思う。
不登校初期にあれだけ人を避けていた次男は、いつしか人との関わりを求めるようになった。まだ学校には行っていないので関わる人は少ないが、彼なりに少しずつ友達も増えた。外出時に店員さんや近所の人に話しかけたり挨拶をしたりするのも、家族の中で、次男が一番ハキハキとして、率先して行う。
子どもが人とあまり関われなくなると、親は確かに心配だ。けれど、親が子どもをありのままで認めて、その時々で子ども自身を尊重していくことで、子どもは自分なりに空を破り、成長していくものなのではないか。
今では行きたいところがあれば、ふわっと出かけられる次男。彼にとって、ベスのように家庭が安全基地になってくれているのならば、とても嬉しい。
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