「自分と向き合う」がもつ矛盾
*この記事は、「ハイパフォーマンス・ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:梶花音(ハイパフォーマンス・ライティング6月コース)
性格診断テストはおもしろい
16Personalitiesを知っていますか。
数年前から巷で流行っている、いわゆるMBTI診断です。
何十もの質問に答え、回答に応じて16の性格の中からあなたの性格タイプが選ばれます。ユングのタイプ論をもとに開発された、正式なMBTIとは異なるようですが…(一般社団法人 日本MBTI協会「MBTIと似ている性格診断テストについて」、MBTIと似ている性格診断テストについて | [公式]日本MBTI協会)。
私の周りでも一時期流行りまして。
高校卒業後、高校時代の友だちと会うと必ずと言っていいほど「MBTIなにー?」と話題に出ました。Instagramでも「MBTIが○○の人は~」という投稿がちらほら。
結果のすべてが自分に当てはまるわけではなかったり、診断する度に結果が変わったり。質問数もかなり膨大なので時間もかかるけれど、なぜかおもしろいんですよね。
「えー○○なの!相性良くないね私たち!(笑)」
「職業○○向いてるらしいよー」「なんか意外!」
とか言いあったりして。
自分たちの新しい一面を知れることが、楽しかったのかもしれません。
「自分と向き合う」は、苦しい?
でも、自分について知ること、考えることが苦しいと感じることもあります。
高校で、自己推薦文を書く機会がありました。
自己推薦文は、主に推薦入試を受ける人が執筆するものですが、全員書いてみましょう、と言われて。
自分を理解するため、自分を言語化する練習のためという説明があったような気がします。
文章を書くのは好きなので、わりと前向きに机に向かいました。
自己推薦文には、自分の強みや弱みを分析しつつ、自分が成長したことを書く必要があります。
これまでの経験を振り返り、過去の自分とは違う存在としての、今の自分を表現することなります。
自分の長所は何か
自分はいかにアドミッションポリシーに適した人間であるか
これらの問いに対して、私は上手く答えられませんでした。
なぜか書きたくなくて、書こうとするとすごく嫌な気持ちになりました。
なぜ嫌なのか。
当時の私は、自己推薦文=自分をよく見せよう文と捉えました。
良く見せるためには、良く聞こえるよう、多少の脚色をつけなければいけないのではないか。
そう思っていました。
自分を着飾ることに対する罪悪感。嘘つきになる感じ。
それが嫌なのだという結論に至りました。
結局、自己推薦文練習は適当にやり過ごしてしまったような気がします。
自分と向き合うのが、苦しい理由は
でも、「すごく嫌」の理由は、それだけだったのか。
例えば16Personalitiesも、全ての説明が自分に当てはまるわけではありません。
ちょっと綺麗に説明しすぎでは?と思うこともあります。
前に診断した時に、ENFJだという診断が出ました。この性格タイプには次のような説明があります。
人の根底にある動機や信条を不思議なほど正確に理解できる人たちで、なぜ他の人の考えや感情をすぐさま把握できるか自分でも分からないこともあります。でも、このような“ひらめき”のおかげで、主人公は非常に説得力があり、周りの人を大きくインスパイアしながらコミュニケーション取ることができるのです。
参照:16Personalities「ENFJの性格」ENFJ型の性格 (主人公) | 16Personalities
たしかに、人の感情を大切にしたいと常々思っています。理想を上手く言い当ててくれているという意味では、性格の方向性が当てはまっていると言えなくもないです。
でも、それができている自信もないのに、この説明を読んで「周りの人を大きくインスパイアしちゃうのか、へへっ」なんて思ったりするわけです。
なぜなのでしょう。
なぜ自己推薦文を書く時は、自分を誇張した言い方をしなければいけない状況があんなに嫌だったのに、性格診断は楽しんで受け入れられるのか。
おそらく性格診断と自己推薦文では、本気度が違うからなのでしょう。多少の誇張や違いも、遊びの範囲内で楽しめます。
そしてそれは自分と本気で向き合うかどうかの違い、とも言えます。
自己推薦するとき、嫌でも自分と真剣に向き合います。自分のできていないところ、認めたくないところとも向き合う必要があります。
何より、「誇張して書かねば評価してもらえない」自分であることを認識することになる。それも嫌だったのかもしれません。
自己内省とメイク
そんなもやもやを、意識の奥の奥の方に抱いていた私が最近出会ったのが、『メイクの正解』(日本実業出版社)という本。
著者はプロヘアメイクのYUTA.さんです。
じつは天狼院書店で行われる、本書の発刊イベントの運営をお手伝いさせていただくことになりまして。
どんな本か知るべく読んでみました。
まず印象的なのは、帯の上の、踊るような一文。
「今日の私、なんかいいかも」
可愛らしいなあというのが第一印象でした。なんだか元気が出るようなフレーズです。
読んでいくとわかるのが、自分に合うメイクの仕方こそが、正解なのだということ。
その正解の見つけ方を解説してくれます。
本文では、「自分らしく輝くメイクの3構造」として、
【流行・ツール】【メイクの美容と基本】【自分】を掲げています。
【流行・ツール】を頂点として、三層の三角形を描くイメージです。
一番下の層には【自分】が来ます。
【流行・ツール】は取り入れれば簡単にトレンド感を出せるもの。
でも、それを活かすには全体のバランスを保つ【メイクの美容と基本】、そして【自分】が大切です。
特に【自分】は、メイクの根底にあるものとして徹底的に向き合うことが必要だといいます。
まず、悩みを書きだすところからはじめ、自撮りをし、改善点を考える。
メイクのノウハウ本なのに、自己内省から始めるの?
そう思いますよね。私も思いました。
モデルさんみたいに素敵なメイクができるようになるためのコツを教えてくれるのではないの?と。
でも、この本の目的は、「自分自身が納得できる美しさ」を、読者が手にすること。
「どんなときが一番自分らしい?」
「本当に私がなりたいのは、どんな自分?」
こう問いかけてきます。
悩みを書き出し、自撮りをし、その写真を徹底的に分析する。
その過程でメイクの正解を見つけていくのです。
この過程、自分のできていないところ、認めたくないところと向き合うってことでは?
この感情を知っています。
これは私が嫌だった、自己推薦文を書くのと似ている。
気付いてしまいました。
私はメイクの正解にたどり着けないかも。
「今日の私、なんかいいかも」を手に入れるために
書籍イベント運営陣なのに、本からのメッセージをまっすぐに受け止められない。
焦りを抱いていた私が次に出会ったのは、受講生の言葉です。
YUTA.さんはオンラインのメイク講座を開いており、その受講生の声も本書には掲載されています。
今の自分を変えたくて、YUTA.さんの講座に参加しました。
受講した最初の課題として、自分の性格や悩みを書き出しました。日々の自分を見つめ直すことで、どうしたいのかが少しずつ見えてきました。
毎日、メイクのよかった点と改善点を書き出したり、スマホで撮影した自分を見たりするなかで、認めたくない部分と向き合うことは、最初は正直しんどかったです。
でも、そうしなければ変われないと気づきました。(中略)
私はこれまで、人をうらやましく思うことが多かったです。自分にはないものを持っている人がたくさんいるからです。
でも、メイクを学びながら、同じように自分にもよさがあると考えるようになりました。すると、心のモヤが晴れ、気持ちがラクになりました。
参照:YUTA.『なんとなくの自己流から抜け出す 今の自分に合うメイクの正解』日本実業出版社、pp.234-235より
自分と向き合うのがしんどいって思うの、当たり前なのかもしれない。
共感してくれる人がいることへの安心感。
そして、経験者からの「心のモヤが晴れ、気持ちがラクになりました」の一言。
私もそうなれるかもしれない。
受講生の言葉に勇気をもらいました。
自分と向き合った先に得られるはずの、私のメイクの正解を知りたいと思いました。
そして同時に、私と同じように感じていらっしゃる方に、今回の発刊イベントはピッタリだと思いました。
著者から直接、自撮りで自分と向き合う方法を教えてもらえたり、
YUTA.さんに直接質問できる。
メイク講座で非常に好評なファンデーションのタッピングも、
YUTA.さんの解説のもと自分で試せます。
何より、他の参加者と一緒に受講するので、仲間がいます。
発刊イベントって、著者から本の裏話を聞いたり、サインをもらったりするための機会なのだと思っていました。
でも、このイベントの目的はそれだけではない。
自分と向き合う勇気をもらうための、メイクの正解を見つけるための好機となります。
大切なことに気づく、いい読書体験でした。
イベント後、私の、自分と向き合うことに対するマイナスの感情は、さらに和らいでいるかもしれません。
きっとそうです。
その先で、「今日の私、なんかいいかも」と心躍る経験をしたいな、と願っています。
自分と向き合うことは、理想を描くということでもあり、
その表現がまぶしく見えてしまうのも、
自分の嫌な部分が見えてしまうのも、
より良くありたいと考えることも当たり前なのかもしれません。
だから恐れず向き合ってほしい。怖ければ仲間を見つけるといいかも。
重要なのは、それを実現するべく努力できるかどうか!
メイクの正解を見つけて、
自分と向き合う成功体験をひとつ得られたら、
自己推薦文に向かってもやもやしていた自分に伝えたいです。
イベント詳細:
日時:8/30(土)11:30〜13:00
(+質問タイム 30分程度)
場所:天狼院カフェSHIBUYA(オンライン・アーカイブ受講も可能)
定員:20名(要予約)
参加費:3,850円(税込)(会場参加の場合1ドリンク制です)
お申し込みは店頭または当店HPまで
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