私は一文で人生を変えることができるのか?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:茶谷香音(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
「茨の道が好きなの?」
学生時代、何度母にそう言われたか分からない。
ごく普通の人間である私は、たしかに、ちょっと変わった学歴を持っているかもしれない。
私は小学生の時、多くの同級生が地元の中学に進学する中、中学受験をして中高一貫の私立中学に入学した。
そして3年後、ほとんどの同級生がそのまま付属の高校に進学する中、私は高校受験をして、別の都立高校へ進学した。
そんな反抗期の子どもみたいな学歴をもつ私は、別に勉強が好きなわけでも、受験が好きなわけでもない。ただ、こだわりが強いだけだ。
10代の貴重な数年間を過ごす場所を選ぶのに、妥協したくない。「図書館の綺麗な学校に行きたい」とか、「今の生活に変化をもたらしたい」とか、そうした小さなこだわりを追い求めた結果、気づいたら茨の道を進んでいたというだけだ。そんな私のこだわりを、家族が応援し続けてくれたことは、本当に恵まれていたと思う。
私が通っていた都立高校は、生徒の多くが国公立大学への進学を目指していた。私も、国公立大学を受験するつもりで、その高校に入学した。
ところが、高校2年生になったある日、私は母にこう言った。
「行きたい私立大学があるんだけど。総合型選抜で受験してみようかな」
「ホント、茨の道が好きだよね。まあ、好きなようにやりなさい」
総合型選抜とは、旧AO入試のことで、志望理由書の提出や小論文、面接などで選抜される入試方式だ。
高校の先生に、私は一般入試と総合型選抜の両方にチャレンジすると伝えた。すると、両立は大変だと止められた。
私が通っていた都立高校では、総合型選抜で大学を受験する生徒はほとんどいなかった。つまり、総合型選抜のための対策は、学校ではほとんどできない。もし、高校受験をせずに内部進学をして、私立の高校に通っていれば、総合型選抜の受験をする仲間はたくさんいた。
しかし、迷いも後悔もなかった。私は「茨の道」を進むことにした。総合型選抜と一般入試の両方にチャレンジすれば、憧れの大学を受験できるチャンスが増える。やらない手はない。
ただ、中・高の受験を経験した私も、総合型選抜の対策は本当に大変だった。
世間的には、推薦組は楽というイメージがあるが、私には全く楽ではなかった。志望理由書の執筆のためには、考えなければならないことがたくさんあった。一般入試のための勉強をしながら、小論文や面接の対策もしなければならない。
志望理由書には、自分が何を学びたいかを書く必要がある。
漠然と、心理学に興味があった。心理学部で何を学べるかを理解するために、心理学の本を20冊以上読んだ。
しかし、心理学について理解するだけでは不十分だ。
大学は研究機関であり、ただ受動的に学ぶだけの場ではない。心理学を学びたいと言うからには、心理学を学んで、自分はなにを「研究したいか」を明確にする必要があった。そして、それをなぜ自分が、なぜその大学で研究する必要があるのかを。
そこで、面白そうだと思った分野の、本や論文を読みあさった。苦手な英語も、海外の文献を読むために必死で勉強した。
世の中の現状や問題の把握も必要だ。ニュースも毎朝確認した。自分の意見や専門家の意見を、1冊のノートにまとめた。
インプットだけでは不十分だ。学んだ知識をもとに、自分はなにを研究したいかを常に考え続けた。正解はない。
これも違う、あれも違う、と毎日頭を抱えていた。ご飯を食べていても、休憩していても、思いついたことをメモするためのノートは片時も手放さなかった。
大変だった。受験への不安もあった。それでも、毎日が宝探しみたいで、充実していた。
そしてある日、ペンを持つ手が止まった。
ノートに向かって何度も頭を抱え、書いては消してを繰り返して、最後に残った一文。
「私は、幼少期に動物を育てた経験が、男性の養護性に与える影響を研究したい」
宝物を見つけたように、胸が高鳴った。
ああ、これだ。私はこれが書きたかったのだ。
たった一文。何気ない一文。
それでも、本気で「学びたい」と思いながら書いたこの一文。
心理学を学んだことのなかった私が、何冊もの本を読み、何度も自分と向き合い、自分なりにこの一文を書いた。その時の感動は、今でも忘れられない。大げさではない。ずっと不安を抱えていた自分の将来に、ワクワクする感覚を覚えたのだ。
この一文を元に、志望理由書を執筆し、当日の試験に臨んだ。
その結果、私は大学に合格できた。この一文で、人生が変わった。
しかし、それ以上に、この一文を書くために費やした時間と努力は、私の人生の財産となった。
そして私は今、憧れの大学で、心理学を勉強している。学びたいことが明確である分、大学での学びへの期待感やモチベーションは強かった。
そのおかげで、自主性が重んじられる大学での勉強を、今全力で楽しむことができている。
自分の頭で考えるということにも、たくさん挑戦できるようになった。自分の興味のあることを、本や論文で調べ、それを元に自分で思考する。
「自分の考えたことを、魅力的な文章にしたい」と思って参加した天狼院のライティングゼミも、間違いなく大学受験の経験がきっかけであった。
「茨の道」を進んできて、本当に良かったと思う。この選択でなければ、今の大学生活がこんなに楽しいことはなかっただろう。
私が「茨の道」を進んできたのは、それが本当は「薔薇の道」だと気づいていたからかもしれない。痛くても、平地を歩くよりもずっと楽しい。
一文で人生を変えることができる。
というよりは、人生を変える一文を書こうとする努力が、人生を変えるのだと思う。
大学生になった今。天狼院のライティングゼミに参加して、毎日の課題に全力で取り組んできたつもりだ。私の書く文章は、未熟だ。自分や他者の人生を変えられるような納得のいく一文はまだ書けていない。
しかし、文章を書こうとするなかで、普段考えたこともないことに思考を巡らせたり、何気ない日常の出来事に注目したりすることで、毎日の生活が変わった。
なによりも、大学受験も、天狼院のライティングゼミも、大変であると同時にとても楽しかった。文章を書くということは、「薔薇の道」を進むということなのだ。
自分史上最高の一文を書くために、これからも書き続けようと思う。
***
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