駐車場笑い話・三題
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ9月コース)
・その一〈シンデレラ〉
「あッ! 駐禁貼られている!!」
と、叫んだのは、シンデレラだ。
勿論、実際の話ではなく、ラジオ・スポット(C.M.)でのことだ。
彼女は、
「南瓜(かぼちゃ)なのに……」
と、続けた。
車を運転中だった私は、思わず噴き出して仕舞い、危うく事故りそうに為った。
情景の顛末としては、舞踏会の迎えに来た馬車(南瓜)の馭者(ぎょしゃ)が、シンデレラを呼びに来たほんの僅かの間に、駐車禁止の貼り紙をされて仕舞ったということだ。
このC.M.が流れたのは、駐車監視員制度が始まり、僅かの時間でも車を離れると規制(反則金)を払わされる時代に為ったばかりの頃だ。
私はこのC.M.は、実に上手いと感動したことを記憶している。
何故なら、駐車禁止に関しては勿論、意外と知られていない道路交通法の盲点を突いていたからだ。
その盲点とは、シンデレラを迎えに来た馬車に対する扱いだ。
馬車を牽引する馬は、“軽車両”に分類される。馬車、この場合の南瓜は、牽引車両と為る。
牽引車両は、専用の場所(ヤード)に停め置かねば為らない。
一方の馬は、車両なので然るべき駐車場に停めねば為らない。
今回の場合、迎えに来ているので、道路脇に在るパーキングメーター等の駐車スペースが、その場所と為るのだ。
即ち、馬はバイク同様の扱いをしなければ為らない訳だ。
私はこのC.M.が、駐車禁止が厳しく為ったことと、軽車両の取り扱いという二つの指摘をしていて素晴らしいと思ったのだ。
同時に、そのことをシンデレラに語らせると云う手法に、思わず噴き出したのだ。
出来れば、時と場所を選んで聴きたかったC.M.だった。
・その二〈バブル期前のファミリー・レストラン〉
バブル期前のこと。
未だ、日本では外車が珍しかった時代だ。何しろ、輸入先のドイツは、東・西二つに分かれていた時代だ。
そんな時頃、或るファミリーレストランチェーンが、“Yesterday(イエスタデイ)”と云う業態の出店を始めた。Yesterdayは現代でも見られる、如何にもなファミレスではなく、アーリーアメリカンな内装でメニューもどことなくアメリカンな店だった。
ファミレスの定番、ハンバーグにしても、醤油ベースのテリヤキはメニューに無かった。
早い話、出店を始めたYesterdayは、デート使いが出来るファミレスだったのだ。
私も、当時付き合っていたカノジョと、足繁くYesterdayに通っていた。よく行って居たのは、駒沢公園傍のYesterdayだった。
その店は、当時のファミレスにしては駐車可能台数がやや少なく、しかも、一台当たりのスペースが狭かった。きれいに並べて駐車しないと、一台分のスペースが減って仕舞う寸法だった。
或る時、ドライブデート前の休憩をしていた時、こんなアナウンスが流れた。
「これから読み上げますナンバーの御車で御越しの御客様に、車の移動を御願い申し上げます」
多分、綺麗にスペースに収めないドライバーが居たのだろう。
続いて、
「緑(色)のBMW……」
ここで、店内にいた客の殆どが、耳をそばだてた。何しろ当時、BMWに乗っている若者等、まず見掛けなかった時代だったからだ。
アナウンスは、続けて、
「緑のBMW、ナンバーは、品川33“わ”○○‐○○」
と、続いた。
店内は一瞬にして、爆笑の渦に包まれた。何故なら、車のナンバーの片仮名“わ”は、レンタカー専用だからだ。
店内の一般人は、BMWに乗った金持ちは誰だろうと期待した途端、急に裏切られた気分に為り、思わず笑って仕舞ったのだ。
私もその一人だった。
誰が立つ、正確には誰がBMWのレンタカーで来たのだろうと、私は周囲を見回していた。
しかし、誰も立ち上がる様子は無かった。
5分程後、私と同年代と思われるカップルが、会計を済ませコソコソと店を後にした。
『多分あのカップルが、BMWのレンタカーをYesterdayに乗り付けたのだろう』
と、私は思った。
現に、食事を済ませた私とカノジョが外へ出ると、既に緑のBMWは、駐車場に無かった。
私はせめても、例のカップルの女性が、カレシのBMWはレンタカーだったと気付かないことを祈って仕舞った。
・その三〈魔女の来店〉
この夏、所用帰りに郊外のショッピングセンターに立ち寄った。
勿論、車で訪れた。
週末と云う事も有り、駐車場は混んでいた。
私は、駐車場を回りながら、空きスペースを探していた。
店の入り口からそう遠くない所に、一台分のスペースを見付けた。
ところが私は、愛車をスペースに入れようとしたが、止めて仕舞った。
そのスペースに、箒が置いてあったのだ。
諦めて移動しようとした私に対し、同乗していたカミさんは、
「箒どかそうか?」
と、訊ねて来た。
私は、
「いや、いいよ」
と、答えた。
「何で? この暑い中、遠くまで行くことないよ」
と、カミさんは食い下がって来た。
私は、
「もしかして、魔女が買い物に来ているのかも知れないから」
と、カミさんを笑わせた。
継いで、
「買い物に来た魔女さんは、多分、気を遣って自分の乗り物を、駐車スペースに入れたのかも知れないし」
更に、
「店内に行ったら、サービスカウンターに『箒で御越しの魔女様。箒は車両では無いので店内持ち込み可能です。駐車スペースを御空け下さい』って、放送して貰うよ」
と、更に笑わせた。
私とカミさんは、やっと、魔女さんの箒から少し離れたスペースに駐車出来た。
猛暑だったが、私のジョークが効いたのか、カミさんの機嫌は良かった。
それで、本当に放送を頼んだかって?
勿論、していませんよ。
だって、まともに取り合って頂けないこと請け合いだし。
それにもし、本当に魔女さんが買い物に来ていたとしても、
その魔女さんが、宅配便の途中に立ち寄った可愛い娘ちゃんだったら、可哀そうだしね。
***
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