知らない領域を学ぶコツは「真っ白なキャンバス」に色を塗ること
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:久保田倫生(ライティング・ゼミ1月コース)
「君の専門領域ではないけど、まかせたよ!」
上司の一言に私は悶絶する。
私の仕事はアナリスト。とある領域について現状を把握し、今後の展望を取りまとめることが仕事。
当然、専門知識が必要とされる職種であるため、それぞれ専門領域があり、専門領域をベースに仕事が割り振られる。
社会人として働き始めて数年。やっと一人で仕事が回せるようになったころのこと。仕事が繁忙期であったため、私の専門領域外の新規領域の仕事を割り振られたのだ。私の顔はきっと真っ青だったに違いない。
さすがに上司も私には荷が重いと判断したのか、
「Aさんにも手伝ってもらうようにしたから、Aさんと仕事やってね」
Aさん。
私の中では名前だけの存在だったのだが、社内では「新規領域のAさん」と呼ばれ、新規領域にはめっぽう強い凄腕とのうわさが流れていた。
「おーい、こっち、こっち」
「Aだよ、よろしく。早速なんだけど、まずはこれ目を通しておいてね」
どさっと関係する本と資料を渡された。
どさっと表現したが、デスクが埋まるぐらいの本と資料である。
「あんまり考えずに、まずはとにかく全部読んでな」
「で、読み終わるまではほかの事一切やらなくていいから、まず全部読んでな」
いきなり、こんなに?
でも自分で考えても何をやったらいいかわからないのだから、Aさんの言われたとおりにやるしかない。
私は言われた通り資料と本に目を通した。当然中身がわからないところや疑問に思うところがいっぱいあったが、それはそれとして、とにかくすべてに目を通すようにした。
それを数日かけてこなした後。
「おー、資料読み終わったか?」
「はい、一応すべて目をとおしました」
「よっしゃ、じゃ、次な」
「次ですか?」
「そう、次。次はヒアリングな」
と言って、私にスケジュール表を渡すAさん。
なんと、私のスケジュールを完全に無視して、キープレイヤーに対するアポがびっしりと入っているのだ。
「ええっ、こんなにですか?」
「そうだよ、次はやっぱり現場の人の声だよな。」
「いや、でも数多いし、そもそも資料読みこんだだけで、ズブの素人がこんな方々にあって話ができるのですかね?」
「大丈夫、大丈夫。とりあえずもう午後からアポ入っているからいくぞ~」
何がなんだかわからないまま、とにかくヒアリングの数をこなすわけです。
で、当然わからないことが多い。話をしていてもわからないことだらけになるわけです。
やばい、話についていけいない、どうしようと思っていた矢先に、Aさんはヒアリング先の方にこう言うのです。
「なるほど、そういうわけですね。ちょっとここがわからないので、現地を視察させてもらえませんかね?」
で、今度は現場視察をたくさん重ねるわけです。もう私はついていくだけで精一杯なのですが、Aさんはそんな私のことなんかお構いなく、視察の予定を入れてくるわけです。
さて、視察行脚を終えて、事務所に戻ってきたときに、Aさんがおもむろに私に近づき、真っ白な紙を数枚渡してきたのだ。
「今回の一連のことで思ったこと、感じたこと、わかったこと、わからなかったこと、何でもいいからぜーんぶこの紙に書いてみてね。書き方もルールないから、とにかく思いつくものはすべて書いてみて」
私は言われた通りに書いてみる。
すると……
不思議と、スルスルとどんどん出てくるのだ。
同じことをAさんもやっている。すごい勢いだ。
もう書きなぐっているという表現がぴったりの書き方。
さて、二人で書き上げたものを見てみる。
不思議なもので、同じ資料、同じヒアリング、同じ視察をしているのに、書かれていることが随分と違っているのだ。
「これがお前の今回のとりまとめだ。で、こっちが俺のとりまとめな」
「それぞれに色がでているだろ? それが俺とお前の色よ。個性よ」
「でな、ここまで情報がそろえば、もう報告書をかけるだろ? 整理して並べかえれば一丁上がりよ」
怪訝そうな顔をする私に対して、Aさんは畳みかけるように言う。
「あのなー、新しいことって、もっと体系的に学ぶものだと思ってない?」
「思ってました」
「そうだろう。それって義務教育の時のクセが抜けきっていないわけよ。義務教育ってのは、ある一定のものを覚えてもらうために用意されたもので、覚えてほしいものってのは決まってるわけ。だから提供する側もどうやったら定着するか、考えに考え、最終的に体系化され、洗練されたものになっているんだよな」
「でもな。子供見てみ。何か興味あるもの見つけたらとりあえず、わーって行くし、親にこれ何? って聞くだろ? そして、興味あれば触るし、探すし、調べるわけよ」
「そう、知らない、わからない領域って脳の中身って真っ白なんだよ。真っ白なキャンバスみたいに。そして自分なりに触ったり、聞いたり、調べたりすることで初めて脳の中で体系化されるんだと思うのよ」
「でな、その体系化のされ方が人によって違うわけな。それがその人の「色」になる。同じものを見て、同じ体験をしてもアウトプットが違うのはそういう「色」が反映されているんだろうな」
私は衝撃を覚えました。なるほどと。
自分の知らない、新しい領域というのは、当然頭の中身はその内容について「真っ白」な状態です。
だから、周りにある情報、自らの体験等、とにかく情報をインプットして、その「真っ白なキャンバス」に自分なりに書き込んでいく。
まずは圧倒的なインプット。そしてインプットをした後は、自分色に仕上がったキャンバスの内容をアウトプットしてみる。すると自分色に仕上がった内容が現れてくるのだ。
ああ、そういうことかと。知らない領域を学ぶコツって、あまり深く考えず、
「自分の中にある真っ白なキャンバスに色を塗っていくこと」
なんだと。
体系的にするのは、アウトプットするその時でよく、とにかくインプット。
インプットの仕方も体系的にインプットするのではなく、とにかく量をこなす。
そうすると自分なりの体系が形作られるのだなと。
それ以来、私は新規領域の仕事が好きになっていった。
周りからも、アイツに新規領域の仕事を任せたら何とかなるだろうと思われるようになった。
私はあの時のAさんに少しでも近づけただろうか。
新規領域の凄腕って私が呼ばれるとき、きっと、それがAさんに対しての恩返しになるんじゃないかなぁと。
***
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