メディアグランプリ

病気を乗り越えた小さな勇者たちの友情


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:神林 智子(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
私が小学校2年生の頃、私は突如病魔に襲われました。熱が続き、食事がほとんど取れず、体重が20パーセントほど減少し、栄養失調状態に陥ったのです。三か月ほど入院ということになりました。今でも、私の骨を切ってみるときっと飢餓の跡が見えるのではないかと思っているほどです。
 
そんな私を救うために、医師たちは輸血を施しました。なんと3度も輸血を受けることになったのです。2回目の輸血の際に拒否反応が起こり、私は呼吸困難に陥りました。病室は一気に慌ただしくなり、看護婦長さんが急いで注射の準備をし、担当の医師が駆けつけ、周りでは叔母が私の名前を呼びながら泣いていました。そんな中、私は案外冷静で、「これってドラマで見た感じだ。もしかして私、死ぬのかな?」と思ったことを覚えています。その後、鎮静剤が効いて意識を失いましたが、意識を取り戻したときにはなんとか輸血は成功していました。
 
病気自体は輸血のおかげで持ち直したものの、栄養失調の影響で頭髪がすっかり抜け落ちてしまいました。退院後、1か月の自宅療養を経て、ようやく通学の再開が医師に許可されました。
 
4か月ほど学校を休んでいた私は、久しぶりに学校に行けることが決まり、小躍りして喜びました。一方で、両親は私の見た目を心配していました。髪の毛がない私が学校に行けば、好奇の目にさらされるのではないかというのです。そこで、両親は私に、その年は家でゆっくり過ごし、次の年に2年生をやり直すしてはどうだとを提案しました。
 
この提案に私はショックを受けました。ようやく友達に会えると思っていたのに、1年遅れることになると、同級生たちとは一緒に過ごせなくなるということだからです。「大丈夫、学校に行くよ」と強く言い張る私に、小学校の教諭をしていた母は、何度も説得を試みました。母は子供たちの残酷さをよく知っていたからです。「お前の外見のせいでいじめられるかもしれないよ」と、母は最後にはかなりストレートなことを言いました。そう言われて初めて、私は鏡の中の自分をじっくりと見つめました。
 
確かに、髪の毛がない私の姿は痩せ細っていて、ひと夏外に出ていないせいで青白くなっていました。不謹慎ですが、私はアンネの日記に出てきた収容所の人々のようだなぁと思いました。しかし、それでも私は母に対してこう言ったのです。「いじめられるかもしれないけど、行ってみないと分からないよ」学校に行きたい気持ちが強かったのでしょう。母もついに折れました。
 
父はデパートでベージュのシックな帽子を選んで買ってきてくれました。それを被って、張り切って登校しました。私の見た目がすっかり変わってしまったため、クラスメイトたちは最初、私が誰だか気づきませんでした。「転校生?」と聞いてくる子もいました。担任の先生が、私をみんなに紹介してくれました。「ともこさんは重い病気だったんだけど、頑張って治ったんだよ。しばらくは午前中だけの登校だけど、また一緒に勉強できることになりました。よかったね。仲良くしてあげてね」
 
席に着いた後、私は帽子を取りました。教室中がざわめきましたが、不思議と私は恥ずかしいという気持ちが一切なく、連絡帳にもニコニコしていましたと担任の先生が書いていました。私の見かけはクラスメイトにはショックだったようです。仲の良かった子は、私の髪の毛のない頭をだまってなでていました。
 
休憩時間になると、案の定、他のクラスの子たちが私を一目見ようと廊下に集まりました。しかし、クラスメイトたちは前後の出入り口にバリケードを作り、私を守ってくれました。遊びをそっちのけにして守ってくれるクラスメイトに、私は「ありがとう」と言い、彼らも笑顔で応えてくれました。
 
久しぶりの授業はとても楽しかったです。入院中、熱が下がってからは院内教室に出席することが許され、1か月ほどで国語と算数はしっかりキャッチアップできていました。
午前中の授業を終え、早退する時間が来ました。ランドセルに学用品をしまい、友達に「また明日ね!」と言って教室を出ようとした時、クラスのガキ大将が私に駆け寄り、「忘れ物!」と言って私のベージュの帽子をやさしく被せてくれました。
 
クラスメイトのおかげで、私はもう髪の毛のことなんて忘れるくらい初日から馴染んで楽しんでいました。その後もクラス全体で私を守り続けてくれました。そして私の髪の毛も徐々に伸び、午後の授業も受けられるようになり、体育はできないものの、普通の学校生活を送れるようになりました。
 
これは大昔の話ですが、2年3組のクラスメイトには今でも感謝の気持ちを抱いています。彼らの温かい心遣いと支えがあったからこそ、私は再び笑顔で学校生活を送ることができたのです。
 
 
 
 
***

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2025-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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