あの頃に思い描いていたよりも、大人って、子どもっぽい
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記事:升井 さくら(ライティング・ゼミ7月コース)
子どもの頃、小学校から帰ってくると、いつも我が家ではドラマの再放送が流れていた。あすなろ白書、古畑任三郎、ビーチボーイズ、そして29歳のクリスマス。まだまだ子どもだった私にはよく分からないながらも、なんとなく
「大人って、こんな風にお酒を飲みながら、恋や仕事の悩みを話し合ったり、笑い合ったりするのかな」
とわくわくしていた。テレビの中には、カッコよくて、おしゃれで素敵な大人がたくさんいた。大人っていいな、私もきっとああなれるんだ、と思っていた。
子どもの頃の私はだらだらゴロゴロ、アニメを観て、お菓子を食べて、動画を見て、そんな日々だった。高校生の頃は友達とスイパラで食べまくったり、毎日のようにファミチキを買い食いしたり、ある時はファミレスに行って食べたいものを全部頼んじゃって、食べ過ぎて苦しくなったり、そんなありきたりな毎日を過ごしていて、カッコよさなんて微塵もない、アホな女子高生だった。
さて、時は流れて、私もすっかり大人になってしまった。大学を卒業して、就職して、そして結婚が決まり、夫となる人と二人で暮らし始めた。親元を離れる初めての経験で、やっと私も大人になった実感をもてた。
そんな初めての日の夕飯時に夫が言った。
「いつかやってみたかったことがあるんだけどさ」
「何?」
「松屋と吉野家とすき家の牛丼、食べ比べてみたいんだよね」
「何それ、最高じゃん、やろう」
ということで牛丼チェーン店の並盛を買い、並べて、食べ比べをした。ここのはどうだ、あっちのはどうだと話し合いながら、食べたのはとても楽しかった。でも二人で3杯食べるのは、ちょっと重たかった。第二弾はチキンの食べ比べをした。各種コンビニやファストフード店を巡り、買い揃えたのだが、さすがに8種類はお腹いっぱいで苦しくなる。こうやってつい、お腹の許容量を気にせず、食べて気持ち悪くなってしまう。やはり食べ比べをする時には、人がたくさんいた方がいい。ガキ使の利きなんちゃらの企画は理に適っている。
またある日、友人たちと旅行に行った時のことだ。その日、不運なことに体調不良で来られなくなった友人がいた。
「私、紙粘土持ってきたんだけど、あの子を作って代わりに旅したいなって」
「よし、作ろう」
私たちは深夜1時に紙粘土を捏ねて、人形を作った。うまくいかない、粘土が足りないからちょっとちょうだい、などと話しながら作るのは、とても楽しかった。上手にできたから愛着も湧いて、連れて行く時も大事に扱った。首はすぐ取れちゃうけど。
さて、お気づきだろうか。私は思い描いた大人には、なれなかったのだ。
お酒よりもお菓子が好き。仕事の愚痴は、残業しながら夜の職場でワーワー喚いている。時々、職場の人に対して笑える程度の悪戯をしかけたり、仕返しされたり。そんなふざけた大人になってしまった。一応、ちゃんと真面目に仕事もしているのだけれど。
でも私の周りを見渡すと、実は案外、そんな大人ばかりだと気づく。類は友を呼ぶ、ということなのかもしれないけれど、学生時代と何も変わらず、ゲームの話や推しの話で盛り上がるし、そもそもお酒なんてなくたって、友達と集まればすぐにテンション爆上げになれるのだ。我等友情永遠不滅也。
変わったことなんて、お金と時間の使い方くらい。でももしかしたら、
私が憧れていた大人たちだって、本当は子どもの頃と何も変わらない一面があったのかもしれない。カッコいいんじゃなくて、ただのカッコつけだったのかもしれない。
実は、これ、大切なことなんじゃないだろうか。カッコつけて生きていていいし、最高に子どもじゃないか。
そもそも子どもの頃のような純粋な心を保ち続けることって、素敵なことで、自分の心が守れている証なのではないか。周りが、その人の子どものような心を否定してしまうと、いつしかその人らしさを見失わせてしまうかもしれない。心に余裕が無いと、職場で忙しい時に遊び心を見せてくることにもイライラする。そして眉間に皺を寄せて、「何をやっているの」なんて咎めたりする。そういう大人ばかりだと息苦しいし、お互いに心が摩耗してしまう。
ストレス社会の中では、誰もが心に余裕なんてもてる訳ではないのかもしれない。だからせめて、私は周りの人の純粋な子ども心を否定せずに見守って、私の周りの子どもな大人たちを大事にしたい。「効率」や「利益」よりも「楽しい」を行動基準にしたい。だって私の子ども心が、「楽しいことがしたい」って言っているから。結局、大人って割と子どもなのだ。
〈おわり〉
***
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