世のお母さんたちへ。手放せ、家事を!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:後藤尚子(ライティング・ゼミ年末集中コース)
わたしは、「お母さん稼業」を早々に投げ捨てた。
「お母さん」であることを捨てたのではない。
「お母さんがやらなければならない、と思われている数々の家事」のほとんどを家族に投げたのである。
それは下の娘が小学校に上がるか、上がらないかの頃だから、もう10年以上も前になる。その証拠に、幼い子どもたちが家事をしている写真が多々残されている。
ある1枚は、食後の皿洗いをしたくない! とギャーギャーわめいて床に転げまわる幼い娘が写っている。あどけない、まだ8歳くらいのころだ。
が、どれだけわめかれようが、わたしは、じゃんけんで負けて皿洗い当番になった娘を助けなかった。心を鬼にして、「かーちゃんが代わりにやってあげるよ」という言葉を封印したのではない。そのときのわたしは、1時間以上もギャーギャー言う娘を見ながら、「この子に発電機をつけたら、怒りパワーで電気が起こるのではないか。このエネルギーを利用しないのはもったいない」などと考えていた。完全に他人事だ。助けてやる気などさらさらない。
わたしは、父がサラリーマン、母は専業主婦という、当時としては全然珍しくない家庭で育った。当然、家事は母のやるべき仕事で、それがおかしなことと思ったことはなかった。
だから、わたしも結婚し仕事を続けてはいたが、家事は女性が中心になって担うのが当たり前という感覚だった。当時、結婚していた人は自由なお母さんのもとで育った男性で、かなり家事をしてくれていたが、それでも家庭の家事部長はお母さんである、というわたしの思い込みに異を唱えることはなかった。
子どもたちが小さいうちは、それでなんとかやっていた。わたしが茶わんを片付けている間は、夫が子どもたちの面倒を見る。なんとなく分業制が成立していたので、それでよかった。
が、子どもたちがひとりでいろいろと出来るようになると、それぞれが好き勝手なことをしだす。
マンガを読んで大笑い、テレビを見て大爆笑。だらだらアイスを食べて、使ったスプーンは流し台にポイ。
わたしがテーブルを拭き、茶わんと格闘し、洗濯物をとりこみ、たたみ、タンスに片付け、布団を敷き、家じゅうのごみを集めている間、彼らはこちらを見向きもしない。それが毎日続く。
理不尽じゃないか! わたしも働いているのに!
ふつふつと怒りが込み上げてきた。このままずっとこれが続くのはいやだ。
「ちょっと! 家族会議をしましょう」
夫、息子、娘に召集をかける。そこでわたしは、いかに家事というものが多くて、それが毎日のことで、ひとつひとつのことをやらないと家が回らなくてみんなが困るか、という話をした。
「つきましては、みなさんにも家事を担ってもらいたい。あなたたちはウチのお客さまではなく、構成員のひとりひとりです」
あっけにとられた顔をしていた3人だが、あっさりと承諾したのは息子である。
「いいよー、みんなでやろうや」
家事をすることに抵抗のない夫も承諾。まだ幼かった娘は、完全に納得したようではなかったが、息子と夫が「いいよ」と言ったので、飲み込まざるを得なかったのかもしれない。
翌日から、家事の分業が始まった。食後の皿洗い、その後のお皿拭き、布団敷き、洗濯物たたみ、この4つの仕事を毎晩じゃんけんをして勝った順にとっていく。
初めの頃は、子どもたちのやる気を出させるため、このじゃんけん大会を盛り上げることにわたしは全力を注いでいた。
おたまをマイク代わりに「みなさん、お集まりください!」
じゃんけんもワーワー言いながらやって、子どもたちが勝って楽ちんな布団敷きでも選ぼうものなら、「おーー、よかったねーー!」などと、過剰に喜び合った。
が、子ども、特に娘がじゃんけんで負けて、みんなが敬遠する皿洗いにでもなろうものなら大変だった。「絶対にやりたくない!」「いや、やらなきゃ」「絶対にいや!」「あなたの仕事です」……の押し問答が延々続く。途中から、前述したように娘のわめき声は耳に入れず、エコな発電のことを考えはじめ、しれっとその場を去っていく。なにがなんでも、仕事はさぼらせなかった。これは「手伝い」ではなく、あなたが担うべき「仕事」。この家は、あなたが仕事をすることで回っている、というわたしの信念は揺るがなかった。
あるとき、息子が皿洗いの仕事を3日間さぼったことがあった。流し台に積み上げられる膨大な茶わんの数。目を背けて公園に遊びに行くも、誰も代わってやってはくれない。結局、皿洗いマシーンと化した息子が凄まじい勢いで仕事を片付けた。そして、「汚れものがなくなるって気持ちいいねー」と、なにかを悟ったようなすがすがしい言葉を残して、また公園に遊びに出ていった。
あれから時が経ち、夫だった人はメンバーから外れ、3人家族になったが、今でもこの分業制は続いている。さすがにじゃんけんはもういやだ、と娘が言い出したので、今は布団敷き以外の3つの仕事を順繰りに回している。
それ以外にも毎日、娘が夕食を作り、わたしが洗濯物を干し、息子がゴミを集めて捨てる。家事はだれかにかたよることなく、完全に分担されている。
今では、家事をあれほど嫌がっていた娘も言う。
「これをお母さんひとりが全部やるなんて、ゲーが出る」と。
だからね、世のお母さん、家事をひとりで担わなくっていいんですよ。
イライラしながら、または、小さなストレスをためながらやるより、誰かに頼ったほうが元気でいられます。ニコニコしていられます。
「うちの子はまだ小さいから」って言って、遠慮しなくていいんですよ。どんどんどんどん、家族に家事を投げていきましょう。最初は抵抗されるけど、粘り強く、子どもを信じていきましょう。
すると、家事をすることに抵抗のない子が育ちます。それは、生活のひとつひとつを主体的に担えるようになることです。そうすることで、あなたの自由な時間も保証されます。
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