91歳の奇跡 ~命を繋ぐ3つの偶然と家族の絆~
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:石井 宏明(ライティング・ゼミ9月コース)
「どうした?大丈夫か?」
2024年7月25日に自宅の二階の窓側で倒れている父に私は大声で問いかけました。意識はありましたが声掛けに言葉での反応はなかった。とっさに救急車を呼び病院へ。一時的な熱中症で発声できないのかと思っていましたが、医師の診断は無情にも脳梗塞を発症しており手術をしないと命が危険とのこと。承諾書にサインし、父を手術室に見送りました。その際同じように13年前脳出血で倒れ手術室に向かいそのまま帰らぬ人になった母の時の悪夢が蘇り私は最悪の事態を覚悟しました。
1時間後手術室から父が出てきました。付き添いの看護師さんが「手術してよかったと思いますよ」その一言で命は取り留めたと安堵し、極度の緊張から解放されました。
ゴルフと書店経営に精を出す91歳の父。月に3回はコースを駆け回り、残りの日は店番や配達、経理業務と働き者だった。年齢を感じさせない父の姿は、周囲の人々に驚きと尊敬の念を抱かせていた。倒れる前日も普段通り働き、翌日はゴルフの予定が入っていた。その日も、いつものように早朝から起き出し、新聞を読みながら朝食を取る予定だった。
しかし、その日の朝、父は突如として脳梗塞で倒れてしまう。日頃から健康に気を付けていた父だが、年齢的なリスクは避けられなかったのだ。しかし3つの奇跡的な偶然が重なり父の命は繋がった。
第一の奇跡は、私が夏期講習の準備のためいつもより1時間早く実家に車を取りに行ったことだ。もし通常通りの時間に行っていたら、父の異変に気付くのは当然のことながら遅れ、もっと深刻な事態になっていたのは間違いない。
第二の奇跡は、父が窓側で倒れており、私が手を上下に振る父を発見できたことだ。最初は体操でもしているのかと思ったが、よく見ると様子がおかしい。すぐに家に駆け込むと、父はすでに発声ができない状態だった。もし布団の中で倒れていたら、気付かずに出勤してしまっていたかもしれない。その場合、昼頃に意識のない父を発見することになっただろう。
最後の奇跡は、父が搬送された病院に、たまたま脳外科の敏腕医師が在籍し、緊急手術を成功させてくれたことだ。その病院には通常、脳外科の専門医が常駐していないのだが、この日は偶然にも優秀な医師が出勤していた。この医師の迅速な判断と高度な技術が、父の命を救ったのだ。
医師から「30分遅れていれば命はなかった」と言われた時、背筋が凍る思いがした。いつもの時間に車を取りに行っていれば、父は発見が遅れ、手遅れになっていた可能性が高い。また、布団の中で倒れていれば、私は気付かずに出勤してしまっただろう。さらに、その病院に脳外科医がいなければ、手術の成功も危ぶまれた。この3つの偶然が重なったおかげで、91歳の父の命はつながったのだ。
この出来事を通して、人生とは本当に些細な偶然の積み重ねなのだということを実感した。日々の生活の中で、私たちは多くの偶然に遭遇している。それらのほとんどは気付かれることなく過ぎ去っていくが、時として、この日のように重要な意味を持つことがある。命の尊さを改めて考えさせられる出来事だった。私たちは日々、当たり前のように呼吸し、食事をし、仕事をしている。しかし、それらの一つ一つが、実は奇跡的な偶然の産物なのかもしれない。
父との思い出を振り返ると、ゴルフに一緒に行った時の楽しさが蘇ってくる。また、ゴルフ以外にも、ビジネスの話を常にしてくれた。書店経営の裏話や、新しい経営手法などについて語ってくれた。私も社会人になってからは、仕事の悩みを相談するようになり、父からは的確なアドバイスをもらえた。ビジネスに関する深い見識と経験から、的確な助言が得られたのは幸運だった。人生の先輩として、父から学ぶことは多かった。やや後遺症が残り、年齢的にも残された時間は限られているが、父との時間を大切に過ごしていきたい。
そして、この経験を通じて学んだことを、周囲の人々にも伝えていきたいと思う。人生は予測不可能で、時に厳しい試練が訪れる。健康で生きていることがある意味奇跡なのだということを。
91歳の父の奇跡的な生還は、私たち家族にも新たな人生の指針を与えてくれた。危機的状況において、家族が互いに支え合い、励まし合うことの大切さを身をもって感じた。また、普段何気なく過ごしている日常が、実はかけがえのない宝物であることにも気づかされた。これからも感謝の気持ちを忘れず、一日一日を大切に生きていこうと思う。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325