メディアグランプリ

朝の脳内会議で人生は好転する!


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記事:豊田高広(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)

 

午後遅く、山道をくだっていた私は、分かれ道に出くわした。疲れ切った足の裏は、しびれるような痛みで一刻も早く宿にたどり着きたいと訴えている。右の道は舗装されており、Googleマップでも確実に宿に着けるが、曲がりくねっていて時間がかかりそうだ。左の道は、昔の巡礼道で未舗装。紙の地図では近道に見えるが、Googleマップは使えず、方向音痴の私は迷う可能性がある。

 

その瞬間、私の脳内で複数のサブキャラクターが動き出した。最初に口を開いたのはターチャン。慎重派で、迷うことを恐れているが、同時にこの足の痛みからは逃れたい。次に出てきたのはドルフィン。状況を面白がり、「せっかくだから巡礼道を歩こう」とワクワクしている。そこにケーカクが現れ、冷静に時間やリスクを分析する。「左右どちらを選んでもスケジュール的には大差なし。迷っても大ごとにはならない」という。最後に登場したのはトヨサン。全員の意見を聞き、左の道を選ぶことを決断。ただし「途中に目印を残し、迷ったら戻る」という条件付きだ。結果、私は左の道を選び、無事に宿にたどり着いた。このときの脳内会議の感覚こそが、今の私の毎朝の習慣につながっている。

 

脳内会議を私の日常に取り込むうえで決定的なヒントを与えてくれたのが、ジル・ボルト・テイラー著『Whole Brain(ホール・ブレイン)』(NHK出版)だ。著者は米国の脳神経解剖学者で、脳内出血によって左脳機能を失い、8年かけて回復した経験を持つ。彼女は脳内に「考える左脳」「感じる左脳」「感じる右脳」「考える右脳」という4人のサブキャラクターが住んでいると説明する。誰の脳にも、この4人が住んでいるというのだ。本書では、それぞれのサブキャラクターに名前を付け、日々招集して「脳内作戦会議」を開くことを勧めている。これにより、特定の感情や偏った視点に引きずられるのを防ぎ、全方位的な意思決定が可能になる。私はこれを自分の中に眠っている様々な資質を呼び覚ます方法と捉えた。そして、毎朝の脳内会議を習慣としていった。

 

脳内会議を始めるにあたっては、まず自分の4人のサブキャラクターを見つける必要がある。私の場合は、俯瞰的で創造的、まとめ役のトヨサン(考える右脳)、直感的で遊び心と好奇心の塊であるドルフィン(感じる右脳)、分析的で計画的、現実的なケイカク(考える左脳)、そして慎重派で安全志向、感情の守護者であるターチャン(感じる左脳)だ。名前は自分にしっくりくるものでよく、性格や口調も自由に設定すれば、会議がぐっと楽しくなる。

 

朝起きたら、軽く深呼吸をして4人のキャラを思い浮かべ、「おはよう、今日はどうする?」と声をかける。すると自然に会話が始まる。最初はぎこちなくても、続けるうちにキャラごとの声や表情がはっきりしてくる。会議は5〜10分で十分。テーマは「今日の予定」でも「昨日の振り返り」でも「気がかりなこと」でもいい。大事なのは全員の意見を平等に聴くことだ。

 

私は脳内会議の内容をそのままパソコンで書き起こしている。スマートフォンでもいい。いわゆるジャーナリングだが、私はモーニングページと呼んでいる。書くことで各キャラの声が明確になり、後から読み返して気づきも得られる。会議を可視化することで、思考や感情のパターンにも気づけるようになる。会議のヒントとして、複数のカードをランダムに引くことが多い。一日の運勢を占うといった感じだ。

 

最近のある朝の記録を紹介しよう。

 

【今日のモーニングページ】

ト(トヨサン)=考える右脳

ド(ドルフィン)=感じる右脳

ケ(ケイカク)=考える左脳

タ(ターチャン)=感じる左脳

 

ト:「おはよう、昨日は仕事で夜更かししたから少し眠いね」

タ:「でも、いろいろ先の見通しが立ってきて安心したよ」

ケ:「計画的には少し厳しいけど、なんとか切り抜けられる範囲だ」

ド:「よし、まだまだ俺の出番はあるな」

カードを引くと「がしがし」という言葉が出た。

ド:「昨日のライティング・ゼミの課題文の執筆は、まさに“がしがし”だったな」

ケ:「おかげで計画が狂ったけど、許容範囲としよう」

タ:「ドルフィンの“がしがし”は時々、圧が強くて怖いよ」

ト:「でも、価値あるものを生み出すには“がしがし”やることも必要かもね」

さらに別のカードには「雑さのたしなみ」と出た。

ド:「“がしがし”は“雑”にも通じるな」

ケ:「どの程度の粗雑さや混じり気を許容するか、度合いや目安をくれると助かるね」

タ:「粒あんや雑穀が好きだから、雑はけっこう許せるかな」

ト:「まさか粒あんが出てくるとはね!今日は精度や純度より、速度を大事にしようか」

脳内会議は単なる自己対話にとどまらない。迷いや葛藤の整理、創作や企画のブレイン・ストーミング、感情のクールダウン、習慣化や目標達成の進捗確認など、日々の小さな選択から人生の大きな決断まで、あらゆる場面で役立つ。しかも自分の中の多様な声を聴くことは、自分自身を丸ごと受け入れる練習にもなる。

 

毎朝、たった数分の脳内会議が、一日の質を変える。そして、日々の積み重ねが人生の流れを変える。私たちは、いつでも自分の中の「会議室」に入れる。そこで4人のサブキャラクターと共に対話し、笑い、時に励まされながら進む。分かれ道に立つのは、山道だけではない。日常のあらゆる瞬間が分岐点だ。脳内会議は、その場で最良の道を選び取り、人生という旅を好転させるための最高のパートナーになる。今日も私は、4人を招集する。「さあ、どの道を行こうか?」

《終わり》

 

 

***

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2025-08-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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