つながりたくない母が水着姿まで公開されて気付いたこと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:愛野美奈(ライティング・ゼミ7月コース)
娘は、デジタルネイティブ世代だ。オープンな性格のせいなのか、今時の学生だからなのか、オンラインビデオチャットに私を巻き込んでくることが多い。先日も、キッチンで夕飯の支度をしていると、手伝いながらボーイフレンドとチャットを始めた。
「え、ママがうつっていいの?」
遠慮がちにスマホから離れるが、娘は慣れた手つきでスマホをホルダーにセットして料理実況が始まり、会話にもいつの間にか入ってしまっている。自分の高校時代を思い出すと、交際していることすら親に知られたくなかった。ましてや、会わせて紹介するなんて考えられなかった。そんな私に、彼氏ができたと無邪気に自慢し、キッチンで気軽に3人でチャットしながら料理をする。
学校や街などリアルの場所で、実際に会って話すのは、抵抗がないのだが、家でのプライベートタイムの急なオンラインビデオチャットはさすがに抵抗がある。友人に聞いたら、子供からは親には何にも話してくれないから羨ましいと言う。そう聞くと嬉しい気もするけれど、やっぱり顔出しオンラインで娘の友達と話すのは、オープンな性格でない私にはまだ恥ずかしさがある。しかし困惑しながらも、時代なのだと、仕方なくオンラインでずっと「つながる」という新しさを受け入れている最中である。
ところが、インスタには参った。家族旅行で行ったホテルのプールで一緒に泳いでいると、自撮りかと思いきや、いきなり一緒の水着姿の動画を友人限定公開ではあるけれど、インスタストーリーズに投稿されたりもした。
「あの、私、水着姿で映り込んでいるけど……」
「別にいいじゃん、いいじゃん」
「かわいい水着なんだし」
「……」
嫌だと言う暇もなかった。娘は隣でプールも友達との会話も楽しそうだ。
コロナ禍に学校に登校できず、オンライン授業が続いた世代ゆえに、オンライン慣れし過ぎている。色々躊躇する私を気にもとめない。昭和世代の私からすれば、水着のお母さんが一緒に映ること自体にまず抵抗があり、それを平気でストーリーにあげて友達みんなに見せるって、どれだけオープンなのだろうかと、もう頭が混乱した。
確かにオンラインでいつもつながれることは便利だとは思う。思えば、コロナ禍で、リアルで会えなくなった時に始まったオンラインの充実生活。部屋にいながら、みんなとつながれて、私は、インストラクターさんと一緒にオンラインヨガクラスを楽しんでいた。まだ配信者も慣れていない人が多く、手探りで一緒に楽しんでいた。ビデオチャットで顔が見えることも嬉しかった。オンラインのおかげで孤独ではなくなるのが良かった。
そんな時期を経て、今は便利さゆえにプライベートに、突然他人が入り込んでくることが簡単になりすぎだとは思う。私は基本、ビデオチャットはほぼ仕事で、パソコンからだ。LINE使用も限定的だ。実は、スマホすら、仕事以外なら忘れてもギリギリ大丈夫なようにしてあるくらいアナログ寄りだ。娘には「ママ、また忘れたでしょ!連絡つかないと困る」と帰宅して叱られる。わざとじゃないけど、私は、つながらない権利を大事にしたいし、便利なスマホに支配されたくないと思ってしまう古い人だ。
というのも、ある会食中に、相手はずっとスマホばかり見て、LINEで誰かとチャットか自撮り。楽しくない時間を過ごして気がついた。目の前にいるのに知らない誰かとずっとオンラインしている行為に、無視されている感じがあって嫌だったのだ。同じ空間にいながら、スマホをずっと見ているという行為は、心ここにあらず、スマホの画面の向こう側に行ってしまっているのだ。娘は、強引というか、あんまり考えずに私を巻き込んでいるようでいて、同じ家にいる母という存在を尊重しつつ、友達ともうまくつながっていたのだ。
大人になるまで携帯電話もない、リアルか家電話連絡しかなかったアナログ世代の私だが、思えば当時もリビングで長電話していた母の会話なんて聞きたくないけど聞こえていた。スマホであれ、パソコンであれ、黒電話であれ、使用中に一緒にいる人への配慮ができるかどうかの問題なのだ。自分の家、部屋というプライベートな場所と時間に、家族であれ、突然その友達関係、会社関係者といった他人が入り込んで、私のくつろぎ空間をジャックされている感じが嫌なのだ。
そして世代というより、私がスマホで過度につながり、束縛されたくない人であるのは、おそらく高齢親の介護、看病中、いつもスマホが鳴ると病院に呼び出されていた恐怖症的ななごりだろう。娘の場合は、スマホが鳴るのは彼氏か仲良しからの連絡だから、つながりが嬉しい感情と結びついている。若い世代はつながりが喜びだから羨ましくもある。大人はそうはいかない時もある。
私を一緒に入れてくる娘のオンラインビデオチャットは、当初困惑したけれど、今は配慮あるつながりが楽しいと思っている。それに私は意図せずインスタストーリーズに水着姿まで晒してしまった母だ(笑)デジタルネイティブ世代に巻き込まれながら、私が苦手なことへのいい学びのチャンスと楽しんで、時々スマホは家に置き去りにして出かけて、自由で頑固でいようと思う。
(おわり)
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00