メディアグランプリ

もうすぐ30歳の私は、就職前と同じ不安に向き合う。


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記事:shiho(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
30歳を迎えるのが、こんなに怖いとは思わなかった。
気づけば、カウントダウンが始まっている。私は今、29歳。30歳まで、あと8ヶ月。

 
「30歳になって何が変わるのか」

 
数年前の私なら、きっとそう思っただろう。でも、現実は違った。キャリア、結婚、出産…人生の節目とされるものが次々と迫り、焦りが募る。

 
「早く結婚しないと婚期を逃す」
「子供を望むのかどうか、早く決めた方がいい」
「子なしは後から後悔する」
「30歳までにキャリアの方向性を決めたほうがいい」
 
そんな言葉が、SNSでもリアルでも飛び交う。もちろん、人それぞれ考え方は違うし、正解なんてない。それはわかっている。それでも、情報の渦に飲み込まれ、気づけば息苦しさを感じていた。

 
ああ、あの時と同じだ。

 
大学3、4年生の頃、就職を目前に控えた私は、今と同じように大きな不安を感じていた。当時の私は、どこでどんな仕事をするのが良いか、決めきれずにいた。

 
それまで、自分の感性を大切にしながら、興味のあったものづくりに関わる仕事を模索していた。職人さんが好きで、取材をしたり、展示会を企画したり……実際に、ものづくりの現場である酒蔵で働いたこともあった。けれど、「ここで働く」という実感が持てなかった。

 
「本当にこの道でいいのだろうか」

 
そう自問しながら、時間をかけて、何人もの人に話を聞き、自分の進むべき道を探した。そもそも、社会に出るとは何なのか。どこに自分の居場所があるのか。どこなら自分が力になれるのか。そんなことを考えては、答えが見えなくなり、迷宮を彷徨うような気持ちだった。そんな中、「君の経験や感性こそ、私たちが求めていたものだ」と言ってくれた企業に出会い、私は拾われるようにして就職先が決まった。ものづくりの魅力をバイヤーとして広める仕事。願ってもないご縁である。

 
だが、就職が決まっても、不安は消えなかった。入社前に先輩たちの話を聞くと、ネガティブな言葉があふれていた。

 
「入社前の理想なんて幻想だった」
「仕事に追われる毎日で、未来なんて語る余裕はない」

「給料を上げることしか考えられなくなる」
「このままでいいのか、と思うのに、なんとかしてやろうという気は起きない」

 
そんな声が耳に入るたびに、「私はそうなりたくない」と強く思った。でも、いざ会社に入れば、私も同じように流されてしまうのかもしれない。いつの間にか、目指していたものを忘れ、これまで磨いてきた感性も埋もれてしまうのかもしれない。そうなった時、私は私を好きでいられるのだろうか……その恐怖が、胸を締めつけた。

 
だからこそ、私は考えた。

 
「社会の流れや会社の文化、人の期待に流されてしまうかもしれない。でも、その中で自分を見失わないために、準備をしよう」と。

 
私は、自分が何を大切にしたいのか、どんな人間でいたいのか、何を叶えたいのか、どのように自分を活かしたいのか……そんなことを言葉にし、自分の中心に据えることにした。働く意味、人生において譲れないもの、目指す方向。それらを明確にすることが、入社前にできる最大の準備だと気づいた。

 
実際に社会に出てみると、予想どおり波にのまれることもあった。業務に追われ、人間関係に苦しみ、何のために仕事をしているのか見失い、悔し涙を流した日もある。それでも、入社前に決めた「自分の軸」があったから、何度でも立ち返ることができた。今でも、変化しながらも、自分が大切にしたいものを守り続けている。

 
そして今、私はまた、大きな不安を抱えている。就職前のあの時と同じだ。

 
でも、あの頃とは違うこともある。

 
互いの人生を応援し合いたい、大切なパートナーがいる。 いろんな思い出を共有できる、かけがえのない友人がいる。 これからを見守ってくれる家族がいる。 そして何より、ここまで必死にキャリアを積み、自分を磨いてきた「私」がいる。

 
「何を不安がることがあるのだろう」
そう思うのに、とても怖いのだ。

 
その理由のひとつは、「何かを捨てる」決断が増えてきたからだろう。何かを選ぶたびに、何かを手放さなければならない。どうにもならない年齢のリミットもある。本当に捨てていいのか、捨てたらどうなるのか……そう思えば思うほど、未来が見えなくなる。

 
もうひとつは、一人では決められない選択があること。私の人生は私のもの。でも、大切なパートナーと共に未来を描こうとしている。私の一存では決められないこともあるし、未来は予測できない。そんな中での決断は、不安でたまらない。

 
でもきっと、乗り越え方は就職前のあの時と変わらないのだろう。私はどんな未来を描き、その時どんな自分でありたいのか。そして、何を守り続けたいのか。それらを考え、しっかり中心に据えることでしか、不安は拭えない。そして、そんな「自分の軸」がぶれないよう、自分に問い続けながら、これからも歩んでいくしかない。時には周囲の声に埋もれることもあるかもしれない。社会の流れに、流されるかもしれない。そんな時こそ、「自分の軸」に立ち返るのだ。

 
先日、こんな不安を抱えていることを、ふと周囲に漏らした時があった。すると、同じように不安を抱え、向き合っている人が多いことに気づいた。

 
ジャーナリングをして自分と向き合っている人。
目指すキャリアを考え、第一歩として住む場所を変えた人。
パートナーと相談を重ねて結婚・出産を通して家庭を築くことを始めた人。

 
みんなそれぞれの方法で、自分が納得するまで向き合っている。

 
私も今、友人の真似をしてぽつりぽつりと日記を書いている。不安ばかりが溢れ出すけれど、それでも言葉にしてみると、少しだけ気持ちが整理される。この不安は、いつか拭えるものなのか、それともずっと抱えていくものなのか。それはわからない。

 
だからこそ、30歳までの8ヶ月、私は「自分の軸」をじっくり見つめ直す時間にしようと思う。書くこと、話すこと、決めること……そうやって、一つひとつ、自分の未来を形作っていく。そして30歳を迎えたとき、「今の自分でよかった」と思えるように、一歩ずつ進んでいきたい。
 
それが、私がこの不安と向き合う方法だ。
 
 
 
 
***

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2025-02-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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