メディアグランプリ

黄色いリボンを見かけたならば


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田実香(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

「ねぇ、あなたは、なにを悩んでいるの? 困っているの?
ちょっと臆病で、環境やほかのコに慣れるのに時間がかかるだけでしょ? 初対面のコとすぐには仲良くなれないだけでしょ。誰かれ構わず攻撃するの? 暴れるの? なーんにもない、とっても、いいコじゃない。
あなたがそうやって否定的に捉えている部分は、そのコの個性でしょ。どうしてそれを受け止めてあげられないの?」
 
私が育て方、接し方について深刻に悩んでいたときに、友人に言われた言葉です。
さらに、続きます。
「あなたのネガティブな感情は、すべてそのコに伝わっているよ。『できないコ』という色眼鏡を通していつも判断されて、きっと、辛いと思うよ」
 
当時の私は、どうしてほかのコと仲良くできないんだろう、一緒に遊べないんだろうと、苦手な部分にばかり注目しては、ほかのコと比べては、落ち込んでいました。
自分が子どもの頃に、母や周りの大人たちに同じことをされて、あんなに傷ついていたのに。
 
私の愛犬は、犬が苦手な犬です。人に慣れるのにも時間がかかります。
「飼い主のしつけが悪いからだ」と言われればそれまでかもしれません。
たしかに、「社会化期」といわれる子犬から成犬になる頃までに、多くの犬や人とふれ合って経験値を積むことが大切ですが、それが不十分だったかもしれません。
 
私なりに努力はしたつもりでした。
しつけ教室に行ってみたり、犬連れで友人たちと出かけてみたり、散歩でほかの犬とふれ合ってみたり。
でも、いくら私が頑張ってみてもほかの犬と仲良くできないし、それどころか一定の距離を超えると、恐怖心から先に吠えてしまいます。
 
真剣に悩み、いつしか、友人に犬連れでのお出かけに誘われても、断ることが続きました。
そのときに言われたのが、冒頭の言葉です。
私は、愛犬を傷つけてしまっていたことを反省しました。
犬が苦手なのは、愛犬の個性であり、性格なのです。
人間でも、社交的な人もいれば人見知りの人もいます。陽気な人もいればもの静かな人もいます。大人数でいたい人もいれば、一人でいたい人もいます。
それと同じことなのです。
 
それからは、愛犬の個性を尊重し、でも、少しでもほかの犬への恐怖心が減ってストレスが減るように努力するようになりました。
それは、私一人が頑張るのではなく、愛犬とともに考えて行動し、ともに解決していくことです。
 
飼い主と犬は以心伝心です。
というか、飼い主の心はすぐに犬に伝わります。飼い主が動揺すれば、犬も動揺してしまいます。
散歩でほかの犬に遭遇したときに、飼い主が平常心でいれば、犬も平常心でいられます。
しかし、たとえば、曲がり角を曲がってすぐに犬と遭遇したら、飼い主も驚きます。
その驚きはすぐさま犬に伝わり、犬も驚いて吠えてしまうのです。
だから、飼い主である私が周囲に気を配り、平常心を保って、ほかの人や犬とも一定の距離を保てば、吠えたり興奮したりすることはありません。
ほかの犬との交流よりも、2人でストレスなく散歩を楽しむことにしました。
 
しかし、世間では、そうはいかない場面も少なくありません。
社交的な飼い主さんと人懐こい犬は、交流しようと近づいて来ます。
「苦手なのですみません」と言っても、「うちは吠えられても大丈夫よ、犬は吠える動物でしょ」と、笑顔でさらに近づいて来ます。
そちらが大丈夫でも、こちらが大丈夫ではないのです。
一度吠えてしまうと、その後も興奮が続いて些細なことでも吠えてしまうため、吠えさせたくないのです。
よかれと思ってご挨拶に来てくれているのはよくわかるので、申し訳ない気持ちになってしまいます。
 
さらに、対応に困ってしまう方もいます。
苦手です、吠えますと伝えても、「何歳なの? いまだに犬同士で挨拶ができないなんておかしいわよ。ちゃんと慣れさせないと」と無理やり自分の犬を近づけてきたり、私にお説教したりする飼い主さんがいます。
それで、もし愛犬が噛みついてケガをさせてしまったら、私の責任になり、愛犬のトラウマになるというのに。
 
さて、そこで、犬を飼っている方にもそうではない方にも、知ってほしいことがあります。
それは、「イエロードッグプロジェクト」というものです。「イエローリボンドッグ」ともいいます。
リードや首輪などに黄色いリボンを付けることで、「近づかないでね」という意思表示をしています。
「そっとしておいてね」「さわらないでね」などのメッセージが入った黄色い缶バッジやタグを付けている場合もあります。
私の愛犬のように、たんにほかの犬が苦手という理由でリボンを付けている場合もありますが、もっと深刻なトラウマがあって人やほかの犬との一定の距離が必要だったり、病気やケガが理由だったりする場合もあります。
 
しかしながら、愛犬と暮らし始めて8歳になる現在まで、黄色いリボンや缶バッジをしている犬は、ほとんど見かけません。
インスタグラムやブログで広める活動をしている方もいらっしゃいますが、なかなか多くの人に周知されるまでには至っていないようです。
ですので、これを機に、イエロードッグプロジェクトを知ってもらえたら、とても嬉しいです。
 
もしも、黄色いリボンをリードや首輪などに付けている犬を見かけたならば、そっと、見守ってあげてください。
飼い主さんとその犬が、安心して散歩を楽しめるように、2人の時間を尊重してあげてください。
 
今日も私は、愛犬のリードに黄色いリボンを結んで散歩に行きます。
黄色いリボンの意味がわかって、愛犬をそっとしておいてくれている方もいるのかもしれませんが、その方が近づいて来たり話しかけてきたりすることはもちろんないため、どの程度の方がご存知なのかはわかりません。
いつか、イエロードッグプロジェクトがもっと広まって、黄色いリボンを付けた犬とその飼い主さんと、一定の距離を保ったまま、そっと微笑み合える日がくることを願っています。

 
 
 
 
***
 
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2024-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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