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第一印象が悪い僕にはいいことしか起こらない

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:まこと(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
「最初はこんな人で大丈夫かと心配だった」
「愛想はないし、緊張してるし、なんでこんな人を担当にしたんだ? ってクレーム入れようと思ったくらい」
 
お客様アンケートより抜粋。
 
僕は、数カ月単位でクライアント企業に派遣され、先方の「中の人」として一緒に働きつつも、同時に「外部のIT専門家」として専門的なアドバイスを提供する仕事をしている。また必要に応じて、その場で自社の売上に繋がるような交渉を行ったりもする。
 
専門家でありつつも、営業マンでもある。
 
僕自身は営業のキャリアもあるし、専門家としての知識もあるので、仕事としてはどちらでもできるんだけど、「営業マン」の顔としては決定的な弱点がある。
 
「無理」なものは「無理」とハッキリ言ってしまうのだ。
 
普通、営業マンであれば売上が欲しいので、できなさそうなことでも、やんわり妥協点を探っていったりする。一方、専門家でもある僕は、無理、無駄、不可能がすぐに分かってしまうので、その場で「無理ですね」といってしまう。
 
お客さんは面食らってしまう。
 
お客さんはというのは、どうしても営業マンには営業マンぽい所作を期待してしまうもののようだ。僕は、もともと感情表現も薄い方だし、お客さんに淡々とした印象を与えてしまい、心象を害してしまうこともあるようで。
 
「いやぁ~難しいですね~」なんて柔らかく応対できればいいのは分かってるんだけど、なんかそういう会話のクッションのような語彙が貧弱だし、そのやりとりがもどかしい。
 
分かりやすく伝えた方が時短になるし、結局のところ僕だって妥協点を探って着地はさせるわけで、最後にたどり着く場所は同じなのだ。
 
そんな調子で、僕の第一印象というのは「何だ、こいつは」と、それ以下には下がらないようなところからスタートしてしまう。
 
一方。
よく仕事でペアを組まされる石井くんという同僚がいる。そいつはめっぽう愛想がよく、初対面の時から声もハキハキしてよく喋るし、体格もよく多趣味でカッコいいので、一緒にクライアント先に常駐してても本当によく話しかけられる。
 
社内を歩いているとすぐに捕まって仕事を頼まれるので、会議室Aから会議室Bへ歩いて移動するだけで40分かかったという逸話がある。それだけ人気者になりやすいのは眩しく思う。
 
正に陰と陽だな、これは。
 
「ねえ、これってどう思う?」
 
僕はある時クライアントに呼び出されて、企画について相談されるが、違和感を感じる。
 
「あれ? これって石井くんの担当範囲では? 石井くん呼びましょうか」
「あの、確かにそうなんだけど。できれば、まことさんにお願いしたいの。どう? これ」
 
事情はよく分からなかったが、急いでそうだったので回答してしまう。
 
「問題ないと思いますよ。納期はテスト含めて2週間前後でしょうか」
「よかった~! 見積送っといてね!」
 
しばらくすると石井くんがデスクに戻ってくる。
相変わらず色んな人に絡まれてタスクを山ほど抱えて顔色が悪い。さっきの話を共有しておく。
 
「石井くん、なんか夏がナントカっていう件? なぜか僕がレビュー頼まれたから一応OK出しといたよ」
「え、まじ? ありがとう! そういえば回答できてなかった……」
「見積くれってさ」
「了解!」
 
結局、石井くんと僕の常駐期間は1年に及んだ。プロジェクト完了とともに、自社に戻ることになり、最後にクライアントが大きな送別会を開いてくれる。
 
「まことさん! あなたとゆっくり話がしたかったの、隣においでよ!」
 
井上さんという超キーパーソンだ。けっこう酔ってるな。
石井くんと二人で井上さんの席の方に向かう。
 
「ちょっと、石井さんは来なくていいよ……!」
 
井上さんは結構ナチュラルに「もう来なくていい」とか会話に混ぜてくる。
クライアントの社内でも厳しくて有名で、僕らみたいな外部から来ている人間も、気に入らなければ、あっという間に首を切ってしまうのを何人も見てきた。
 
「え、そんなこと言わないでくださいよ 笑」
 
石井くんは持ち前の明るい笑顔と大きな声で近づいていく。
 
「石井さんね、とってもいい人で面白いんだけど、仕事の話はイマイチ信用できないのよ。すっごく期待膨らませといて『結局ダメでした』みないなのばっかりじゃん? まことさんはね、態度が悪くて失礼な人に見えるけど、仕事はものすごく正確。最初は嫌で嫌で、すぐにでも追い出そうと思ってたけど」
 
態度が悪くて失礼……。厳しいなぁ。
でも実はこのパタン、学生時代から何度も出くわしてる「自分あるある」で、だいたい送別会とかで言われるんだよね。
 
「面白い人じゃん、早く言ってよ。怖い人かと思ってた」
「もっとニコニコしてたらいいのに、もったいない」
 
まあ、言ってることはわかる。でもな~。
 
「期待を裏切る」っていう言葉があるじゃない? いい意味と悪い意味、両方で使われる。この文章の流れで言うと、第一印象がどれだけ良くても、中身が伴ってないときに生まれる「期待を裏切るギャップ」と、僕みたいに最底辺からスタートして「期待を上回っていくギャップ」。
 
これ、時間の経過で、右肩下がりの線と右肩上がりの線の逆転現象みたいなことが起こる。最初の印象がいい人は評価が下がっていき、そうじゃない人は逆に評価が上がっていく。
 
個人的には、前者と後者で、得られる幸福の総量は変わらないと思う。
 
そんな話をすると「でも、そんなに入口でフィルターかけなくていいじゃん、間口は広い方がいいよ」なんて言う人もいるけど。それなら「最初の好印象を最後まで維持してみてよ」とは思うよね。僕だってわざとやってるわけじゃないし。
 
「第一印象が悪い」というのは極力避けられるべきこととされているけど、ポジティブな側面もあるわけです。何しろ余計な人付き合いが増えない。街を歩いていて道を聞かれたことがないし、宗教の勧誘もこない。社内でも声をかけられないから自分の仕事に集中できる。
 
それでも僕みたいなやつと付き合ってくれる人はちゃんと残っていくわけで、そんな友人たちを僕はとても大事にしている。十年単位の付き合いのお客さんもいるし、仕事の相談が転職しても来たりする。
 
「第一印象がいい」のが正義なのは全然否定する気は無いんです。でも、別に第一印象が悪くたって、いいことは一杯あるよ、ということを力強く主張しておきたい。
 
 
 
 
***

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2025-02-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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