「わかる」の奥にあるもの
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:嘉藤恵(ライティング・ゼミ7月コース)
「わかる」って言葉、みなさんはどんなふうに受け止めていますか?
私はこれまで、ずいぶんとこの言葉に振り回されてきました。特に女性が言う「わかる」。あれって本当に「理解した」という意味なのか、実はまったく別の合図なのか、よくわからないことが多いんです。
ある日、友人とカフェで話していたときのこと。私は仕事の愚痴をぶちまけていました。
「もう、あの上司ほんと無理!」と。
すると彼女は、軽くうなずいて「わかる〜」と一言。
私は「お、完全に共感してもらえたな」と思いました。理解してくれたんだ、と。
ところが数日後、同じ話題をまた振ってみると、「え?そんなこと話したっけ?」と全く覚えていない様子。
あのときの「わかる〜」は何だったんでしょう?どうやら「今ちゃんと聞いてるよ」という会話のつなぎに過ぎなかったんです。
似たようなことは他にもありました。別の女性と話していて、「わかる」と言われたので、「どこまでわかった?」と踏み込んで聞いてみたことがあります。
すると急に表情が曇ってしまって、空気がピリッと変わったんです。
このとき学びました。――「わかる」はあえて曖昧にしておいたほうが、コミュニケーションが円滑に進むことがあるんだな、と。
思い返してみると、「わかる」って実に便利な言葉なんですよね。
議論が熱くなってきたとき、相手が「わかるわかる」と言い始めたら、それは「もう次の話題に行こうよ」という合図かもしれません。
一見、同意しているように聞こえて、実は話を終わらせたいサインなんです。そこで気づかずに延々と語り続けると、「もういいから!」と怒らせてしまうこともある。
これ、男性でもよくありますよね。
「わかった」と言って議論を打ち切ろうとする。でもそれは本当に納得したわけじゃなく、「これ以上話しても仕方ない」と区切りをつけているだけ。ある意味、自分の考えは曲げないというサインでもある。
そんな相手に「本当にわかったの?」と追及すると、まるで攻撃されたように受け取られてしまう。私自身、何度か痛い思いをしました。
厄介なのは、「わかる」が必ずしも「同意」を意味しないこと。
その裏には「共感してるよ」という気持ちもあれば、「もう終わりにしよう」というメッセージもある。表情や声のトーンをよく見ないと、簡単に勘違いしてしまうんです。
たとえば、眉間にしわを寄せながら言う「わかる」は、「理解はできるけど納得はしていない」というニュアンス。
逆に笑顔でテンポよく返ってくる「わかる〜!」は、「今すごく共感してる!」というサイン。
同じ三文字なのに、状況や雰囲気によって意味ががらっと変わる。これが「わかる」の面白さであり、難しさでもあるんだと思います。
私も「わかる問題」で何度も失敗してきました。
「わかる」と言われて、本当に理解されたと思い込む。
でも後日同じ話をすると「え?そんな話した?」と返される。
そのたびに、「ああ、あの“わかる”はただの相槌だったんだな」と気づくんです。
ただ、最近はそれが必ずしも悪いことじゃないと思うようになりました。
会話って、必ずしも全部を正確に共有する必要はありませんよね。
むしろリズムを保つために、あえて曖昧な「わかる」が必要な場面もある。
会話の潤滑油としての「わかる」――これがあるから、お互いに気持ちよく話せるのかもしれません。
それでもやっぱり、私はつい「どこがわかったの?」って確認したくなってしまうんです。
でもそれをやると、大抵は空気が険しくなる。だから最近はあえて深掘りしないようにしています。
「わかる」という言葉を、「今はちゃんと聞いてくれているサイン」として受け止めるようにしているんです。
そうすると、お互いに穏やかに会話を楽しめるようになりました。
結局のところ、「わかる」の裏側には、その場の空気、相手との関係性、会話の目的…いろんな要素が詰まっているんですよね。
本当に理解しているときもあれば、ただ場をつなぐときもある。
その見分けをつけるには、言葉だけでなく、表情や声のトーン、間の取り方まで観察する必要があります。
最近の私は、相手から「わかる」と言われると、ちょっと探偵ごっこをしています。
「これは本気の“わかる”なのか?それとも会話の油差しなのか?」と考えるんです。
そうすると、会話が一段と面白くなるんですよね。
そして、たまに本当に深く理解してくれている「わかる」に出会うことがあります。
そのときだけは、「ああ、ちゃんと通じたんだな」と心から嬉しくなるんです。
もしかすると、私たちが「わかる」という言葉に振り回されるのは、それがただ便利なだけの言葉じゃなく、人と人とをつなぐ小さな魔法のような力を持っているからなのかもしれません。
だからこそ、この三文字の裏側を探る旅は、まだまだ続きそうです。
あなたはどう思いますか?
相手の「わかる」に、どんな意味を感じていますか?
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00