メディアグランプリ

恐喝してきたギャングがディズニーランドに連れて行ってくれた件について。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:紫葉アリア(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
これは私の母の友人の話である。母づてで聞いた話のため、一部脚色もしくは私の脳内で補完した情報もあるかもしれないが、すごく興味深い話だったので出来るだけ聞いた話をそのままに書いてみようと思う。
 
まず気になりすぎるタイトルについて言及すると、事実をそのまま書いている。
正直、何を言っているかわからないかもしれないが、残念ながらこちらには脚色は一切ないし補完している情報もない。母の友人にタイトル通りのことが起きたのだ。私もこの話を聞いた時、わけは分からず開いた口は塞がらずで直ぐには理解できなかった。
 
ではこの不思議な件について詳細を書かせていただく。
 
母の友人、と書くよりも名前をつけた方が話が頭の中に入ってきやすいと思うので、彼の名を「山田くん(仮)」とでもしておこう。そう、山田くん(仮)は男性なのである。
 
ある日、山田くん(仮)は大学を卒業する寸前、卒業旅行と称して1週間ほどのアメリカのフロリダに向かった。なぜ目的地がそこだったのか。それは山田くん(仮)がとんでもなくディズニー大好き男子だったからである。
皆さんはご存知だろうか。アメリカのフロリダ州にあるディズニーランドは、”世界一大きなディズニーランド”だということを。4つのテーマパークが内在しているため、1つのテーマパークに1日ずつ滞在するとするならば、最低でも滞在日数が4日以上必要だ! と言われるほどのとんでもない広さの遊園地なのだ。
 
フロリダ州に到着したその日はディズニーランドには直行せず、オーランドという街で一泊することになっていた。オーランド空港からディズニーランドは車で約数十分の距離。初日は移動の疲れを癒しつつ、明日からの楽しみに備えてフロリダの夜を楽しもう。そう思って山田くん(仮)は夜の街に繰り出したのだった。
 
そしてお酒や食事を楽しんだのも束の間。
山田くん(仮)はいつの間にか裏路地でギャングに取り囲まれていた。
 
「おい、有り金を全て出せ」
 
ギャングたちが山田くん(仮)に財布を差し出すように促す。彼らは身長も高いだけでなく筋肉隆々の素晴らしいガタイの持ち主であった。一人立っているだけで威圧感がすごいのに、それが何人もいるとなると怖さは10倍増しである。山田くん(仮)は震える手でカバンから財布を取り出し、そのまま手渡した。
 
「は?? これだけ??」
 
ギャングが声を荒げた。たったの3000円ほど。これが財布の中に入っていたすべての金額だった。山田くん(仮)は説明した。
 
「僕は日本から来ました。ものすごくディズニーが好きだからフロリダに来ました。なので1番大きいフロリダのディズニーランドをひと目見てみたいと思いました。でも僕は学生です。お金持ちではありません。飛行機代と宿泊費が高くてほとんどお金が無くなりました。なのでそれは帰りの空港までの交通費なんです。それで最後です」
 
山田くん(仮)は本来英語が話せるのだが、緊張のあまりたどたどしい感じの話し方になってしまった。
 
「でもお前、ディズニーランドには入場料が要るだろう。3000円でどうするつもりだったんだ。足りねえぞ。中で売ってるもんも高いしな」
 
「はい、僕は中には入りません。ひと目見られればそれで良いんです。お金はなくともディズニーが大好きなのでそれで本望なんです。ディズニーランドを自分の目に焼き付けたらそれで幸せ。それくらい大好きなんです」
 
ギャングたちはヒソヒソとお互い何かを耳打ちしていた。遠いところから高い交通費をかけてやって来て、大好きなディズニーランドで遊ばずにただ見にきたという頭のおかしい貧乏な日本人学生をどうするか話し合っていたんだろう。ものすごく怪訝な顔をしている。
 
「もういい。お前、帰れ」
 
たった3000円しかないのならもうどうでもいい。そう思ったのだろうか。とにかく無事に解放してくれそうだ。よかった。山田くん(仮)はほっとした。
 
ただ、解放してくれたのはよかったのだが帰りにギャングの手下が1人、ホテルの前までついて来たのが気になった。しかし彼らの目的はお金だ。つきまとっても何も得がないとわかってもらえたはず。解放感からなのか移動の疲れからなのか、その晩、山田くん(仮)はあっという間に眠りについた。
 
次の日、ワクワクしながら準備を終え、ホテルから出発しようと外に出ると。
 
「おい、この車に乗れ。お前をディズニーランドまで送ってやるよ。帰りの交通費しかないんだろ」
 
なんと昨日のギャングがいた。
拒否する間も与えられずに車に連れ込まれ、あっという間に車は出発してしまった。これは一体どういうことなんだ。同乗しているギャングは3人。取り囲まれている。逃げることはできない。隣の兄ちゃんはめちゃくちゃニヤニヤしている。どうしよう。
 
「お前、これをやるからこれで入れ」
 
なんとニヤニヤしている兄ちゃんがお札を出してきた。当時の日本円にして約3万円ほどだった。
 
「せっかく日本からアメリカのフロリダに来て、ディズニーランドを見るだけで終わるはさすがにねえだろ。この金は仲間たちで出し合って集めた。お前にやるよ。せっかくフロリダに来たんだ、楽しんでこいや」
 
車はあっという間にディズニーランド前に到着し、山田くん(仮)を車から下ろすとギャングたちは「じゃあな、またアメリカに来られることを祈ってるぜ、日本の学生さん」とクールに去っていった。
そして山田くん(仮)はその後、楽しく世界最大のディズニーランドを楽しんだそうだ。
 
 
……母からこの話を聞いて、人生は予想できないことが起きることもあるのだなと私は思ったが、気になることがあったので母に尋ねてみた。
 
「ねえ、山田くん(仮)は本当に3000円しか持ってなかったの?」
 
「実は山田くん(仮)、ホテルの部屋にほとんどのお金を置いてたのよ。その夜は夕食代だけ持って出歩いてたらしい。で、ギャングに捕まった時に見逃してもらうためのアドリブでディズニーランドを見に来たって言ったらしいよ。お金持ちだと思われたらホテルの部屋まで来るかもと思ったらしいから貧乏学生のフリに徹したって。
チケットも旅行予約時に既に購入してたしね。まさかギャングがディズニーランドに送ってくれて、ましてや餞別までくれるとは思ってなかったらしいけど」
 
「ギャングからもらったお金はどうしたの?」
 
「お土産代になったらしいよ」
 
なるほど、人生とは予想ができない方向に物事が転がることもあるものだ。お金を奪おうとしてきたギャングから逆にお金をもらうということもあり得るのだ。山田くん(仮)の機転、グッジョブすぎる。
 
私はこの話を聞いてから、「有り得ないという言葉は今後あまり使わないでおこう」と思うことにしたのであった。そしてギャングは意外とカワイイところがあることも知ったのだった。
 
 
 
 
***

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2025-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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