メディアグランプリ

人生はマシュマロチャレンジ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あき(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

「No! その言葉は使っちゃダメ!」英語の先生は、笑顔ながらも断固とした口調で、生徒が「難しい」というたびに、言葉使いを正した。
 
「difficultじゃなくてchallengingでしょ? 挑戦してみて!」
 
むずかしそう……と呟くたび、先生が何度も思い出させてくれた。うまくいかなくても、挑戦した時は、顔中で作る笑顔で、Good job, Aki! と大袈裟に褒めてくれた。そのおかげで、高校生だった私の中に、挑戦する姿勢が育ったことは間違いない。
 
目の前の課題の困難に目を向けるのではなく、挑戦と捉える見方が、いかに行動へと私を動かす力を持っていたかを、再び思い出した。きっかけは、先月あるイベントで体験したマシュマロチャレンジだ。
 
テーブルには、20本のスパゲティ、1メートルのヒモ、テープ、そしてハサミ。この材料だけで、18分以内に自立したタワーを作り、その頂点にマシュマロを1つ乗せる。この『真剣勝負』に、ランダムにチームに分けられた初対面の他人同士が挑むのだ。一番高いタワーを作ったチームが優勝となる。
 
チーム力が試されるのは言うまでもないが、もうひとつの鍵は、マシュマロをどう扱うかだ。マシュマロはちぎったりせず、そのままタワーの上に乗せるというルールがある。これが曲者だった。
 
1度目のチャレンジでは、スパゲティで三角錐の基礎を作る計画を立てた。慎重にテープで束ね、バランスを確認しながら組み立てる。制限時間いっぱいを使って、美しいタワーができた時、全員が「これならいける!」と確信した。
 
しかし、マシュマロをそっと乗せた瞬間、タワーはあっけなく崩れ落ちた。
 
散乱したタワーの残骸を見つめ、全員が声を失う。「信じられない……」誰もが同じ思いでその場に立ち尽くした。
 
「マシュマロって重いんだね……」床に落ちたマシュマロを拾い上げた瞬間、その質感と重さに全員が驚いた。「軽いと思ってたのに」顔を見合わせた私たちは、自分たちが現実を無視して計画を立てていたことに気づいた。
 
私たちは、頭の中で描いた理想の計画に頼りすぎていた。最後に乗せるからとマシュマロの扱いを後回しにし、実際に触ることすらしなかったせいで、「ふわふわで軽いはず」のマシュマロの重さに敗れたのだ。 次は、マシュマロから始めよう――全員がそう決意し、タワー作りをやり直した。
 
2回目のチャレンジでは、マシュマロに合わせてタワーの形を修正する試行錯誤を繰り返した。マシュマロが落ちても、もうがっかりもびっくりもしない。むしろ、楽しんで「じゃあこうしてみようか?」と積極的なコミュニケーションが増えた。スパゲティの長さや束ねる位置を少しずつ変えて、ひたすら調整を続ける。
そして、その瞬間がまた訪れる。
「あきさん、マシュマロ乗せてください。支えてますから。そっとね」
大丈夫。何度も試したから、こう置けばタワーは崩れない……はず。
 
仲間に見守られて、それでも緊張しながら、マシュマロを乗せた。土台を支えていたメンバーが手を離しても、タワーは崩れない。全員の顔が一斉にほころび、抑えきれない笑顔が広がった。「やった!」という声が上がり、思わず拍手が沸き起こる。成功の瞬間に感じたのは、安堵だけではなかった。何度も崩れては建て直したタワーに、ただのスパゲティとマシュマロ以上の価値が宿っているように思えた。
 
私たちは、優勝こそ逃したものの、52センチのマシュマロタワーを作ることに成功したのだ。
 
「失敗は成功の元」とは本当によく言ったものだ。2回目のチャレンジが上手く行ったのは、既にタワーが崩れる経験をしていたからだ。あの瞬間の悔しさが、マシュマロの重要性に気づくきっかけとなった。「タワーを作ってマシュマロを乗せる」のではなく、「マシュマロの乗るタワーを作る」という、ほんの少しの意識の違いが、見違えるように積極的なチームワークにつながった。
 
ああ、これ人生そのものだ。
 
思い描いていた未来の設計図が、予想外の「困難」に耐えきれず崩れることはある。難しいから失敗した、そんな風に考えることもできる。でも、失敗から何かを学び、挑戦し直すこともできる。「難しい」が、「これは乗り越えるべき挑戦だ」という感覚に変わる時、失敗は、挑戦の中での一つの通過点に過ぎないのだと知る。
 
挑戦の中で得られるものは、結果だけではない。試行錯誤の過程が、自分を成長させ、新たな挑戦への力となるのだ。
 
『challengingの中に成長がある』――先生が言葉に込めた思いが、ようやく私の中で実を結んだ。失敗を繰り返しながらも進んでいくことが、人生というタワーを築く鍵だと今なら分かる。試行錯誤の過程を一緒に歩んでくれる仲間がいたら、挑戦の醍醐味もさらに大きくなるし、困難を楽しむ心だって育っていくだろう。
 
Good job, Aki!
 
何度も耳にしたその言葉が、私の背中を押してくれる。人生はマシュマロチャレンジそのもの。だからこそ、崩れることを恐れず、繰り返し挑戦し続ける。少しずつ高く、美しく積み上げていく。そのたびに、私たちは新しい自分に出会えるのだから。
 
挑戦は、これからも続く。

 
 
 
 
***

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2024-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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