「平等な社会」は本当にいい社会なのだろうか
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:仁(2026年1月開講ライティング・ゼミ)
「平等な社会を目指そう」
政治の世界でも、学校でも、よく聞く言葉だ。 機会の平等、ジェンダー平等、地域間の平等、世代間の平等。いろいろな場面で「平等」という言葉が掲げられる。
たしかに響きはとても正しい。 でも、ふと考えることがある。
平等って、本当にそんなに素晴らしいことなのだろうか。
世の中が完全に平等だったら、むしろ少し窮屈な世界になるのではないか。そんなふうに思ってしまう自分は、ひねくれているのだろうか。
平等と似た言葉に「公平」や「公正」がある。
公平な社会。 公正な社会。
どれも正しい言葉のように聞こえるが、実は意味は少しずつ違う。
試しに、こんな場面を想像してみてほしい。
ここに10人の人がいる。 男性もいれば女性もいる。大人もいれば子どももいる。体格のよい人もいれば、そうでない人もいる。
ここで、あんぱんを配ることになったとする。
平等は、全員に1個ずつ配ることだ。 とにかく同じ数を配る。
公平は、状況に応じて配ること。 お腹が空いている人や体の大きい人には多めに、そうでない人には少なめにする。
公正は少し違う。 誰でも取りやすいように机を配置したり、配るルールを分かりやすくしたりして、全員が困らない仕組みを整えることだ。
平等な世界では、お腹がペコペコの人も満腹の人も、大人も子どもも、同じようにあんぱんが配られる。
一見すると、とても美しい。
しかし、少し考えると疑問も出てくる。
なかには「別にあんぱんはいらない」という人もいるだろう。 小麦アレルギーでパンが食べられない人もいるかもしれない。
それでも平等のルールでは、全員にあんぱんが配られる。 理由は簡単だ。
平等だからだ。
そうなると、個人の違いはどこへ行ってしまうのだろう。
さらに言えば、あんぱんが欲しくて頑張る人もいる。 逆に、いらないから何もしない人もいる。
でも平等な世界では、どちらにも同じ数のあんぱんが配られる。 努力してもしなくても、結果は同じだ。
それだと、努力する意味って何だろう、と思えてくる。
平等であることと、不満が出ないことは別の話だ。 むしろ平等にしようとすればするほど、不満が生まれることもある。
たとえば、昔こんな話題があった。
小学校の運動会で、徒競走に順位をつけないという取り組みだ。 競争なのだから、1位もいればビリもいる。それが自然なことだと思う。
しかし「教育上よくない」という理由で、最後はみんなで手をつないでゴールする、という形にした学校もあったらしい。
それは本当に「平等」で、そして良いことなのだろうか。
世の中には「悪平等」という言葉もある。 個人の資質や努力、成果を無視して同じ扱いをすることだ。
それはある意味、人を個人としてではなく、機械のように扱うことでもある。
人はそれで幸せになれるのだろうか。
日本の企業では、かつて年功序列という仕組みが当たり前だった。 年齢や勤続年数によって給与が上がる制度だ。
そこでは能力や成果よりも、「長くいること」が評価された。
ある意味、とても平等な仕組みだった。
しかし最近では、成果主義へと評価制度を変える企業も増えている。 努力や能力が評価されないと、優秀な人材がいなくなってしまうからだ。
ここでもう一度整理してみる。
平等=同じにする。 公平=必要に応じて配る。 公正=ルールや仕組みを整える。
最近よく聞く言葉に「多様性」がある。
だが実は、多様性と平等は少し相性が悪い。 多様であるということは、みんな同じではないということだからだ。
あんぱんが欲しい人もいれば、欲しくない人もいる。 走るのが得意な子もいれば、苦手な子もいる。
人はそもそも平等じゃない。
だから違うものを無理に平等にしようとすると、誰かに何かを押し付けることになる。
そう考えると、社会が目指すべきなのは単なる平等ではなく、公平や公正なのかもしれない。
必要としている人に必要な支援が届くこと。 そして、誰もが不利にならない仕組みを整えること。それこそが大切なのではないだろうか。
「平等な社会を目指そう」という言葉は、とても正しく聞こえる。
しかし本当に大事なのは、みんなを同じように扱うことじゃない。 違いを認めたうえで、支え合える社会をつくることだ。
平等という言葉を少し疑ってみること。 それは決して平等の価値を否定することではない。
むしろ、より多くの人が納得できる社会を考えるための出発点なのだと思う。
≪終わり≫
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