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9000年の物語:猫との共生が拓く未来


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記事:琴森美香子(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
あなたにとって、「猫」はどのような存在でしょうか?
邪魔な野良猫、ただのペット、それとも、かけがえのない家族?
 
猫は、これまで長い歴史を人間と共有してきました。その物語を知れば、あなたの身近にいる存在への見方が、少し変わるかもしれません。
 
1.ネズミと戦う救世主から守護神へ
 
猫が人と出会ったのは、約9,000年前。
中東の「肥沃な三日月地帯」と呼ばれる地域でした。
 
農耕によって、人々は穀物を貯蔵できるようになりましたが、その陰で貯蔵庫に集まり、穀物を食い荒らすネズミの害に苦しみました。
 
そこに現れたのが、野生のリビアヤマネコです!
猫は肉食性の動物なので、穀物を荒らすネズミは捕食しますが、穀物は荒らしません。ネズミだけを駆除してくれるヤマネコは、人間にとってまさに「救世主」でした。
 
一方、ヤマネコも、人間がいるところに行けば、ネズミという獲物が得られることを学び、自然と人間の集落に居つくようになりました。
 
このようにして、猫は人間の生活に欠かせない動物となり、人間との緩やかな共生が始まったのです。
 
舞台は古代エジプトへと移ります。
 
猫は、毒蛇などの危険な生き物も捕食することから、穀物だけでなく、「家庭の守護者」として崇められ、次第に神聖な存在へと昇華します。猫の姿で描かれた女神バステトは、家庭の平和や豊穣の神として崇拝されました。
 
猫が死ぬとミイラにされ、丁寧に埋葬される文化もこの時代の特徴です。エジプト社会での猫の地位は、揺るぎないものでした。
 
2.試練の時代と復活
 
猫は地中海を越え、ヨーロッパやアジアへと広がりました。
そして、14世紀に起こったペスト(黒死病)の大流行をきっかけに、厳しい試練に見舞われます。
 
当時のヨーロッパ人口(推定7,000~8,000万人)の約3分の1を奪い去った未曾有の感染症は、ネズミによって媒介されるノミが原因でした。
 
しかし、科学的知識に乏しかった当時の人々は、「魔女が悪魔と契約してペストを広めた」「魔女が井戸に毒を入れた」といった迷信を信じ、魔女狩りを始めたのです。
 
そして、「魔女の使い」とされた猫も迫害の対象となり、無差別に虐殺されました。その結果、猫の数が激減してネズミが増加し、ペストの感染が拡大したといわれています。
 
この悲劇は、人間が科学や動物の役割を正しく理解しないことの危険性を象徴していますね。
 
その後は、猫の重要性が再認識され、農村でも都市でも、ネズミ駆除の頼れるパートナーとして、再び歓迎されるようになっていきます。
 
産業革命期のヨーロッパでは、ヴィクトリア女王が猫を愛したことから、猫が上流階級の象徴となりました。また、労働者階級の家庭でも、猫は単なるネズミ駆除のパートナーから、家庭内で愛される「ペット」へと進化していきます。
 
3.日本が直面する課題と猫の可能性
 
時代は移り変わり、現代へ。
 
猫は「ペット」の枠を超え、私たちの「家族」の一員となりました。その柔らかな毛並み、仕草の愛らしさ、そして独特のゴロゴロ音……。これらは私たちのストレスを和らげ、幸福感をもたらしてくれます。
 
しかし、猫がもつ「癒し」の力は、単なる感覚的なものではありません。猫との触れ合いがもたらす効果は、科学的にも証明されています。
 
猫と接することで分泌される「オキシトシン」というホルモンは、「幸せホルモン」とも呼ばれ、ストレスを軽減し、心拍数を安定させる効果があります。この効果が、私たちの心身の健康に寄与するのです。
 
欧米ではすでに、病院や介護施設、学校、リハビリセンターなど様々な場所で、猫が人々の不安を和らげ、孤独感を軽減する役割を担っています。
 
しかし、残念ながら日本では、まだ猫の「癒しのパートナー」としての価値が十分に認識されているとは言えません。
 
2023年の厚生労働省の調査によれば、日本の全世帯の約34%が単身世帯。そのうち65歳以上の高齢者世帯が46.2%を占めており、日本が急速な単身化と高齢化に直面していることを示しています。
 
このような状況から生まれる孤独や孤立といった社会問題は、医療や福祉だけでは解決しがたい部分があります。そこにこそ、猫が「癒しのパートナー」として、新たな価値を提供できる可能性があるのです。
 
歴史を振り返ると、猫との関係は、その時代を映す鏡のようなものでした。
 
農耕時代に救世主として迎えられた猫が、古代エジプトでは神格化され、中世ヨーロッパでは迫害されました。そして、産業革命期にペットという存在となり、現代では家族の一員として愛されています。
 
超高齢社会を迎えた日本は、歴史的背景と科学的な知見をもとに、今こそ猫の役割を再評価し、新たな共生の形を模索すべきではないでしょうか?
 
もしも、猫の「癒し」の力が日本社会で広く認識され、最大限に活かせる環境が整えば、多くの人が猫と共に幸せな暮らしを営み、孤独や孤立から解放される未来が訪れるはずです。
 
そのために、私たちにできることは何か?
今、それを考える時が来ています。
 
 
 
 
***

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2025-01-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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