知らずのうちに忍び寄る「ダークパターン」あなたのお財布、大丈夫?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:としあん(ライティング・ゼミ3月コース)
八百屋がりんごを仕入れすぎて困っていた。
そこで、店先にこんな貼り紙を出したそうだ。
「お一人様3個まで」
すると、どうだろう。あっという間に売り切れたという。
この話を聞いて「さすが、うまいやり方だ」と感心する人も多いだろう。
……が、私はどうにもモヤモヤしてしまった。
だって、私たちはこういう“限定”に、毎日のように踊らされているではないか。
「数量限定」のスイーツ。
「残りあと3点」のネット通販。
「タイムセール、あと30分!」
気がつけば、必要だったかどうかも忘れて、ポチッ。
なぜ、こんなにも弱いのか。
それは、人間の脳に「みんなが欲しがるものは価値がある」と刷り込まれているから。
行列のできるラーメン屋に並んでしまうのも、売り切れ寸前のパンを奪うように買ってしまうのも、同じ心理。
マーケティングの世界では、これを「希少性の原理」と呼んでいる。
けれど、よく考えてほしい。
八百屋のりんごは、貼り紙の前後で何か変わっただろうか?
甘さが増した? 栄養価が上がった? いやいや、同じりんごだ。
変わったのは私たちの気持ちだけ。
……これってちょっとおかしくないか?
しかも、この「心のツボ」を悪用する例はあとを絶たない。
いまや 「ダークパターン」という名前までついている。
たとえば「残りあと2点!」
本当に在庫が少ないのか、それとも煽っているだけなのか。
あるいは「無料体験登録」が終わった途端、有料プランに自動移行していた──
これは「潜伏コスト」と呼ばれる手口だ。
極めつけは、「解約したいのにボタンが見つからない」「電話でしか受け付けない」といったもの。
意図的に 「脱出しにくい構造」が仕組まれている。
アパレルショップでも、こういう手法はよく使われている。
入り口でまず安い特売品を見せて、お得な気分にさせてから高額商品へ誘導。
「定価1万円が7千円!」と書いてあれば、つい飛びつきたくなる。
SNSでよく見る「みんなが使ってる」っていう広告も、本当にそうなのかは怪しい。
もちろん、全部が悪だとは言わない。
お店も生き残るために工夫をしている。
私たちも納得して買う場面はある。
でも──。
ときどきは立ち止まってみてもいいんじゃないか。
「本当に欲しいのか?」
「この気持ちは、誰かに仕掛けられたものじゃないのか?」
そもそも、こうした仕掛けは、モノそのものの価値で勝負しているわけじゃない。
「欲しいと思わせる状況」を作り出しているだけだ。
気がつけば、私たちの心はその流れにすっかり乗せられてしまっている。
自分の意志で選んでいるつもりでも、実は見えない力が背中を押している。
その結果、本当はもっと大切なことに使いたかったお金や時間が、するりと横取りされてしまうこともある。
それって、ちょっともったいない。
人生のハンドルは、できるだけ自分の手で握っていたいものだ。
八百屋の話に戻ろう。
「お一人様3個まで」 の裏には、別の選択肢もあったはずだ。
たとえば、正直にこう言ってもよかったのではないだろうか。
「りんごを仕入れすぎちゃって。よかったら、少し多めに買ってくれませんか?今日はちょっと安くしますから」
きっと、それでも売れただろうし、むしろ 「じゃあ協力するよ」 という温かい関係が生まれたかもしれない。
実際、コロナ禍の飲食店が「助けてください」と素直にSNSで発信したことで、多くの人が応援に駆けつけた例もある。
困ったときこそ、正直な言葉のほうが人を動かす。
海外では、この「ダークパターン」に規制の網がかかりはじめている。
アメリカでは通販サイトが解約しづらかったとして巨額の罰金が科された。
ヨーロッパでも、個人情報の扱いに絡んだ「悪質な誘導」が次々と摘発されている。
でも、日本はまだ甘い。
だからこそ、私たちが賢くなるしかない。
難しいことじゃない。
買う前に、ほんの一呼吸おくだけ。
「この『限定』『緊急』は本物か?」
「ほかの選択肢はないのか?」
ほんの少しの意識で、無駄な買い物はぐっと減る。
無料体験には必ず「自動更新」の有無を確認。
解約方法は事前にチェック。
でも、もっと大事なのはここだと思う。
売る側も、買う側も、お互いを思いやる心。
商売は利益のためのものだが、もともとは 人と人との関係から始まったはずだ。
騙し騙される関係ではなく、「困ったときはお互い様」というやりとり。
八百屋のおじさんが、ちょっと照れくさそうに言う。
「今日は仕入れすぎちゃってさ」
お客さんが笑って答える。
「それなら、今日は多めに買っていくよ」
そんなやりとりのほうが、ずっと豊かだと思う。
テクニックはテクニック。
でも、最後に残るのは、やっぱり「信頼」だ。
私たちにできるのは、小さなことかもしれない。
それでも、一人ひとりの意識が変われば、世の中だって少しずつ変わっていく。
買うときも、売るときも、
その一瞬に、「相手を思いやる気持ち」を忘れない。
そんな社会のほうが、ずっと気持ちいい。
たとえ、りんごをちょっと多めに買ったとしても、
ジャムにしてもいいし、パイにしてもいい。
最後は、りんごとはちみつのオリジナルカレーを作って、あの懐かしいCMソングを口ずさめば──
なんだか、ちょっとたのしいじゃないか。
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00