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ふるさと納税を活用して、あの町に心を寄せる


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記事:izmy(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
大きな災害に合い、大変な思いや不安を抱えながら暮らす人に、私は何ができるだろうか。
テレビ画面に映し出された事実を見つめながら、自分の気持ちを行動につなげる難しさを感じている。
支援として、すぐに思いつくのはボランティアだが、経験上、体力面・時間の制約・コーディネーターとの相性などで継続するにはハードルを感じた。ボランティアを続けている人には頭の下がる思いを持ちながら、私は、国の制度である「ふるさと納税」を活用している。
 
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付をすることで、税金の控除や、返礼品として特産品を受け取ることができる仕組み。堅実な性格の先輩から度々勧められて昨年から始めてみたが、申し込みはネットショッピングのように簡単だった。事後手続きとして自治体から届く案内に沿って控除申請を行うが、確定申告が不要な人であればスマホからスムーズに申請することができる。節税対策とも言われているが、一度、寄付金額をすべて自分で払い、翌年の住民税から控除されるので「手元にお金が残っているぞ!」という実感値は薄い。このため私は、返礼品を楽しみながら地域を応援することに意識を向けるようになった。
 
岩手県陸前高田市は、私が特に応援したい町だ。
応援……と言うと少しおこがましいが、東日本大震災から心を寄せている。
 
2011年3月11日(金)、私は東京のオフィスにいた。大きな揺れを感じ、その後も余震が続いた。この日の夜は楽しみにしていたプライベートの用事があったが、地震の影響でキャンセルになった。ドリンクを買いに休憩室へ向かうと、テレビに映し出されていたのは河川を上る茶色の濁流と、海岸線沿いの町をまるごと飲み込む津波の映像だった。
大変なことになっている。プライベートが反故になってふて腐れている場合じゃない。自分本位な思いを持っていたことに恥じながら、自分の身の安全を確保し、これからの状況を注視するしかなかった。
 
陸前高田市の被害は甚大だった。休憩室で見た津波の映像や、濁流の中に頭を出しているスーパーマーケットの看板の横で、手を振って助けを求める人々の映像が繰り返し放映されていた。
この時から「陸前高田は今どうなっているだろう。何かできることはないか」と感じていた。
でも、何もしていない。この時点で「助けになりたい」という気持ちは偽善になってしまう。
 
震災の約5年後、自称「復興支援の旅」(被災地を巡りながら飲食をする)で陸前高田市を訪れると、海岸に近い場所は、仮設の道の駅やガソリンスタンド以外、見渡す景色はかさ上げされた更地が続いていた。
 
海岸よりも内陸に入ったところに、宿泊先はあった。震災後、自宅を再建し、親子で民宿を営んでいた。すみずみまできれいに掃除されていて広々とした畳の間にはお花が生けられている。ご主人が作られたお料理もおいしく、ふかふかのお布団でゆったりと過ごすことができた。
娘さんが「ごゆっくりなさってください」と優しい笑顔で声をかけてくださる。
耐え難い出来事が起こっても、再起し、旅人に笑顔を向けてくれる強さを感じ、陸前高田はもっと応援したい町になった。
 
しかし、東京から約500㎞。頻繁に訪れることもできない。それでも、思いを形にできる制度のひとつが、ふるさと納税だった。
 
ふるさと納税のサイトから陸前高田市で検索すると、ウニやイクラなどの海産物や、陸前高田で加工されたツナ缶やお菓子などたくさんの商品が表示される。
私のお気に入りは「にごり酒」だ。大船渡のお宿でいただき、好きになった逸品。甘口で濃厚、まろやかなお米の風味を思い出して、ごくりとつばを飲みながら、新米とともに、ふるさと納税のサイトから申し込みをした。
 
サイトのトップページに戻って、ふじリンゴを検索。つやつやの真っ赤なリンゴの写真が一面に並び、どれもおいしそう。金額、配送条件以外は、優劣はほとんどない。どの市町村に申し込むか迷ってしまう。こんなときは応援したい町へ探しに行くのだ。陸前高田市に戻ると、リンゴの写真を見つけることができた。詳細ページには応援ポイントが記されている。
「3.11震災後の3年後に、津波で流された場所に苗木を植え替えました。65年間試行錯誤し今だ現役86才当主こだわりの果物です」このリンゴに決めた! 
申し込みの際、寄付金の使い道は、いくつかの選択肢の中から自分で選ぶことができ、自治体が行うクラウドファンディング「返済不要の給付型奨学金事業」を選択した。ひとり親家庭となった私は、東京都の貸与型奨学金に支えられて、無事に大学を卒業し、社会人を過ごしている。もっと過酷な状況の中で暮らしていた学生のみなさんの力になれると嬉しいと思いながら、寄付金の達成率を見守っている。
 
にごり酒と新米、そして、採れたてのリンゴが陸前高田からはるばるやってきた。
大きく艶のあるリンゴは、パリッとしたみずみずしい食感とさわやかな酸味としっかりとした甘みでとてもおいしくて、あっという間にお皿から無くなった。
何か力になりたい、と思っていても、なかなか直接的な行動は起こしづらい。
参加しやすく自分も楽しめる制度や仕組みを活用して、心を寄せる町の応援を続けていきたい。
 
 
 
 

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2024-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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