誰の為の動物愛護論
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記事:杉原 亜友美(ライティング特講)
あれは、本音だと思うけど建前だとも思う。
数年前お付き合いしていた彼は、幼い頃から犬や猫、亀などと育った動物大好き人間で、めちゃくちゃ動物愛護精神が強い人だった。
デートでショッピングセンターへ行けば必ずペットショップへ立ち寄り、かわいいね、なんて愛でるだけではなくゲージに入った動物たちを見つめながら「命に値段を付けて、こんな狭いところに閉じ込められてかわいそうだ、救ってあげたい」と言っていたり、保護猫団体に寄付金をして、市のホームページに名前が載っているような人で、「劣悪な環境にいる動物たちを一匹でも幸せにしたい」と、会うたびに私は彼の動物愛護論を聞かされていた。私は正直、毎回何度も同じ話をくどいなぁと思いつつも、やっていることは立派だと思ったので素直に聞いていたし尊敬もしていた。
そんなある日のこと、彼の家に遊びに行くと、なんと! 一匹のかわいい子ネコちゃんがいた。
とうとう、あの口癖のように言っていていた「劣悪な環境にいる子を一匹でも幸せにしたい!」という願いを叶えたのだと思い、
私は「わ~、ネコちゃんお迎えしたんだ、よかったね~」と言うと、
彼が「びっくりさせようと思って黙っていたんだ! あと、これお土産~」と、関東圏のお土産をくれた。
あれ、旅行にでも行っていたのかなと思っていると、「この子をお迎えに関東まで行ったんだ」と言い出した。私は彼の動物愛護論に半ば洗脳されていたので、当然お迎えしたのは保護猫ちゃんだと思っていたから、そんな遠くの保護猫団体と縁があったのかな? と思っていると、彼が我が耳を疑うようなことを言い出した。
「この子は血統書付きのいいネコでね〜、有名なブリーダーさんが素晴らしい環境で愛情をたっぷりかけて、のびのびと育てた子なんだ、兄弟猫もいて迷ってっちゃってさ、高い買い物になるから妥協したくなくて、3回も選びに行っちゃったよ」と。
私はすごくびっくりした!!
「だって、あんなに言っていた劣悪な環境の子を救いたいとか、くどいほど語っていた動物愛護論はどこ行った? 近場のペットショップにだって、同じ種類の子いたじゃん? 救ってあげたいとか言っていたじゃん? 命に値段付けてかわいそうとか語っていたじゃん? 高い買い物になるからって、わざわざ新幹線に何回も乗って満足のいく猫ちゃん選びに行ったの? いや、別にどんな猫ちゃんを選ぼうと、あんたの自由だからいいんだけど、いいんだけど!! なんかモヤモヤする。びっくりさせようと思ってと言ったけど、私は猫ちゃんをお迎えしたことよりも、あんたが語っていた動物愛護論とかけ離れた行動にびっくりしたよ!!!!」
と、言いたい気持ちを私はグッと押し殺し、押し殺すというよりも唖然としながら黙って立っていると、ゲージの中から子ネコちゃんが、私を見上げてシャーッ! とめちゃくちゃ威嚇していた。そんな子ネコちゃんを彼は満足そうに眺めていた。
さて、彼が語っていた動物愛護論はなんだったのだろうか。
彼が選んできた猫は、彼から聞く限りではあるが、劣悪な環境にいる子ではなく愛情たっぷりにのびのびと過ごしていた猫である。救うなんて状況ではない、血統書付きのいい猫だ。狭いゲージに押し込められてはいなかった。あれ? 救った感なくない? と、私は疑問に思ってしまっている。
「やらない善よりやる偽善」なんてネットスラングの言葉もあるが、彼が動物愛護のために行動したことは偽善ではなく、本心であったとは思う、確実に。
では、なぜ彼の思う劣悪な環境の子を救わなかったのか。ペットショップに同じ種類の猫はいた、いたのになぜ……。
私は彼ではないから、彼の本音は分からないけれど、あれだけ熱く動物愛護論を語っていても、命に値段をつけられた劣悪な環境の子を救いたいという気持ちはありつつも、自分が飼うなら血統書付きのいい猫が欲しいというのが彼の本音だったのか、と考察するしかない状況だ。だったら最初からそうやって言って欲しかった。言ってくれればこんなにびっくりしなかったのに。
「劣悪な環境の子を一匹でも救いたいよ! でも、自分が飼うなら血統書付きのいい猫が飼いたいよ!」と。
あれ? 文字にしてみるとこんなこと言えないなと思った。そうか、これが人の本音と建前かとまじまじと感じた。
言っていることと、やっていることがかけ離れすぎていて、こいつまじで怖いな、これからどの面下げて劣悪な環境の子を救いたいって言うんだよと思った出来事だったが、思いがけず人の本音と建前について考えさせられた出来事だった。
***
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