人生に隠し土管を見つけたら、楽になった
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記事:鈴木凪(ライティング・ゼミ特講)
私は親に対して複雑な思いがある。
大嫌いとまではいかないけれど、大好きと言い切れるほどではない。
子どもの頃の写真もたくさんあるし、動画も数え切れないほど撮ってもらった。色んな所に連れて行ってもらったし、誕生日には可愛いケーキを買ってもらったし、欲しいと言ったおもちゃや本は大抵買ってもらった。
でも、私はそれと同じ質の愛を返せている自信がない。同じ愛を返すことが出来ない自分がまるで人間じゃないみたいに思える。
中学生の時も高校生の時も、1人でも友達とでも、外食に行く際は親に連絡をして許可を得なければならなかった。部活終わりにラーメンを食べに行ったり、マクドナルドでハンバーガーを食べながらテスト勉強したりしている友達が羨ましかった。
外へ遊びに行く際は、一緒に行く友達の名前と電話番号を書かなければいけなかった。
大学生になって初めて友達の家に泊まりに行った時、親には泊まることを事前に知らせていたのに、私が夜にメール返信をしなかったからと言って、親がその友達の実家を探し当て、早朝6時に押しかけて騒ぎになったことがある。
親が大好きだ、愛していると言ってしまうと、抑圧されていた過去の自分を肯定してしまうような気持ちになる。息苦しかった過去の私たちが救われないような気持ちになる。
大学生の時の友達には、とても申し訳ないことをしたと思う。先日久しぶりに会ったら、その時の話を持ち出して笑い話にしてくれて、ありがたい気持ちになった。
大学生の時に留学に行くことにした。
一時的にでも親から距離を取ることで、きっと親を愛する自分になれるのではないかと思ったから。
親には、真剣に英語を勉強するために、連絡を控えたいと伝えた。
海外で、半年以上1人で生活をし、それまでの人生で1番気楽で安心感があった。誰も私を知らない環境で何の気兼ねもせず過ごせた。やっと空気の味がした。
帰国する夢を見て飛び起きる朝もあったけれど、夢は夢だったし、起きて肺の奥まで酸素を吸った。
でも、海外では家族信仰が強く、家族の話をされることもあった。家族を大切にするよう言われることもあった。それがすごく苦しかったし、そんな話を持ち出されるたび息が吸いづらくなった。
心から家族を愛していると言い切れない自分を、私は肯定できなかった。
義務感で人は辛くなる。
親を愛する義務が私に重くのしかかっていた。
私のこれまでの人生は、スーパーマリオのゲームで言うと平常ルート。隠し扉や隠しボタン、土管なんて一切見つけられなかった。
社会人になり、私は一人暮らしを強制する会社を見つけた。
親には強く言ってその会社へ入った。かなり揉めたが一人暮らしをすることができた。
その生活もとても楽しくて心地よかった。落ち着いてご飯を食べ、友達を家に呼んだ。
その間矛先は3個下の妹に移ったらしく、妹は恋人の家から帰って来なくなった。そして、妹はそのまま家を出、1人暮らしをするようになった。1人暮らしの資金は親持ちで。
私はその話を聞いて拍子抜けしてしまった。
1人暮らしがしたいのなら、お伺いを立てずに最初からすれば良かったのだ。
私の人生なのに、なぜ私自身以外の許可を得る必要があったのか。
私はスーパーマリオを正面突破するため、何回もリトライした。罠やハテナブロックの位置を覚え、アイテムの準備もしていたのに、そんな裏ルートがあったなんて。
考えすぎだったのかもしれない。
右にも左にも、斜め前にだって、隠し土管はあったのだ。
そう思うようになってから、親との関係が以前より良好になった。嫌なことは嫌と言って、それでも良いのだと思えたから。
親に対してNOと言える自分を、しっかり肯定できるようになったから。
親として大切にはするけれど、嫌なものは嫌。私が侵入して欲しくない所にまで立ち入って来ないで欲しい。そう考える私は、決して駄目な娘などではなかった。
人間、何の義務もないと思う。
許せないのなら許さなくて良いし、愛することができないのなら無理に愛さなくても良い。楽しくないのに楽しくなろうとしなくて良いし、悲しくないのに悲しまなくて良い。すべてはそのままの状態で良かったのだ。
雇用契約を結んでいるのに働かないとか、約束したのに守らないとか、そう言ったモラル的な話ではなく、精神的な部分において、人に義務なんてものは存在しないと私は思う。
私のこれまでの人生は、スーパーマリオの平常ルートだった。
けれどこれからは、私が思えば土管に入ってワープできるし、開けようと思えばすぐ隣に隠し扉は現れる。
人生は楽にワープできるし、もっと簡単に隠し土管は見つけられるのだ。
《終わり》
***
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