メディアグランプリ

初めての胃カメラは某テーマパークのジェットコースターのようだった


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記事:伊東 江梨(ライティング・ゼミ5月コース)
 
 
「面白かったです! 次も鼻から胃カメラにします!」
 
私は笑顔で答えていた。
心配そうに初胃カメラの感想を聞いてくれた看護師さんの驚いた顔からすぐに笑顔になった変化が忘れられない。看護師さんの様子から私の感想は少数派に入るのだと気づいてちょっと恥ずかしくなった。
 
そもそも私が胃カメラを選んだのは初めてのバリウム検査が辛かったからだった。正確に言うとバリウム検査の後に下剤を飲むことと下剤を飲んでもお通じが出なくてお腹が痛くなったことが辛かった。
 
バリウム検査後に何度もトイレに行き、うなだれながらしばらく閉じこもることを繰り返した。力んで意識がもうろうとする度に「もう絶対バリウム検査はしない!次は胃カメラにする!」と何度も呟いて乗り切った。もはや私はこの体験をきっかけに人間ドック自体が嫌になっていた。
 
しかし、私の職場では健康診断又は人間ドックを年1回必ず受けなければならない。健康診断を選択できればよかったのだが、仕事の都合でどうしても日程が合わず断念した。
気が付くとバリウム検査後の悪夢から10ヶ月ほど経っていた。とうとう人間ドックの予約をしていないことを上司に呼び出して指摘されてしまった。その日から上司に人間ドックの予約をしたかと顔を見る度に聞かれるようになった。さすがにまずい展開だ。
 
それでも人間ドックの予約を入れなかった私に半ば呆れながら上司が胃カメラについて教えてくれた。鼻からと口からのいずれかを選択できること、上司は鼻からにして以来かなり楽になったと言っていた。渋々ながら鼻から胃カメラができる人間ドックに予約を入れた。
 
予約を入れた日から胃カメラ経験者のブログを読み、職場の同僚や友人にも気を付けるポイントを聞いてみた。どうやら利き鼻穴というものがあるらしい。鼻腔の広さや形は左右で違い、カメラの管がすっと通る方で検査をお願いすると良いとのことだった。
 
利き鼻穴は胃カメラ前に自分で調べておくと良いと知ったので、早速鼻うがいをしてどちらの鼻穴が通りやすいか検証してみた。結果はどちらも通りにくくて辛いだけだった。万が一どちらの鼻穴も管の通りがよくないと口からに切り替わると知って、ただ鼻からできますようにと祈るしかなかった。他にも麻酔液が不味い。鼻穴にダミーの管を突っ込まれたまま処置台へ誘導される。口は開いたままでよだれが流れるのも気にせずゆっくり深呼吸すると良いなど繰り返し記事を読み込んだ。
 
人間ドック当日はなんと最後の検査が胃カメラだった。より緊張感が高まる。看護師さんから検査の内容の説明を受ける。ややテンションが高めの看護師さんに想定通り利き鼻穴を聞かれた。素直に「どちらかわからない」と伝える。看護師さんは「初めてなのですね!管が通れば安心ですよ」とテンションが高いまま左の鼻穴から差してくれた。「伊東さんこれで次回も鼻から胃カメラできますよ!よかったですね!」と拍手しながら嬉しそうに言ってくれる。
 
ちょうど左鼻穴の管の通りがよかったようでダミーの管を入れたまま数分待ってから処置台に乗ることになった。麻酔薬は予想より不味くなかったが、飲み込んだ瞬間からじわじわと鼻腔から喉のあたりの感覚がなくなっていき、心拍数がどんどんあがった。呼吸も荒くなるので深呼吸をゆっくりした。看護師さんのテンションの高さに救われた。
 
さあ左側を下にして処置台に乗ったらリラックスできる身体のポジションをとった。顎を軽く上げて私の体が処置台の上で安定した。医師からこれから行う胃カメラはモニターで各臓器の状態を私も見ながら進めてもよいか尋ねられたので「見たいです」と伝えた。
 
するとダミーの管が抜かれ、胃カメラが私の左の鼻穴から喉の奥へと進んでいく。同時に医師は実況中継を始めた。まさに未知との遭遇体験が始まった。医師は食道の入り口で深呼吸の指示をしながら「伊東さん、上手です」と褒めてくれる。食道から胃と十二指腸まで「綺麗ですね!」を連呼してくれるので内臓のこととわかっていながらも自己肯定感が爆上がりした。看護師さんは背中をずっとさすってくれていて気持ちがいいし、私の内臓に自分でもうっとりする時が来るなんていい意味で想定外だった。
 
「痛かった」「苦しかった」「できればやりたくない」胃カメラについて調べてみるとネガティブなキーワードが出てくる。でも、私が初めて体験したのは優しいガイドさんが付いている某テーマパークのジェットコースターのようだった。検査中の気持ちのアップダウンはもちろん胃カメラが始まる前の緊張感と終わった後の爽快感に私はどうやら病みつきになりそうだ。私と一緒にあなたも鼻から胃カメラにチャレンジしませんか?
 
 
 
 
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2025-05-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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