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成仏ノートのススメ~散々な出会いを「埋葬」したら神様が舞い降りた!?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:加藤 真矢(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
「おめでとうございます~3等です!」
 
ガランガランと鐘が鳴り響き、店員さんに笑顔で渡されたのはウィークリー手帳。
その日、私は文具店に愛用のデイリー手帳を買いに来ていた。
新年キャンペーンで福引を引いたところ、手帳が当たったのだ。
 
手帳を買いに来たら、手帳が当たった……
 
狐につままれたような気分で、しばしもう1冊の手帳を見つめた。
正直、要らない……
どうせなら、違う雑貨が欲しかったのに……
 
SNSで問いかけをしてみた。
 
「手帳2つ使っている人なんているの? 混乱しない?」
「してますよ! 1つは普通にスケジュール帳として、もう1つは家計簿代わり」
「持ってます。1つはスケジュール帳で、もう1つは毎日のバイタル記録」
「2個持ちしてますが、もう1つ、目標管理用に増やすか悩み中です」
 
意外にも結構いることにびっくりした。
みんな、なんて意識が高いのだろう。
あまりマメでない私には今ひとつピンとこなかったのだが、
あるコメントが目に留まった。
 
「予定を書く手帳と、その結果を書く手帳に分けてみては??」
 
40代独女の私は婚活に大苦戦していた。
そうか、お見合いの結果が残念なことになっても、明るく昇華できないか、活用してみようかな。
 
かくして私は福引で当たった赤い手帳を「成仏ノート」と名付け、
マッチングアプリを開いた。
 
 
昨年マッチングし、
何往復かメッセージを重ねたのだが、
毎回、私が返信した後に音沙汰ナシ、を繰り返している謎の男性がいた。
この日も性懲りもなく、メッセージを送ってこられた。
 
「あけましておめでとうございます! 中々出会いがなくて、心折れました。まだお相手探してますかー?」
 
まだってなんだよ、と思いつつ、
同世代なのに信じられないほど幼稚な文体にも、神経を逆なでされ、
我慢の限界に達した私は、ぶすりと刺しに行ってしまった。
 
「いつもお返事がないので、やり取りを続けるお気持ちがないのかと思っていました(笑)」
「そういうわけじゃないんですが、男性は有料ですし、仕事が忙しかったりすると、やり取りが面倒だと感じることも事実です」
 
何それ、私がお金を出す価値も無く、面倒なオンナってこと?? 
まだ余ってますか? みたいな言い方含めて、失礼じゃない??
 
「それで出会いがない、は違うのでは? やり取りのタイミングが合う女性を探されているのですか?」
「失礼しました」
 
その後、彼にはブロックされた。
ブロックしたいのはこっちだよ!
 
頭が沸騰した私は「成仏ノート」を開いた。
自分勝手なこの方とのやり取りを書き綴って、ノートを閉じかけたものの、
単にイラっとした出来事で終わりたくなかった私は、
赤字でこう締めくくっていた。
 
「我慢しないで、自分の言いたいことを言うことができた」
 
既読スルーしてもよかったのかもしれないけれど、
つい、遠慮がちになってしまう自分が成長できた出来事に、したかったのだ。
 
 
その後の週末にお会いする約束をしていた別の方とは、順調にやり取りをしていた。
この方も同世代。商社勤務。
お仕事終わりが23時頃になることもあるお忙しい中、毎日マメにメッセージをくださり、
私の当日夕方の予定に合わせて、近くでお店を探してくださった。
フランスの片田舎にあるアパルトマンをコンセプトにした、とても素敵なカフェ。
この方にとっては、遠方になってしまうのに。
 
「こんにちは! 今日は都合合わせてくださって、本当にありがとうございます」
「いえいえ! うわあ、本当にヴァイオリン背負っていらっしゃるんですね! 席こちらで大丈夫ですか?」
 
趣味のヴァイオリンの練習後だった私を見るなり、楽器の置き場所も気遣ってくださった。
 
「名前が珍しいのと、中々このような出会いって不安になってしまうかと思うので……」
 
ご丁寧に名刺をいただき、とても驚いた。
マッチングアプリに、こんな方がいるの?
 
お互い勤務地は東京だけれど、私の出身の愛知で働いていたこともあるという彼と、ローカルトークで盛り上がる。
実は日本最古の天守をもつ犬山城について、
 
「晴れの時ももちろん天守閣からの景色が絶景なんですが、僕が特に好きなのは、曇りの時なんです」
「えっ、どんな感じなんですか? もやがかかったような?」
「そうなんです。まるで宙に浮かんでいるようななんとも言えない……これは是非、見てみてください(笑)」
 
地元民の私も聞いたことがなかった、知られざる魅力をたくさんお話しくださった。
カフェタイムには2オーダーの注文が必須だったところ、
お互い、カフェラテとチーズケーキを選んで、笑ってしまう。
1時間の約束だったところ、1時間半近く話し込んでしまった。
 
「あの、よかったらこれ……会社で扱っていて、スマホの画面拭きや眼鏡拭きに使えるんです」
 
今年の干支、へびのイラストをあしらったクロス。
実用的ながら可愛いお土産をいただいた上に、
 
「送りますよ!」
 
次の予定の場所近くまで送ってくださるという。
なんて神様のような方なんだろう。
 
いい方だったなぁ。
でも初対面の女性に気を使ってくださったのかな。どうだったんだろう……。
できればもう一度お会いできるといいなと思いつつ、奥手な私は踏み込めずにいた。
 
お店を出て歩き出したところ、ふと足を止められたので、
忘れ物か何かかしら、と顔を上げたところ、
 
「あの、よかったらLINE交換してもらえませんか?」
「はい、是非!」
 
あぁよかった。
社交辞令かもしれないけれど、仲良くなれるといいな。
 
2冊目の手帳なんていらない、と思ったけれど、
普段携帯しない方の手帳だからこそ、モヤっとした出来事を思う存分吐き出せて、
「埋葬」すると、
自分から切り離すことができたのか、くよくよと考えなくなった。
時々見返したら、成長記録にもなりそうだ。
 
手帳の使い方は人それぞれ、工夫があると思うけれど、
2冊目を「成仏ノート」にした私は、
これからをもっと幸せに生きられることを期待したい。
 
 
 
 
***

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2025-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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