福岡天狼院、つくろうと思います。《天狼院通信》
正直言ってしまえば、およそ2年前、僕が個人ブログで『三浦書店、立ち上げようと思います。』と宣言したとき、ほとんど無一文でした。そして、誠に不本意なかたちで仕事を失おうとしていました。
窮地と気だるい絶望の中で、光を見出そうとして書いたのがその記事でした。
これを書くことによって、自分が何をやりたいのかが明確になった気がします。そして、そのときから少しの疑いもなく、天狼院書店はできると思い続けてきました。
ただ、状況は厳しいものでした。
ちょうどその時分、田舎にいる弟が結婚するということで、当然ご祝儀を包まなければならなかったのですが、銀行に行き、記帳してみると¥15,000しかありませんでした。それがリアルに、その当時の僕の全財産でした。
到底、新幹線などでは帰郷できなかったので、¥2,800の夜行バスで仙台に向かいました。その状況でしたから、もちろん、ご祝儀を包むことはできずに、代わりに以前に仕事で使うために買っていた一眼レフを抱えて行き、これをご祝儀として渡し、弟や両親に唖然とされたものでした笑。
再独立のようなかたちで、給料のない世界へと戻ってきたのですが、仕事があったわけでもありませんでした。
ただし、案外、晴れ晴れとした気持ちだったことを今でもよく覚えております。
そんな中、ほぼ不眠不休で2012年の4月に立ち上げたのが、「Web天狼院書店」のホームページ、まさしくこのページでした。
ここに新しい書店に対する夢を書き連ねていきました。
当時、僕と真逆でリアリストである彼女には、
「そんな夢みたいなこと言ってないで、とりあえず、自分の食い扶持確保しようよ。コンビニの夜間バイトでも道路工事でもいいじゃない」
と言われましたが、今思えば至極もっともな話だと思います。
客観的に見れば、当時の状況で僕が書店を立ち上げるというのは、非現実的で、夢想的で、もっと言ってしまえば、あるいは現実逃避とも見えたかも知れません。
けれども、僕には確信がありました。必ず天狼院ができるという明確な「イメージ」がすでに頭の中に思い描けておりました。
それは生まれたばかりの天狼院の店頭で、「こんにちは、いらっしゃいませ」と笑顔でお客様を迎えるイメージでした。
今、冷静に振り返って考えてみても、よくも本当にかたちになったものだと自分でも思います笑。
合理的に考えれば考えるほどに、当時の僕が新規で新刊書店を立ち上げることなど無理なことでした。
開業資金の面において、そして書店というビジネスモデルの収益性の面において、新刊書店の立ち上げのための障壁はあまりに高く、資金の調達ひとつをとっても、天狼院のオープンまでには、超えなければならない障壁が少なくとも10はあって、そのそれぞれが峻険で踏破の可能性が、すべて10%未満というようなものだったからです。
それを普通に計算すると、きっと、天狼院書店ができる可能性はたとえば0.00001%などといった、逆の意味で天文学的な数字がはじき出されたろうと思います。
しかし、そんな確率論など無意味で、結局は世の中のすべてのことはできるか、できないかの50%でしかない。
そして、50%のことを、いかに100%に近づけるかに注力したほうが、人生は面白いに決まっている。
お金はありませんでしたが、50%のことを100%に近づけようと奮闘する僕には、幸い、優れた応援者の方々がいました。
徒手空拳で、書店を立ち上げようとしている僕に、この業界のトップランナーの方々が、次々に仕事を振ってくれました。
そんな方々のひとりでも欠けていたのなら、おそらく、きっと、いや、絶対に、天狼院はかたちになっていなかっただろうと思います。
その方々の気持ちに応えるためにも、僕はここで新たな宣言をしたいと思います。
福岡天狼院、つくろうと思います。
今からちょうど一年後の2014年12月17日に、福岡で新しい天狼院をオープンしようと思います。
この段階で発表したのは、福岡天狼院の出店の目処が立ったからではありません。むしろ、その逆です。
東京天狼院の初期在庫の支払いに奔走し、まだ天狼院が安定していない今だからこそ、宣言したいと思いました。
たとえば、十分な資金が貯まったから、次の店を出そうか、ではなんだか、潔くない。つまらない。何より、天狼院らしくありません。
暗中模索の今だからこそ、新しい光を見出すために、指針を示そうと思ったのです。
そう、二年前にそうしたように。
こうして公に宣言することによって、皆様にお約束すると同時に、何より、自分自身と約束することになります。これを達成できなければ、皆様と自分を同時に裏切ることになります。
そして、宣言することによって、逆算して今何をすべきかが明瞭になります。
2014年12月17日にオープンさせるためには、少なくとも、9月までには東京天狼院を盤石のものとしなければなりません。それはつまり、東京天狼院をオープンから一年で何としても安定した軌道に乗せなければならないということです。
軌道に乗せた後は、僕が単身福岡に行って、一から新しい天狼院をつくろうと思います。
その街を感じながら、その街に最も合った天狼院を、その街の人とともにつくりあげようと思います。
そうしてできた福岡天狼院は、東京天狼院とはまるで違ったかたちになるだろうと思います。
そうするためには、まずは今年の12月までに東京天狼院において、様々なサービスチャネルをオープンさせる必要があります。また、東京天狼院の初期在庫の支払いを早急に済ませて、取次さんに対する与信を盤石にしておく必要があります。そのためにまずは年末、奔走し、そして同時に1月のイベントなどを企画してアップして行き、店も作りこんで行かなければなりません。
1月の収益を最大化しておく目処が立てば、このすべてが実現できます。そして、福岡天狼院の出店もリアルに見えてきます。
体制の一新も必要だと考えております。
僕は現時点で、月におよそ520時間ほど働いております。一般的に月の労働時間は170時間程度でしょうから、本気で人三倍働いていることになります。正直、これは限界値に来ています。
それが社員なのか、アルバイトなのか、インターンなのか、まだ明確ではありませんが、僕の仕事をしっかりと支えてくれるメンバーを探そうと思います。
そして、僕が不在中も店舗を回せる店長候補も探して行こうと思います。
もちろん、東京天狼院に更に僕は力を注いでいくことになります。
まだ、思い描いている30%も東京天狼院はできておりません。まだまだ、天狼院は面白くなります。
何より幸いなのが、天狼院は間違いなくお客様に愛されているということです。
多くの方が、ここを自分の居場所として認識してくれるようになっております。
天狼院ノートで、Facebookで、ツイッターで、そして店での会話の中で、
「自分は天狼院が好きだ」
「本気で楽しかった」
「また来たいと思う」
という言葉に出会うと、本当に天狼院を作ってよかったと思います。正直、涙が溢れそうになります。
何より、天狼院はお客様に恵まれていると思います。
そういったお客様とともに、これからも天狼院をつくりあげて行こうと思っております。
お客様の期待に応えるためにも、より多くのお客様に愛されるためにも、これからも全力で面白いことにして行きたいと思っております。
これからも、どうぞ、天狼院書店をよろしくお願いいたします。
今日も、天狼院で皆様をお待ちしております。
天狼院書店店主
三浦崇典