メディアグランプリ

家事の苦痛から救い出してくれた物語の扉


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:izmy(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

なぜ、私がやらねばならないのか?
家には他に動ける構成員がいるのに、家事のほとんどを担っている。やっても感謝されない。放置したら誰もやらない。むなしさと疑問で頭がいっぱいになり、常にイライラしながら作業をこなしていた。
 
一度、家事の分担を交渉してみたことがあったが「いや、やらなくても死なないし」「別にやってくれなんて誰も頼んでいない」と言われる始末。分かってもらえなかった、もう、頼れない、という寂しい気持ちと、うまく事を運べなかった自分の力量不足に腹立たしくなった。分担を成功させるまでの心労を思うと、分担はあきらめ、自分ひとりで暮らしていてもやるであろう、最低限必要な家事のみを他の家族分も一緒にやることに決めた。
 
自分で決めたこと、とはいえ、苦痛であることに変わりはない。
「この家事さえなければ、もっと仕事に集中できるのに、趣味の時間も取れるのに……」と自分の時間が奪われているような思いが頭から離れない。
 
そんな日々の苛立ちを忘れさせてくれたのは、想像の世界に広がる新たな物語たちだった。オーディオブックという素晴らしいアイテムが、脳内にドキドキと感動と発見を授けてくれた。話題の小説やビジネス書、有名受賞作品、古典など様々な書籍が月額約1500円で聴き放題のスマホアプリサービスであり、「聴く読書」だ。
 
作業をしながら、本を開いたり、テレビや動画を観ることは難しい。
読書は好きだった。しかし、時間がないという理由で、社会人になってから読書量が激減した。本を読む、といったら仕事で活かせそうなビジネス書か自己啓発本で、年間で10冊以内を読み終える程度だ。
自分の知識量や興味の幅も狭まっていて、会話の話題も乏しくなり「なんだかつまらない人間になってきたなー」と感じていた。
 
天狼院書店さんの講座の中で度々話題に上がっていた「オーディオブック」
散歩や作業をしながら読書ができて効率の良い新たな読書の形、とのこと。ブルドッグが走るCMも印象的で気になっていたが「紙の本の方が頭に内容が入るのでは?」「普段ラジオも聴かない私がなじめるだろうか?」と違和感を並べて、すぐには試さなかった。
しかし、「オーディオブックもAIも、新しいサービスは試してみるのがいいよ! 使えるものだったらラッキー。無料体験期間でお試しできるサービスもあるし、合わなかったら、やめればいいんだもの」と楽しそうに話す講師の言葉に背中を押されて、オーディオブックのアプリをインストールしてみた。
 
最初に選んだのは「イーロン・マスク」
480ページの大物を選んでしまった……でも、世界的有名人の人生を覗いてみたくなったのだ。
家事の時間はもちろん、着替え、ヘアスタイル、メイク、徒歩での電車の乗り換え、庭仕事などのシーンでも聴くことができる。日々のやらねばならない作業量は変わらないのに、1日あたり1〜2時間も読書ができるようになった。ルーティン作業中は、耳と頭が暇している。作業もできて、読書もできて、まさに一石二鳥。お気に入りは、小説やエッセイ。朗読者が情緒豊かに語ってくれるので、情景が鮮やかに浮かび、感情移入もしやすい。語り口がおもしろいと、くすりと笑ってしまう。
 
イライラしながら家事や支度をこなしていた苦痛な時間は、楽しみな時間に変わっていった。
 
庭の草むしりをしながら、湊かなえさんの「サファイア」を聴いた時は、次々に起こる想定外の展開、人間の感情の恐ろしさ・希望・温かさが入り混じる描写に心を奪われた。「続きが気になる! でも、もう、ここには草がない!」と話の展開にドキドキしながら、庭中の草を探しては引っこ抜き、登場人物のセリフにハッとして、を繰り返す。土だらけのモンペ姿の私は、ラストシーンに感動で涙し、しばらく近くの石に座って余韻に浸っていた。
 
家事やメイクは日々の必須タスクなので、おのずの読書も習慣化された。
1週間でおよそ1冊読み切り、半年で約30冊、総計約8000ページを読了した。
 
読書を再開してからは好きな作家さんも増え、読書好きな人との会話も弾むようになった。物語の登場人物を応援したり、逆に違和感を持つことで考え方の幅が広がり、自分の人生もオリジナルな物語のひとつ、と、少しずつ受け入れられるようになった。
 
いまだに家事は好きではない。
家族のために働けて幸せ、とも思わない。
話し合って家事分担を達成する、あるいは、相手のためになっていると思い幸福感を持つことが、もしかしたら理想的な姿かもしれない。でも、交渉できず自己嫌悪に陥るよりも、相手のことをなんとか変えようとするよりも、自分にとって家事の時間は、聴く読書ができる、楽しみで、物語に浸れて、新しい考え方に出会える時間、と定義を変えられれば、これも前向きな選択だと思う。
 
書籍であってもオーディオブックであっても、読書は、日常の苦痛や寂しさを忘れさせてくれて、新しい世界を広げる扉。扉を開いて一歩踏み出した私は、自分で自分のご機嫌を取れるようになり、今日も明るい気持ちで過ごしている。

 
 
 
 
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2024-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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