23年間自分の名前すらまともに言えなかった僕が街コン63回目で初めて彼女ができた話
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記事:佐藤サク (ライティング・ゼミ11月コース)
僕は23年間彼女ができなかった。しかし街コンに出会い、街コンにのめり込み、街コンに63回通い、初めて彼女ができた。街コンを通して人生が変わったと言っても過言ではない。そんな街コンで彼女ができるまでの体験を書き記してみたい。
僕は吃音症だった。小学4年生の頃に発症した吃音症によって、「あ行」「か行」「た行」「は行」から始まる言葉をうまく発することができない身体だった。そして自分の名前もこれらの音から始まるため、「ぶッぶッぶッ・・・・・・」と声が詰まってしまう。子どもの頃からそんな状態だったため、人と話さずに済む職業を選択して、電気技術者になった。
しかし、電気技術者は完全に男だけの世界だった。学校も職場もほとんど男しかいなかっから、中学生以降の僕は女性と話した経験はおろか、女性とまともに目を合わせたこともなかった。しかし道路や電車で女性を見かける度に、僕の異性を求める感情は、愛に飢えた子どものように、空腹に喘ぐハイエナのように、日に日に高まっていった。
そんな中23歳になり、周囲の人たちが恋愛の話をしているのを聞いているうちに、このままだと僕には一生彼女ができないのではないかという危機感に襲われた。しかし、声が出ない僕にどうしたら彼女ができるだろうか。
悩んだ結果、まずはキャバクラに行ってみることにした。まずはお金を払って女性と話すことだ。しかし初めてのキャバクラは散々だった。席に着いてから一言も言葉を発することなく最初の30分でお会計した。緊張して「くッぐッぐッ・・・・・・」と声が詰まり、無言で時間が経過した。30分が永遠に感じられた。隣に座った女性がすごくきれいだった記憶だけが脳裏に焼き付いたが、心は空虚だった。なんでこんなに人と話せないのかと悔しさと無力さに打ちのめされ、僕には一生彼女ができないと思って、帰りの暗闇を歩きながら涙が出た。
しばらくしてから、スナックに行った。どこにでもあるような、小さな駅の路地裏にあるボロボロの看板のスナックだった。ママさんは50代くらいで、お世辞にもきれいだとは言えないが、明るさはピカイチの包容力のある女性だった。僕がカウンターに座って黙り込んでいても楽しそうに話しかけてくれた。そのうち数回言葉を発することができた。「くッぐッ・・・・・・このビールおいしい」とか「きッきッ・・・・・・近所のあのカフェいいですよね」とか、たわいもない会話だったが、僕にとっては感動的な出来事だった。人と会話することができた! しかも女性と! 何度かこのスナックに通う度に少しずつ話せるようになっていった。
スナックに通ううちに、街コンの存在を知った。街コンとは、居酒屋やカフェを貸し切って、集まった男女がローテーションで合コンをしていくような出会いの場である。その街コンに初めて参加したが、初戦は大失敗だった。大人数の場に緊張して、自分の名前が言えなかったのだ。名前を言えずに「うッ・・・・・・うッうッ・・・・・・」と言葉に詰まっている間に、同じテーブルの空気が凍り付くのが感じられた。キャバクラでの沈黙の30分が蘇ってきた。運営者がフォローしてくれて他の人の自己紹介に移ったが、心は暗く、自己嫌悪に陥っていた。その後の会話は耳に入ってこず、イベントの途中だったが無言で退室した。
初めての街コンの帰り道は、絶望的な気分で、電車に乗る気にもなれず、2時間以上歩いて帰った。すごく悔しかった。「なんで僕は声が出ないんだ。あんなに声を出す練習をしたのに、なんで声が出ないんだ。声さえ出れば、もっとスムーズに会話できるのに。彼女をつくるチャンスも掴めるのに。他の人たちは声が出るのになんで、コミュ力がないとか言って悩んでいるんだ。もっとしゃべれよ。声が出るんだから」怒りの感情を押し殺しながら歩き続けるうちに、ふとある考えが浮かんだ。「僕は声が出ない。だったらその分、行動力で人に勝つしかない。声が出ない分、圧倒的な行動力で他の男を超えて、絶対に彼女をつくってみせる」
この日から、街コンに100回行くというミッションを自分に課した。街コンに100回行けば、どんなにモテない男でも付き合ってくれる女性は一人くらいいるだろう。根拠はないがそう思った。そして毎週土曜日に必ず1回街コンに行くことに決めた。
街コン2~10回目。僕にとって街コンに行くことは、声が出ない自分と向き合うことだったから、街コン会場にいるだけで苦痛だった。しかし絶対街コンに100回行ってやるという執念を持って取り組み、最初はほとんど話せなかったが、笑顔でうなずくことができるようになっていった。
街コン11~20回目。声が詰まりながらも自己紹介ができるようになり、女性と目を合わせることができるようになった。街コンのシステムにも慣れ、余裕が出てきた。
街コン21~30回目。スムーズに自己紹介と趣味を言えるようになった。自己紹介の型が出来上がり、ここまで自己紹介を合計100回以上行い、成功体験を積むことができた。徐々に街コンが楽しくなってきて、土曜日だけでなく日曜日にも1回ずつ通うようになった。
街コン31~40回目。相手の女性に話題を振って話を聞くことができるようになった。「街コン30回目です」と自己紹介して女性陣にドン引きされる失敗を経験してからは、毎回「2回目です」と答えるようにした。土日だけでなく平日も街コンに通うようになった。
街コン41~50回目。経営者の男性と同席になった。今までの経緯を話すと「めっちゃくちゃ応援したい」と言って、タダでキャバクラに連れて行ってくれた。沈黙の30分の経験でキャバクラには苦手意識があったが、キャバ嬢と楽しく会話することができる自分を発見して感動した。
街コン51~62回目。男女関係なくテーブルの会話を回せるようになった。場が沈黙しそうになったら話題を提供して、全員が会話に参加できるように配慮できるようになった。
街コン63回目。この日は謎解き形式の街コンだったが、同じ謎解きをして仲良くなった女性とマッチングして、その後デートすることができた。そして複数回デートを重ね、ついに交際をスタートすることができた。
まさに夢のようだった。交際初日の別れ際、彼女がデートの途中で買った都まんじゅうを手渡してくれた。「私はいつでも買えるから食べて」と。初めての彼女からもらった都まんじゅうは、感動的に美味しくて、目頭が熱くなった。彼女を一生大事にすると誓った。
その後彼女には振られてしまったが、僕にとって63回の街コンはとてつもなく貴重な経験となった。その後の人生で、初対面の人でも普通に話しかけることができるようになったし、飲み会でも場を盛り上げることができるようになった。吃音症はなかなか治らないにしても、声とメンタルをコントロールする技術が身に付いた。そして、電気技術者を辞め、昔からずっとやりたかった対人援助職の看護師にキャリアチェンジすることができた。街コンに救われたと言っても過言ではない。そして話すのが苦手でも、行動力で自分の人生を変えることができると知ることができた。行動することは苦しいが、自分を変える力になると信じて今後も行動し続けたい。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
《おわり》
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