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あなたは医師に「手遅れ」と言われたことがあるか? そんな経験をしている僕がつたえたい手遅れになる前にやること


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記事:きよっち(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
手遅れなんだよ……
 
お医者様に「手遅れ」と言われたことがあるだろうか。
たしか2002年のお正月。1月1日の元日。
僕は医師に「手遅れだ」と言われた。
 
年齢にして21歳。
「手遅れ」という言葉を発する医師を前にして出た言葉は
「ああ…… そうなんですねぇ……」
だけだった。
 
 
大学生の頃。
一人暮らしをしていたのだが、
2001年の12月29日くらいから身体が痛くなり高熱が出ていた。
 
若い頃の話だ。熱くらいどうってことない! 
熱い風呂にでも入れば治るだろう。
食べれば治るだろう。
友達でも呼んでアルコールでも飲んでおけば治るだろう。
そんな程度に考えていた。
 
身体が痛いなぁというタイミングでは
 
「そうだ。この前酒を飲みすぎたせいだ!」
とか
「そうだ。この前バイトしすぎたせいだ!」
とか思っていた。
高熱が出はじめた頃には
「単なる風邪だ」
とか思っていた。
 
 
年末カウントダウンに向けて世の中はヒートアップしていく。
テレビで流れるボルテージも高まっていく。
 
それに同調するように、高まっていく熱と動悸……
「あぁ…… これが恋だったら……」
なんていうふうに考える余裕はない。
 
むしろ
「あぁ…… 神様仏様…… わたしの2000年は悪いことをしました。来年はいいことしますから、どうか助けてください」
なんてことをブツブツ言っていた記憶がある。
 
 
車を持つことなどできない貧乏学生。どこへ行くにも原付だ。
こんなふらふらで原付など乗れるわけもない。
 
一人暮らし学生の年末年始。下宿仲間の友人たちは実家に帰っていっている。
誰も頼ることができない。
食事を買いに行くこともできなければ、薬を買いに行くこともできない。
 
スーパーは原付で3分の距離。
この体調では、地獄のような行程になることは目に見えている。
 
ひたすらに、自宅にある食料と水道水で
紅白歌合戦のボルテージとともに上がっていく僕の熱とともに2001年は幕を閉じた。
そんなシンクロはいらないのだけれども……
 
年越しの夜は、気を失うように眠った。
いつのタイミングで寝落ちしたのかもあまりわからない。
 
気がついたら1月1日だった。
 
熱が下がらない……
食料も底をつきそうだ……
まるで戦場だった……
 
ついに、このサバイバルに負けを認める時が来た。
 
119
 
あの番号を携帯電話でコールしたのだ。
 
 
救急隊員の人にうわ言のように
「ありがとう…… ありがとう……」
と言っていたのを覚えている。
まさに投降兵だ。
 
 
病院につくと。
さっそく医師と看護婦(当時は看護婦と呼ばれていた。現在は看護師)が色々調べる。
熱はなんと40度を超えていた。
 
貧乏で遊び呆けている学生なのだ。家に体温計すらなかった。
ちゃんと熱を測っていなかった。
今ならわかる。
 
「とっとと病院へ行け! 俺」
採血されたり、鼻に何か突っ込まれたり、いろいろされた。
 
 
その結果、医師に言われた言葉は
「君ねぇ…… 手遅れなんだよ!」
だったのだ。
 
「あぁ…… そうなんだぁ…… ぼく死ぬんだぁ……」
と思って
「ああ…… そうなんですねぇ……」
という言葉だけが出た。
 
熱でボーッとしていたし、サバイバルに負けた投降兵に何かを考える余地はなかった。
 
「あの人にお礼を言わなきゃなぁ……」
「大好きなあの人に、結婚してくださいって言っておけばよかったなぁ……」
「もう一回フォアグラ食べたかったなぁ……」
 
なんてことを考えて、僕は終わりを受け入れようとしていた。
走馬灯とはこのことだ。
多分数秒しか経っていないが色々なことが駆け巡っている中で
医師が続けた
 
「あのね。君。手遅れのインフルエンザなんだよ」
 
と言った。
 
「そうかぁ…… インフルエンザで終わるんだぁ……」
 
と思っていたら。
 
「発熱から、3日以内にしかインフルエンザ薬は効かないから、解熱剤出しておくので自己免疫でなんとか治して」
 
と続けられた。
 
「え? 治るんですか?」
 
と僕が言うと
 
「だって、インフルエンザだよ?」
 
という医師。
 
状況を飲み込めずにいたが、数秒後、医師が説明をしてくれた。
 
現在では、インフルエンザを直接治す薬というのが当たり前に多種存在しているが、
2002年当時は、そういった薬が日本で承認されて数ヶ月しか経っていなかった。
しかも、その薬は発熱から3日以内に飲まないと効かないとされていたのだった。
そして、何より、当時知らなかったのだが、
インフルエンザを直接的に治す方法というのは1990年代まで存在せず、
自分の体力で治すための治療しかなかったのだった。
 
つまり「手遅れ」とは、薬が効く期間を過ぎており、自分の体力で治すしかない期間になってしまっていたということだった。
 
 
なんだよ驚かせやがって……
 
 
しかし、やはり発熱したら、とにかく速く医師に診てもらう。これに越したことがないのは事実だろう。
あのウイルスが流行ったことで、発熱して病院へ行くことを躊躇する人がいるとも聞く。
だが、どんな病気であっても、あのときの僕のように「手遅れ」となってしまう可能性は否定できない。
 
せっかく医療が充実している日本にいるのだ。
病気なら、堂々と、そして、迅速に病院へ行こうじゃないか
 
 
 
 
***

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2025-06-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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