メディアグランプリ

「福岡の、とある書店での物語」


*この記事は、「ハイパフォーマンス・ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2025年6月開講】目標達成するための文章講座「ハイパフォーマンス・ライティング」〜たとえどんなに上手くとも、効果がなければ意味がない。〜

記事:笹尾 和代子(ハイパフォーマンス・ライティング)

夕暮れの今泉は、まるで呼吸をしているかのように刻々と表情を変えていく。

昼間の賑わいが嘘のように静まり返った通りにまだ慣れない僕は、

スマホの地図を頼りにキョロキョロと周りを見渡していた。

コンクリートの壁に張り付くように立つ、古びたビルの二階。そこに、僕の目的地はひっそりと隠れていた。

「ここらへんにあるはずなんだけどな……」

何度目かになる独り言をつぶやいた時、ふと、視界の端に小さな光が灯っているのを見つけた。

レンガ調の階段の脇に、ひっそりと掲げられた看板……

『天狼院書店』

文字はかすれていて、まるで秘密の入り口のようだった。

僕は少し迷ったが、好奇心に背中を押されて、一歩ずつ階段を上っていった。

重い木製の扉を開けると、カラン、と澄んだ鈴の音が鳴り響いた。

店内に満ちていたのは、温かいコーヒーと、何とも言えないスパイシーな香り。

そして、たくさんの本。

本棚は天井まで届きそうな勢いで、そこには僕が今まで見たこともないような、興味深いタイトルがぎっしりと並んでいた。

奥の方からは話し声が聞こえる。賑やかでもなく、静かでもない、独特の心地よい喧騒だ。

「いらっしゃいませ!」

カウンターから顔を上げたのは、にこやかな女性スタッフだった。

彼女は僕の戸惑いを察したのか、「よかったらどうぞ、ゆっくり見ていってくださいね」と優しく微笑んだ。

僕は言われるがままに奥へ進む。

すると、本棚に囲まれた一角に、なんとコタツが置かれているのを見つけた。そして、その横では、見知らぬ男性が真剣な顔でノートパソコンに向かっている。

書店にコタツ? まるで、誰かの部屋に迷い込んだかのようだ。

「ここ、コタツでくつろげるんですよ。よかったらどうぞ」

先ほどの女性スタッフが、僕の横にそっとやって来て声をかけた。

僕は思わず、「ありがとうございます」と答えていた。まさか、書店でコタツに入れるなんて……

言われるがままに靴を脱いで腰を下ろすと、まるで実家に帰ってきたかのように心が安らいだ。

ふと、隣の席に座っていた男性が、顔を上げて僕に話しかけてきた。

「よかったら、これも読んでみませんか? この本、すごくいいですよ」

彼が手にしていたのは、まだ発売されたばかりのビジネス書だった。

僕は、「ありがとうございます」と言いながら、その本を受け取った。

「僕も、この本の内容を実践して、新しい企画を考えているところなんです。ここに来ると、いつもいいアイデアが浮かぶんですよね」

彼はそう言って、またノートパソコンに向き直った。彼の言葉は、僕の心に深く響いた。

ここは単に本を読むだけの場所じゃない。本から得た知識を、自分の人生に活かすための場所なんだ。

その日、僕は結局どの本も買わなかった。

代わりに、スタッフに勧められた『ライティング・ゼミ』に申し込んでいた。

昔から文章を書くのが好きだったが、誰かに読んでもらうことも、意見をもらうこともなかった。この場所なら、僕の小さな才能を広げてくれるかもしれない。そんな期待を抱きながら、僕は一歩を踏み出した。

一週間後、僕は再び天狼院書店の扉を開けていた。この日の参加者は僕を含め10人。年齢も職業もバラバラだが、皆、書くことを愛する同志だった。講師の先生は、「最後まで読んでもらえる文章は、誰でも書けるようになります。そう、皆さんが自転車に乗れるぐらい当たり前に」と熱く語った。

「今日、皆さんに書いてもらいたいのは、この書店の魅力についてです。ただし、ただの感想文ではありません。読んだ人が『行ってみたい』と心から思うような、感情に訴えかける文章を書いてみましょう」

僕はペンを握り、真剣に書いた。

カフェのスパイシーな香り、コタツの温かさ、スタッフの笑顔、そして隣にいた男性との出会い。

僕がこの書店で感じた、言葉では言い表せない感動を、どうすれば文章にできるだろうか。

ゼミの後半、参加者同士で書いた文章を読み合った。皆、それぞれの視点でこの書店の魅力を捉えていた。

「ここのバターチキンカレー、絶品なんですよ」

「私はよくここで読書会に参加して、色々な人と話すのが好きなんです」

一人ひとりの文章が、僕の知らない天狼院書店の魅力を教えてくれた。

先生は僕の文章を読み、「この描写、すごくいいですね。読んだ人が、まるでその場にいるかのように感じられます」と褒めてくれた。その言葉が、僕にとって何よりの喜びだった。僕は、このゼミを通じて、自分の書いた文章が誰かの心に響くという喜びを知った。

そして、その日の帰り際、スタッフが僕に声をかけた。

「来週、『BookLove恋愛目的読書会』というイベントがあるんですが、ご興味ありませんか?」

僕は一瞬ためらった。僕はライティングを学びに来たのであって、恋愛を求めているわけではない。

しかし、スタッフの「ここでは、本が人と人をつなぐんです」という言葉に、僕は強く惹かれた。

「参加してみます」

僕はそう答えていた。

第4週の日曜日、僕は再び天狼院書店の扉を開けた。

店内はいつもより少し華やいだ雰囲気で、僕と同じように少し緊張した面持ちの人々が集まっていた。男女半々、総勢10人。テーブルには、参加者が持参したいくつかの本が置かれていた。

「本日は『BookLove恋愛目的読書会』にご参加いただきありがとうございます! この会では、持参いただいた本を通じて自己紹介を行い、本とご自身をプレゼンしていただきます。そして、その本を通じて、素敵な出会いを見つけてください!」

司会のスタッフの言葉に、会場が和やかな雰囲気に包まれた。

僕は、恋愛小説をプレゼンすることにした。主人公が挫折を乗り越えて、新しい恋を見つけるという物語だ。

「この本を読んで、僕は失敗を恐れず、新しい一歩を踏み出す勇気をもらいました。この本のように、僕も誰かと出会って、新しい物語を始めたいと思っています」

僕がそう言うと、向かいに座っていた女性が、僕の言葉に深く頷いた。彼女は手に持っていた本をそっと僕に見せてくれた。それは、僕がプレゼンした本と、同じシリーズの最新刊だった。

「この本、私も大好きなんです。私も、この本を読んで、一歩踏み出す勇気をもらいました」

彼女の言葉に、僕の胸は高鳴った。

スタッフを介して僕と彼女は連絡先を交換し、それから僕と彼女は、毎週のように天狼院書店で会うようになった。

二人で本を読み、お互いの夢を語り合い、時にはライティングゼミで書いた僕の文章を読んでもらったりもした。天狼院書店は、僕にとって、そして彼女にとって、かけがえのない場所になっていた。

ある日、彼女が僕に言った。

「私、初めてここに来た時、ちょっとドキドキしたの。でも、この場所が、私とあなたを繋いでくれたんだね。本当に、天狼院書店に来てよかった」

その言葉に、僕は深く頷いた。天狼院書店は、僕の人生を変えた。

一人で悶々と文章を書いていた日々から、人との出会いを通じて、新しい世界を切り開いていく日々へと変わっていった。

僕の書いた文章は、まだ未熟なものかもしれない。それでも、僕には応援してくれる彼女がいて、僕の作品を待っていてくれる読者がいる。

僕はいつか、この場所で自分の小説を朗読したい。そして、僕の作品を読んだ誰かが、新しい一歩を踏み出すきっかけになってほしい。

「いらっしゃいませ!」

いつものように、鈴の音が鳴り響く。

僕は彼女の手を握り、温かい光に包まれた店内へと足を踏み入れた。そこには、僕と同じように、人生の新しいページをめくろうとしているたくさんの人々がいた。

天狼院書店は、今日も誰かの人生の場所になっている。

《おわり》

あなたも、ちょっとだけ人生を変えてみませんか?

■福岡天狼院書店の詳細はコチラ➣福岡天狼院 | 天狼院書店

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この記事は、天狼院書店の目標達成するための文章講座「ハイパフォーマンス・ライティング」を受講した方が書いたものです。「ハイパフォーマンス・ライティング」では、執筆いただいた記事をフィードバックしてもらえます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店/天狼院書店の公式noteのマガジン「READING LIFE/天狼院読書クラブマガジン」にアップされます。

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2025-09-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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