事実は小説より奇なり
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:白峰優梨子(ライティング・ゼミ11月コース)
それは21歳の時だった。大学2年になったばかりの私は、英語劇でお世話になった演出家の方からこんな依頼をされた。
「知り合いが海外で映画を作るので、お手伝いできる若者を探してるから面接に行ってきて!」
行ってみるとそれは国際的な映画でなんでもパリに長期滞在して、日本のスタッフが宿泊するマンションで家事などをする若者を探していた。私は面接者に「フランス語は高校の時にやりましたが喋れません、お料理も出来ません、テレックス(その当時のファックスのような通信手段)もやった事ありません」と何も出来ないアピールをしたのに何故か私が選ばれてしまった。
行く事が決まってからは、あれよあれよと出国してパリで約8ヶ月、大きな問題も無く無事に撮影は終了して私も帰国をする事になったが、せっかくヨーロッパに居るんだからユーレイルパスを買って旅行してから帰国しようと計画して、その為の証明写真を近所のスーパーで撮った。
ちょど写真が乾くのを待ってたら、隣でアラブ系の男性がコピーを撮っていた。なんだか上手く出来なかったようで私に話しかけてきた。
「このコピーをどうやったら撮れるか分かりますか?」
フランス語だったけど、様子からどうやら原稿が大きすぎてスーパーのコピー機では撮れないという事が分かった。なので「私が帰り道の途中にある近所のコピー屋さんを知ってるから連れて行って上げますね」と英語とジェスチャーを駆使して伝えて一緒にそこへ行くことになった。
いざ歩き始めたら彼が遠くに見える高いマンションタワーを指さして「私はあそこで仕事をしています」と言った。私はビックリ! だってそこは私が長期滞在しているマンションだったからだ。「私はあそこに住んでます!」って言うと彼もびっくりして「何階?」と聞いてきて、私が「42階」というと彼も「42階だ」と言った。お互いにこの偶然に驚きと不思議な感覚になっていた。更に「何号室ですか?」と尋ねると、彼はなんと隣の部屋が仕事場だった!!!
無事にコピーを撮り終えて、別れ際に彼が「休憩時間にあなたの部屋を訪ねていいですか?」と聞いてきたので、何も用事がなかった私は「オーケー」と答えた。
そこから毎日デートをして、彼はカタコトの英語で私はカタコトのフランス語でお互いの事を語り合った。そしてその後、私は帰国前のユーレイルパスを購入することもなく、帰国までの間、楽しく同棲生活をした。
彼はギリシャ彫刻のような顔で黒の巻毛で細身の長身だった。実は初めて会った時、何か懐かしいようなずーっと見つめていたい感覚の顔だと思った。しばらくして思い出した。
「わ〜、私小学生の時にギリシャ彫刻のアポロンの顔が何故か大好きだった!」
まさに小さい頃好きだって思ってた顔の人が目の前に居て、一緒に暮らしているという摩訶不思議な感覚の毎日だった。
パスポートや滞在許可書の関係で日本に帰国しなければならない時期がきて、もうお別れかと思ったけど、彼は私と一緒に居たいと言ってくれた。私も同じだった。
「もし本気でそう思うなら日本に来て両親に会ってくれたらパリにまた来ます」と約束して私は帰国した。
数ヶ月後、彼は必死で働きお金を貯めて来日して両親に会った。約束通り私は渡仏して彼との生活を改めて始めた。
1年目は生活に慣れるのに必死だったが、2年目に入ってからは余裕も出て、私のフランス語もかなり上達して、自分と彼との考え方や感じ方の違いによるストレスを感じるようになっていた。
ストレスの一つは彼がケチだったこと。彼もフランスでは外国人なのでなるべくお金を使わないようにしているのは分かるけど、映画を観に行った後、私はマクドナルドでも良いから外食したかったのに、彼は私が作る夕飯が良いと主張する。彼は絶対に料理はしない。その考えを絶対に曲げないので、結局映画を観るのが楽しく無くなって、観に行く事をやめてしまった。
2年目を過ごしながら、このまま私は彼と結婚して生きていきたいのか……。私は何をして生きていきたいのか……。どうしていきたいのか……。悶々と悩み続けた。
彼は私のことを大好きだった。私も彼のこと大好きだった。でも私にとって映画や舞台などエンタテインメントや芸術は凄く大事なもの。その世界を楽しむことを自由に出来ない状態だと私らしく無くなってしまう。全てを含めての私を大好きでいて欲しいけど、それが無理なら仕方がない。2年が終わる頃にお別れすることに決めた。
お別れしてタクシーの中で「日本に帰ったら、もう2度と会う事も無い」と思って悲しかったが、何故だか「また出会う!」と言う想いがよぎったのだった。
「ん? なんで? 地球の反対側で会うわけないのに……」
帰国して数年後、私はショーの踊りの振り付けを練習する為に都内のスタジオに居た。途中休憩時間に外を歩いていたら、なんと向こうから彼が歩いてくるではないか!!! 「わ! うっそ! 思ってた通りになっちゃった!!!」
近づいてくる姿にドキドキして思わずうつむいた私。彼は5歳くらいの目鼻立ちのはっきりした可愛い女の子と手を繋いでいた。以前パリ在住の在日韓国の女性と結婚したという話を聞いてたから、その人との子供なんだとちょっと羨ましい気持ちだった。「日本に居たんだ!」すれ違ってから振り向いたらなんと彼も振り向いて私を見てた。「あ!気づかれた!」
スタジオに戻って少ししたら、トントンと階段を登る音がして、見ると彼が入り口に現れた。思わず目が会ってお互いニコって笑顔で挨拶した。「わ! 笑顔で挨拶しちゃった!」その後はドキドキして練習どころじゃなくなってた。
その後スタジオのオーナーのお姉さんが彼の奥さんだと知ってビックリ。そしてなんと娘さんは「ゆりちゃん」と呼ばれてた。奥さんが名付けたそう。彼は私の事を「ゆりこ」って呼んでた。いくら奥さんが名付けたとは言え、ん〜、複雑な気持ちだった。
彼と再会して言葉を交わす事はなかったけど、実はまたよぎっちゃった想いがあった。
「二人とも後腐れが無くなった時にまた一緒になる!」
え〜、どういう事?パリでよぎった想いが実現してしまったので、今回も実現するかもって思った。いつなのかは分からないけど、今後は一緒に幸せに生きていける気がする。
数年後、アカシックレコードという宇宙にある情報を誕生日から読み取るという方にセッションをしてもらった。このパリで出会った運命的な彼と私の関係を見てもらった。
するとギリシャ時代に二人は夫婦で子供も居て、私はその時代にもお芝居をしていて、彼は芝居が大嫌いだったので、私はお芝居と家庭、子供に対しての葛藤を抱えたまま人生を終えたという事だった。
「今世はお芝居を選んで良かったですね。もし結婚して子供を作っていたら前と同じように葛藤を抱えた人生になってましたよ」
そっか……。今回は独身でお芝居のお仕事をし続けてきて良かったんだ!
「二人とも後腐れが無くなった時にまた一緒になる!」
よぎった想いは、またいつか現実になるのだろうか……。
***
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