十七音の「世界一短い詩」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:かのん(ライティング・ゼミ9月コース)
「「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」
俵万智さんの歌集『サラダ記念日』を初めて読んだ時、衝撃を受けた。
わかる!
そして、俵万智さんには申し訳ないけれど、
「「この味がいいね」と君が言ったから六月八日はパスタ記念日」など、皆でふざけながら笑い合ったことも懐かしい。
それまでは『万葉集』『百人一首』など古典の和歌のイメージだったので、『サラダ記念日』のように、思っていることを話し言葉で表現してもいいのね。と、短歌が身近に感じたきっかけとなった。
俵万智さんの影響は大きいが、それだけではないと思う。
短歌(和歌)の「五、七、五、七、七」のリズムは、私たち日本人のDNAにはめ込まれているかのように心地よく感じられ、覚えやすい。
三十一文字という限られた文字数の中で、自分の思いを込めて詠む短歌(和歌)は好きな歌もあり、『万葉集』『百人一首』の何首かは、何十年経っても諳んじることができる。
ただ、私にとっては「俳句」は馴染みがなかった。
「古池や蛙飛びこむ水の音」「夏草や兵どもが夢の跡」(松尾芭蕉)
「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」(正岡子規)
など、わずかな句しか思い出せない。
短歌の三十一文字でさえ伝えきれないのに、十七音しかないなんて短すぎる……。
俳句は難しいものと決めつけていた。
それが、今年2024年、私は30句ほどの俳句を詠んだのである!
私自身がいちばん驚いている。
一年半ほど前、知人が小学生に「俳句」を教えていると聞いた。また、TV番組で、俳句作りに夢中になっている芸能人がいることも知っていた。
「俳句」とは、五、七、五の十七音で、それも「季語」を入れないといけない。ということくらいしか知らなかったが。
「子供でも作れるの?」「そんなに面白いの?」と疑問に思い、その知人に尋ねてみた。
「俳句は面白い。感性も磨かれる。子どもが作る俳句は素直で素晴らしいよ」と目を輝かせて話を始めた。
そして、いつの間にか「実際に、俳句を作ってみようよ」という話に乗っていた。
社内で集めた有志と私に向かって、その知人は「では、句会を始めましょう」といきなり言い出した。
俳句についてレクチャーをしてもらい、最後に一句作るくらいだろうと思っていたのに、なんだか雲行きが違う。
「えっ、句会?」
と驚いていたところに、知人は、さらに難題(と私には思えた)を言った。「思いついた単語を出してください。「席題」にしましょう」と。
「席題?」
皆の表情に「?」が広がった。私も同じような表情をしていたと思う。
知人は「皆さんは俳句を作るのはほぼ初めてと聞いています。作りやすいように、「季語」5つ、「席題」5つをそれぞれ組み合わせて作りましょう。その方が簡単です」と説明を始めた。説明を聞いても、ちんぷんかんぷんのままだ。
知人は「わかりにくいですよね。まずはやってみましょう。俳句は五、七、五の十七音で作ります。季語は必ず入れてくださいね。では、制限時間は1時間にしましょうか」と、さっさと先に進んでしまった。
私たちは困惑したまま、俳句を作り始めることになった。
先月11月下旬に行った句会の「季語」と「席題」を例にすると、
季語は「冬日和」「鴨」「白菜」「生姜酒」「セーター」(季語は知人が決める)
席題は「旨」「時」「線」「倒」「塩」(席題は参加者が思いつくまま言葉を出す)
そして、それぞれの俳句に「季語」と「席題」を組みあわせて作る。どのように組み合わせるかは自由。ただし、一度使った「季語」と「席題」は他の句では使えない。
私は、季語の「セーター」と席題の「時」を組み合わせて作った。
「時をかけ子のセーターをほどく夜」
どの組み合わせで句を作るかによって全く別の俳句になる。組み合わせも考えつつ、計5句の俳句を作る。
たった十七音のうち、季語と席題の字数を除くと、ほんのわずかしかない。
「五、七、五」のリズムも考えて言葉を選ぶ必要があり、初心者にありがちな「季重なり」(1つの俳句の中に2つ以上の季語を入れてしまう)にも注意しなくてはいけない。
決まり事が多い中で句を作っていく。皆も私も、毎回、生みの苦しみに唸っている。
とにかく、制限時間内で、字数を確かめ俳句を作っていくことに専念する。
全員の句が出たところで、それぞれ良かったと思う句を選び、点数をつけていく。
なぜ、この句を選んだのかを説明した後、この句を作った人が誰か名乗る。この時「やはり〇〇さんだったのね」とか「××さんが作ったのは意外だね」等の声があがる。
また、選んだ人の感想が作者の意図と合うこともあれば、作者も驚くくらい異なることもあり、それぞれの解釈や感想を聞くのも面白い。
俳句を作っている間は一人ひとり集中しているが、その後は和気あいあいと、お互いの句について語り合う。両方の時間が、それぞれに楽しい。
結局、1回で終わるはずだった句会は、約2か月ごとの頻度で6回行われ、1年ほど続いたことになる。そして、既に来年の句会の日程も決まっている。
皆、「脳みそに汗をかいた」「難しい」と言いながらも、まんざら嫌でもないらしい。
仕事で使う思考とは別の頭の回転が求められ、凝り固まった脳内をほぐしてくれるのかもしれない。
参加者は初回からひとりも欠けることなく、少しずつだが増えている。
私も、句会の回を重ねるほど、俳句の奥深さに難しく思うこともあるが、俳句を始める前と比べると、自然や季節の移ろいに敏感になり、それを言葉で表現する季語にアンテナが立つようになってきた。
必要な言葉を選び、他の言葉をそぎ落とす。リズムを整える。そして、想像の余地を残しながら、イメージしたシーンを十七音で表現する。
自分の俳句だけでなく、仲間が作った俳句を味わうことも楽しい。
世界一短い詩と言われている「俳句」という表現形式を持っている日本の文化が誇らしいと同時に、あまり考えすぎず、江戸時代から続く遊び心を大切にしたいと思う。
年齢を重ねると、感性が鈍くなると言われがちだが、「俳句」を通して、言葉を磨き、瑞々しい感性を持ち続けたい。
きっと、来年も、指を折り折り文字を数え、『季寄せ』で季語を確認し、脳みそに汗をかくことになるだろう。
私も、いつの間にか、十七音の「世界一短い詩」を詠むことに魅了されたひとりになっていた。
***
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