メディアグランプリ

わからなかった。でも、それでよかった。──『ゲーテはすべてを言った』インフィニティ∞リーディング体験記


*この記事は、「ハイパフォーマンス・ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2025年6月開講】目標達成するための文章講座「ハイパフォーマンス・ライティング」〜たとえどんなに上手くとも、効果がなければ意味がない。〜

記事:前田 さやか(ハイパフォーマンス・ライティング6月コース)
 
 
「まったく理解できなかった」
読み終えた直後、私の頭に浮かんだのは、この一言だった。
読書会のために頑張って読んだのに……。
心の中はまるで霧に包まれた山頂のようで、何ひとつ見えなかった。
山を登り切ったはずなのに、視界は白く、風が吹くだけ。
晴れ間はなかった。
 
でも、そんな私のもやもやは、インフィニティ∞リーディングに参加したことで、少しずつ晴れていった。
 
 

1. インフィニティ∞リーディングとは?


インフィニティ∞リーディングとは、天狼院書店で毎週水曜日に開かれている読書会のことだ。
渋谷で現地開催されている。
私は名古屋在住なので、オンラインでの参加だ。
 
インフィニティ∞リーディングについてはこちら
 
実は少し変わった読書会。
特徴はなんといっても「AIを駆使する」こと。
最初はAIを読書で使うなんて、あり得ないと思った。でも何回か受けているうちに、AIの膨大な情報量にいつも圧倒されている。
読書会では、三浦店主自らがChatGPTやGeminiなどを使っていく。作品の深読みや背景調査、作者の人物像まで探っていく。これまでの読書会とは一線を画す、“未来型読書会”だ。
 
 

2. 今回の課題図書は何? どんな本?


今回のテーマは、2024年下半期の芥川賞受賞作『ゲーテはすべてを言った』である。
 

全国・通信【6/25(水)19:00~】人生を変える、究極の読書体験「インフィニティ∞リーディング/INFINITY ∞ READING」TYPE S 6月課題本『ゲーテはすべてを言った』第172回芥川賞受賞作!


 
実は内容も文体も独特すぎで、読みながら何度も挫けそうになった。
正直私は、芥川賞作品を進んで読むタイプではない。
にもかかわらず今回この作品を手に取ったのは、天狼院書店の一言からだった。
 

画像
↑天狼院書店 名古屋店

 
受けていた講座の休憩中の一コマだ。
若いイケメンのスタッフが声をかけてくれた。
「今度のインフィニティ∞リーディングで芥川賞作品を扱うんです」
「へえ。芥川賞作品って読んだことないです」
「いいチャンスじゃないですか!」
「確かにそうですね。日にちあるから、本買っていこうかな」
「はい、在庫ございますよ」
 

画像
天狼院書店で買った本

 
そんな軽い気持ちで本を手に取った私だったけれど、読んでみて後悔しそうになった。
 
何が書いてあるのかさっぱりわからない。
難しい。
なんとなく、すごいことを言ってるっぽいけど、全然頭に入ってこない。
自分の国語力を責めたくなった。
「なんで私はこういう抽象的な表現を読み解けないんだろう」
「どうしたらみんなのように理解できるんだろう」
私は自信を失いかけていた。
 
 

3. インフィニティ∞リーディングにいざ参加!


けれど、読書会当日。
三浦店主の最初の一言に私は救われた。
「この作品、難解ですね! いやあ、恐ろしい作家が出てきました」
何度も繰り返すように言っていた。
「いやあ、これほんとわからなかった」
「この人、賢すぎるわ」
読書家の代表みたいな三浦さんが「わからなかった」と言ってくれたことで、私はすっと肩の力が抜けた。
「あ、私だけじゃなかったんだ」と。
これは、偏差値の高い友達が試験で「今日のやばかったあ」と漏らしているのを聞いたときの、あの安堵感に似ていた。
 
 

4. AIが読み解く読書の世界


そしてここからが、インフィニティ∞リーディングの本領発揮。
まずは、作者の背景調査。
なんと、作者はまだ23歳の大学院生。
驚いたことに、父親はバプテスト教会の牧師で、本人は福島出身。震災を経験した世代だった。
AIによれば、作者は「震災以降、大人や政治家の言葉が信じられなくなり、“言葉”そのものを疑い、考えるようになった」という。言葉に対する鋭さや疑念のルーツが、そこにあったのだ。
こういう背景を知ってから読むと、また作品の印象が変わる。
 
それだけではない。
店主が読書中に「なんでこの場面、こんなに気になるんだろう」と違和感を覚えていた一節。AIが解析した結果、それは“作者が仕掛けた罠”だったことが明らかになった。
「僕、完全にハメられてましたね。いい読者だったなあ、僕は」と笑う店主。
私はその仕掛けにすら気づけなかったが、読書会の中でその構造が“見える化”されたことで、まるでパズルのピースがはまるような快感を覚えた。
 
 

5. あらゆる謎をAIが解決してくれる


それから、話題は奇妙すぎる登場人物の名前たちに移っていった。
読んでいると不快にすらなるネーミング。正直、意味があるとは思っていなかった。
でもAIは教えてくれた。
「これはゲーテの当て字。こちらの名前は中国語読みから取った名前」
なるほど、ただのふざけた名前ではなく、全てに理由があったのだ。
知ることで不快感が納得に変わった。これはAIがいなければたどり着けなかった理解だった。
 
 

6. インフィニティ∞リーディングの醍醐味とは


インフィニティ∞リーディングは、ただ作品を読み解くだけじゃない。
作者の人生を掘り、言葉の裏側を照らし、AIという“第4の読者”が参加する。わからないからこそ、面白い。読みきれなかった本が、読書会の中で少しずつ姿を現していく。
 
自分ひとりでは絶対にたどり着けなかった理解に、AIと人とが協力することでたどり着ける。そんな不思議な感覚だった。
 
私は思っている。
インフィニティ∞リーディングは日本一優しく寄り添ってくれる読書会。
読書が苦手な人ほど、参加したら読書の世界に引き込まれるかも。
実際私がその1人だ。
 
まだ参加したことがない人がいたら、ぜひ一度、覗いてみてほしい。
「わからない」が、「知りたい」に変わる瞬間が、きっとある。
 
インフィニティ∞リーディングについてはこちら
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の目標達成するための文章講座「ハイパフォーマンス・ライティング」を受講した方が書いたものです。「ハイパフォーマンス・ライティング」では、執筆いただいた記事をフィードバックしてもらえます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店/天狼院書店の公式noteのマガジン「READING LIFE/天狼院読書クラブマガジン」にアップされます。

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2025-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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