何歳(いくつ)からでも ‘ラス婚‘ 最後の恋が、愛に変わるとき……。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:藤原 宏輝(ライティング・ゼミ5月コース)
「今回のご新郎様は、とくにご対応に気を付けてください」
と私は、ホテルのスタッフに伝えた。
これまで以上に、なぜ? 細心の注意が必要なのか?
それは、数年前のこと。
「お父様は、こちらの扉の前で少しお待ちください」
と、これから結婚式という時。
あろう事か! ホテルスタッフに、ご新郎様ご本人が花嫁さんのお父様と間違えられた事があった。
弊社のウエディングプランナーは、お申込みから挙式当日まで、担当でなくても何度もお顔をおみかけするし、もちろん社内の情報共有も徹底している。
しかし、挙式当日にのみ担当するホテルの方々には、ご新郎様なのか? 花嫁のお父様なのか?
シンプルなタキシードをお召しだと、確かに見分けはつかない? かもしれない……。
ここ数年何年、ご新郎・ご新婦様の年齢がグンと上がり、一気に‘晩婚化’ということばも流行っていた。極端な話、ご新郎様と花嫁のお父様の年齢が近い。ということもある。
とはいえ、
これから結婚式、というご新郎様に‘お父様’はかわいそうだ。
本日のご新郎・ご新婦様は、昨年末に‘結婚相談所’で知り合ったという、63歳の男性と66歳の女性。
「人生の最後、もう一度幸せになりたい!」
とお見合いを重ねてきた結果、今回はお相手の写真とプロフィールを見た瞬間。
「この人だ!」とお2人ともが、ほぼ同時に感じたらしい。
プロフィールだけで「ピンッ! ときたんです」と嬉しそうな、幸せそうなご様子。
慎重派な私には、全然考えられないが……。
それはさておき、お見合いの当日。
男性のこれまでの結婚相談所所属歴は1年半ほどで、真剣交際に発展したのはほんの3名ほどらしかった。
しかし、交際スタートからだいたい2回目、または3回目のデートでお相手からのお断わりが続いていたようで、諦めかけた頃。今回の運命の女性と出会った。
女性の結婚相談所歴は2か月。今回のお見合いは8人目で、これまで全てお断わりしてきたらしく、毎週末のお見合いに少し疲れ初めた頃だった。
最近は写真の技術が進み、プロフィール写真とご本人があまりに違って見えて、当日お見合い相手を見つけられなかった。という、嘘のような本当の話もある。
しかしお2人は、一目見た瞬間! から、恋に落ちた。
と、結婚式の申し込みの時に嬉しそうに話してくれた。
男性は、離婚歴が2回。真面目そのもの。
子どもはすでに、30歳を過ぎて遠く離れて暮らし。
仕事はすでに定年退職しており自由な時間を手に入れた、が心は満たされていなかった。
女性は、バツ1。
子どもは1人、昨年結婚して孫も生まれた。明るくて優しくて、おおらか。
シングルマザーで頑張ってきたから、ひとりが少しだけ寂しいことに気づいた。
お2人とも、また誰かと恋に落ちたり、愛をはぐくんだり、再びそんな人生を歩むなんて、夢のまた夢と思っていた。
「でも、もう一度幸せになりたい!」
そんなお2人が「今回は、どうかなあ」と申し込んだ今回のお見合い。
これが人生の大きな転機になるとは……。まさか! の想像していなかった展開だ。
しかし、それは‘一瞬の出会いを大切にし、見逃さなかった’からこそ、掴んだ幸せ。
私は結婚式に向けてのお打ち合わせを、これまで担当させて頂いてきた。
「ご姉弟(きょうだい)ですか?」
とつい、聞きたくなるくらい、しぐさや言葉遣い、笑いのツボ、行動も雰囲気が似ている。
「きっと、やっと! お2人は巡り合えたんだなあ」と感じた。
昨年末のとても寒い日。
お見合いの場所は、市内のホテルのロビーラウンジ。ここで、静かに始まった。
清潔な白いシャツに紺のジャケット、おしゃれなマフラーをした男性。
淡い水色のニットワンピースと品のある真珠の華奢なネックレスの女性。
「写真より、ずっと素敵ですね」
「まぁ、あなたも。優しそうな方で、安心しました」
お2人は、初対面とは思えないほど、会話がごく自然に始まった。趣味の話、好きな食べ物、昔の旅の思い出、そして“これからの人生”のこと。
約束の1時間は、あっという間に過ぎ、帰り際に男性から、
「また、お会いできますか?」と恐る恐る聞いた。
「はい。今度は、もう少しゆっくり」と優しくゆっくりと女性が答えた。
それから数日後、お2人はゆっくりと時間を過ごした。
「こんなに穏やかな気持ちになれたのは、久しぶりです」
と女性が、ぽつりとつぶやいた。
「僕も、です。もう、誰かを探すのは、これで最後にしようと思っています」
と男性が、落ち着きのある声で話した。
その夜お2人は、初めて手をつないだ。
打ち合わせの時には「思い出すだけで、恥ずかしい」とご新婦様は、頬を赤らめうつむいていた。
夜風がそっと背中を押したように、2人の距離は自然と近づいた。
「もしよければ、結婚を前提にお付き合いしませんか?」
と勇気をふりしぼって、彼が伝えると
「いえ、もう結婚でいいと思います。今さら遠回りしなくてもいいでしょう?」
と彼女が答えた。
予想外の答えにご新郎様は、かなり驚き! 一瞬、何が起こった? と動揺した。とのことだった。
私はそんなエピソードをお2人から、お聞かせいただきながら温かい気持ちになり、
「たった2回のデート。でも、時間じゃないんだな。素敵な大人の恋愛だなあ」
と心の中で思わずつぶやいた。
エピソードは、こう続いた……。
お2人はお互いに、「経験を積んできたからこそ、“確信”があった。これは最後の恋。
だけど、始まりは穏やかで美しい。これが、ラスト! と直感で感じた。」と……。
ご新婦様は、お嬢様に「驚くかもしれないけど、お母さん再婚しようと思うの」
と話した。最初は予想通り、反対されたらしいが、お母様(ご新婦様)の表情は真剣だった。
「お母さん…いい顔してる。こんな笑顔、久しぶりに見た」
孫たちも「おばあちゃん、かわいい!」と無邪気に喜んだ。
一方、ご新郎様は息子さんに、静かに報告した。
「君の母さんとはいろいろあったけど、今後は穏やかな人と、静かな時間を生きたいんだ」
「…いいと思うよ。父さんがそう言えるなら、きっといい人なんだね」
そして、結婚式はお2人が初めて会ったホテルのチャペル。
ご新婦様は、オフホワイトのドレスに身を包み、なんとも美しかった。とても66歳には見えない。
ご新郎様は、シンプルな白シャツと黒いタキシード。
このお衣装と白髪がかなりまじった感じが、お父様に間違えられるのだ。
「せめて、今日の為に髪を染めたほうがよかったかな」
と照れくさそうにご新郎様。
ご家族と親しい数人の友人に囲まれ、とても温かく心からの祝福に包まれた。
「これからは、誰のためでもなく、私たちの時間を生きていきましょうね」とご新婦様。
「うん、一日一日を、大切にね」とご新郎様。
とても素敵な、人前式の‘誓いのことば’
たくさんの笑顔に見守られた、ふたりの門出。ここから新しい物語は、始まり未来へつづく。
“ラス婚“ 最後の恋が、愛に変わるとき。
何歳(いくつ)からでも始められる婚活に、遅すぎることなんてないのだ。
***
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