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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:風間靖之(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
 月曜日の朝、駅に向かうスーツの流れ。みんな疲れている。一人ひとり、おのれ固有の歩幅・リズムがあっても良いものを、だれもかれもが、見事に同期し、シンクロしている。一律、画一化され、同調され標準化されている。革靴のヒールがアスファルトを蹴る音の粒揃いっぷり。気を抜くと、この見えないメッシュ状の鎖に巻き取られて、一員として加入することになってしまう。はぐれた羊を群れに戻そうとする牧羊犬のような作用が働いている。朝の幼稚園の校庭を見ると、園児たちが飛び跳ねながら笑いの絶叫している。成人からしたら考えられない身体の可動領域。となりの小学校の校庭を見ると、そこまで加熱していない。動きもエキセントリックな様子はうかがえない。運動会の行進。ランドセル。規律訓練の調教。社会機構へのエントリーへの準備が始まっている。
 
 何かの本で1954年以前、日本には「会社務め」や「専業主婦」という概念はなく、生活と仕事と遊びが渾然一体としているのが普通であったそうだ。わたしが信じて疑わなかった古い地図はこうだった。中学から塾に通い、進学校に進学して、有名大学を卒業して、有名な大手企業に就職する。卒業後イギリスに居住する経験をし、気がついたら地図から離脱してしまっていた。
 
 「会社人間」という言葉を理解していなかったが、最近、わかりはじめてきた。大学の同級生の小さな同窓会が定期的に開かれている。だいたい、男性メンバーは直前になって、仕事の都合がつかなくなったりして欠席。結果、女性会のなかに、わたしがお邪魔しているような格好になってしまいがち。男性は働き盛りで、忙しいのだ。そういった男性メンバーのひとりは、グループLINEの中に投稿するメッセージに第三者にはまったく無意味な仕事の内容が多く見受けられ、わたしはこう思う。頭の切り替えができないほど、会社の役割一筋の意識になっている。実は、わたしの兄もある大手酒造会社の執行役員であるのだが、会話が第三者には意味をなさない自社の情報で占められていて、退屈を通り越して、恐ろしさを覚えます。
 
 推測するに、かなりの高い確率で、こういう企業戦士のご家庭は、精神的な欲求不満が渦を巻いているのではないか、と思います。わたしは、飲み屋さんでハイテンションな主婦の方々を目にします。そして、彼女たちの間には独特の友情があるように、見受けられます。一見、男性よりも元気で、「やっぱり女性は元気だな」と思ったりしますが、ストレス発散とお祭り騒ぎのかけあわせなのかもしれない。いずれにしても、生命力の働きです。一方、男性は機械人間になっていく。
 
 「風の時代」といいますが、前の200年の「土の時代」が終わり、個人の能力が解放され、古い地図、古い秩序が刷新されるようなフェーズに地球が入るという。洗脳レベルまで個人を追い詰める異常な何か。こういったものを背後で支えている秩序が崩壊する。にわかには信じられないが、そうならなければならないところにまで来ている。
 
 大分にとある現場で、ゼネコンの現場監督と地元の土木業者さんたちと二週間工事の間ご一緒する機会がありました。業者さんの社長は最初から人懐こくて、大分県について観光ガイドレベルの説明をしてくれました。もう一人の社員は金髪の長髪、サングラスの青年。以前は、デリヘルの送迎の管理をしていたそうです。青年は社長と対照的に無愛想でしたが、市街地のおすすめ飲食店情報などを教えてもらうぐらいの距離にはなりました。最終日の夜、車でわざわざ隣町のローカルな焼肉屋まで連れて行っていただき、ごちそうになりました。わたしの偏見かもしれませんが、人間的に魅力的な人は土に近いところで仕事をしている人のように思えます。自営業、飲食店経営、フリーランス、自由業みたいに、どういうわけか大企業神話から離れた人のほうが健康的な方々のように感じられます。何かが入り替わるとき中心と周辺が入れ替わる、などといいますが、健康志向が高まるなか、人間の健康を優先して、極限まで来ている「土の時代」のつくりだしたものを手放すような流れになるのではなどと予想したりします。機械になってまでこだわっている幻想のくだらなさに目をさまして、人間性を取り戻す時代に。
 
 いささかスピってしまいましたが、そもそもわたしがこういう考え方に至った端緒はロンドンで見かけたある光景でした。日本とまったく違う小学生の遠足。引率する先生はドレッドヘアのレゲエのミュージシャン風。生徒もならんで歩いていますが、バラバラ。われわれが従っている規律は先進国特有の普遍的なものではなく、行き過ぎたものである。
 
 
 
 
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2025-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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