台湾台東県への旅はキャッシュクリアと同じである
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記事:柘植 亜美(ライティング・ゼミ11月コース)
台湾に行ったことがある日本人は多い。
台湾の観光署は9月、2025年日本から台湾を訪問した旅行者数が延べ100万人を突破したと発表した。なんと日本人の約120人に1人が旅行している計算である。そこそこの規模の会社や学校に通っていれば数人は身近な人が台湾に行っているかもしれない。東京からわずか3時間半で着く台湾は、それくらい日本人の海外渡航先としてポピュラーな場所なのである。
しかしながら台湾の台東県に行ったことがあるという日本人は少ない。私自身は個人事業主として台湾に関連する仕事をしている関係で、台湾フリークと話をする機会も多いが、それでも台東に行ったことがあると話す人は少ない印象だ。おそらくほとんどの日本人はまず台北に行き、再び訪れたとしても台北旅行を重ねるか、もしくは西側の「台中」「台南」「高雄」といったエリアに行くパターンが多い。
ではなぜ台湾東部の台東に行ったことがない人が多いのか。ガイドブックも西側の中心地のものが多いからかもしれないが、大きな理由の一つには、台湾を度々訪れる台湾旅行が大好きな日本人でさえも、台東は田舎でアクセスがしづらく、現地に着いても観光が大変というイメージを持っているからだろうと思う。実際私が台東への旅行を検討している人と話をするときは「最低でも3泊は必要なイメージがある」「そもそも市内観光できなさそうで色々回れるのかわからず躊躇する」というコメントをもらうことが多々ある。
たしかに、台東は台湾でも移動時間がかかる場所であり、台北のように徒歩で移動しながらでも色々と観光できて、ちょっと疲れたらさっとタクシーを呼べる、そんなエリアではない。
ではそんなちょっと行きづらい台東の魅力は何なのか。それは雄大な大自然と台湾原住民族(*注1) の部落が台湾一多いことであろう。高い山と青い大きな海に挟まれた台東エリアには、阿美(アミ)族や排湾(パイワン)族をはじめとした8つの部族が住んでいる。各所にある原住民部落へは観光旅行客でも訪れることができ、台北ではなかなか食べることができない原住民の料理を堪能できる。また部落内には原住民の紋様をベースとしたアートも多く、台湾で連想されるようないわゆる「中華な雰囲気」とは全く違う世界を堪能することができるのだ。
さらに、台東の田舎独特の空気は非常にゆるりと流れていてとても癒やされる。まるで離島のような雰囲気の中で生活している人々が多く、台北に比べると会話のスピードもゆっくりしている。
そんな少し行きづらさがある台東へ行くのはなぜか。それは日常の中で自分の中に溜まったキャッシュをクリアしたいからである。普段都内のスタートアップで働いている私は、非常にスピーディーで変化の激しい環境の中に身を置いている。それはそれでとても楽しいのだが、一日一日、何かが少しずつ私の中に溜まっていく感覚がある。そしてその溜まった何かによって段々と息苦しくなってくる。すっきりとリセットしたいが、人はパソコンのようにクリックひとつで何かが削除される訳では無い。そんなときに、日常とは正反対な空気が漂う場所に無性に行きたくなる。そして真っ先に思いつくのが台東だ。
台北からおよそ4時間、台湾鉄道の特急に揺られて台湾の東側を南下するところから癒やしの旅が始まる。台湾鉄道おなじみの駅弁も忘れずに買う。「タイパ」「コスパ」という言葉が当たり前になった時代に、そんな言葉とは無縁の場所へ行くことにココロが踊る。大自然とそこで暮らす人々との交流に癒やされることはすでに分かっている。台東より北側に位置する花蓮県に差し掛かるころには台湾東部の青い海が見え始める。そして台東に着けば頭も心も空っぽにして、身体が感じるままの週末を過ごす。自然と脳内に溜まった何かが少しずつ消えていく。まるでキャッシュをクリアするかのように。そんな状態になれるのが私にとっての台東旅の魅力だ。もし日常に少し疲れ、癒やしがほしいと思ったらぜひ台東に行ってみてほしい。きっとすっきり整ってまた日常に戻ることができるはずだ。
注1:日本では主に先住民という表現が使われることが多いですが、中国語で「先住民」はすでに存在していない民族を指します。台湾では自分達のアイデンティティとして「原住民」という言葉を使用しています。本文では台湾原住民族に対する尊重の意味を込めて原住民と表記しています。
《おわり》
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