50代でコロナ失業、そして独身。「死ねないから生きてるんスか?」と言われた私が、出会って2ヶ月でプロポーズされるまで
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:マーガレット佐々木 (ライティングゼミ 2026年1月コース)
- 無知という名の暴力を振るう青年
「マーガレットさんって、何のために生きてるんスか? 人生に楽しみとか、あるんスか?」 息子より若い25歳の同僚男子に真顔で聞かれた言葉です。当時、私は50代。コロナ禍で正社員の仕事を失い、パートを掛け持ちして食いつないでいました。子育ても終え、帰宅すれば一人。そんな私を見て、彼は悪気のない「純粋な疑問」を抱いたに過ぎません。
怒る気力さえ起きませんでした。彼にとっての私は「死ねないから生きているだけの存在」に見えており、私自身もまた、その残酷な現実を否定する言葉を持ち合わせていませんでした。 「私が死んだら、誰か悲しんでくれるかしら」「同意書にサインできる家族がいないと、手術も受けられないのよね……」 漠然とした不安を取りあえず棚上げにして日々の仕事に追われる毎日。かつての私のように「ひとり」という深淵を覗き込んでいる大人世代は、決して少なくありません。
- 「総代」というプライドが招いた、迷走の7年
私の人生は、常に「全力投球」でした。二人の息子が小学生になったのを機に正社員として仕事復帰。さらに翌年には働きながら夜間の専門職大学院へ入学。その2年後、同期170名の修了生を代表し「総代」に選ばれましたが、当時の夫が放った言葉は冷酷でした。
「家族を犠牲にしてやったことだ。そのくらい当然だろう。褒めてでもほしいのか?」
仕事と学業の両立だけでも死に物狂いだった私を支え、家事育児を担ってくれたはずの前夫の真意を知り、信頼関係が一瞬で崩れました。そこから「離婚」を見据えた準備を始め、ようやく独身に戻れたのは50歳。希望と解放感に満ちて登録した結婚相談所でしたが、当時の私はまだ気づいていませんでした。「大学院総代」「英語堪能」「料理自慢」……そんな職務経歴書のようなプロフィールを並べ立てる傲慢さが、どれほど相手を遠ざけていたか。2年在籍して1年以上マッチングゼロ。そうして7年という歳月が、何の手応えもなく砂時計のようにこぼれ落ちていきました。
- 火傷の傷跡が教えてくれた、孤独の正体
結婚相談所に失望した私が、次に挑んだのがマッチングアプリ。相談所のような「入籍」をゴールにしないことで、リベラルで対等な関係が築ける人と会えるかもと期待したものの、そこで待っていたのはさらにシビアな現実でした。一番辛かったのは、コロナ禍に自宅の台所で右上腕に大火傷を負い、2ヵ月入院した時のことです。勤務先からは、「退院日を退職日とするので知らせるように」との退職勧告が届きました。就活のため、病室のベッドで半分動かない腕を無理やり持ち上げキーボードを叩くのがどんなに心細かったことか。そんな矢先、当時付き合っていた男性からも別れを宣告されました。火傷治癒後に残ったケロイド状の傷跡が気持ち悪い、というのが理由でした。「ごめん、俺そういうグロいの……無理」
「結婚を前提としない」恋愛の、なんと脆いことか。家族ではない恋人にとって、相手の怪我は単なる「リスク」。「損切り案件」でしかありません。この出来事で「自由」という言葉の裏にある「無責任」の恐ろしさを、私は身をもって知ったのです。
- 「看取ってほしい」から「看取らせて」への大転換
そして婚活6年目。最愛の父が90歳で亡くなりました。ホスピスの枕元、言葉を発することも、手を握る力も亡くなった父は、最期に母の手に自分の手を重ねたそうです。その話を聞き、やはり私は自分の最期の時まで、互いに手を取り老いていけるパートナーを探そうと決心しました。
そうして出会ったのが今の夫。彼は前妻を亡くし、両親の介護も終えたばかり。「家族への責務は全て終えた。今度は自分を看取ってくれる人を探したい」それが、彼の婚活を始めた動機でした。正直なところ「なんだ、介護要員が欲しかったのね」という疑念がよぎりましたが、彼の気持ちは付き合うにつれ変化していったそうです。プロポーズの時には、こう言ってくれました。
「初めは、『私を看取ってくれますか』とプロポーズするつもりでした。でも、大切な人を看取る辛さをアナタには味わわせたくない。だから私に、アナタのことを看取らせてください。それが私のプロポーズです」
涙が止まりませんでした。自分が看取られることより、私の最期を背負うという「覚悟」を見せてくれた夫。 それは私がずっと男性に求めてきた「強さ」だと思いました。50代からの結婚は、若い頃のような「生の爆発」ではありません。それは、お互いの人生という物語を、自分たちなりに最高に美しい形で「完成」させるための約束なのだと思います。
- 幸せになるのは、今すぐでいい
令和の昨今、結婚の形も、男女関係の在り方も、女性の幸せの形も多様化しています。ですがここで今一度注意していただきたいのが、「結婚」と「入籍」の違いです。「結婚をゴールにしないこと」は、男性にとって「責任と覚悟を放棄する権利」ですが、女性にとっては「嫁としての義務から解放される免罪符」を意味します。つまり、お互い「結婚をゴールにしない」ことにメリットを感じてはいるのですが、その方向性に大きなズレがある。――ここにも婚活界のマリアナ海溝が、深く静かに横たわっています。
アラフィフ世代になると、女性は愛されることを望んでも、若い頃のように「入籍」それ自体に夢もロマンも抱きません。なぜなら、その法的な拘束による様々な不自由も知っているから。加えて、「入籍」を求められると、パートナーから将来の介護を期待されているような重責まで感じてしまいがちです。一方、男性にとって「入籍」は、女性に責任や覚悟を示そうとする誠意であって、パートナーを「あるべき責務」で縛ることを想定していません。ですからパートナー候補の方には、ある程度早い段階で、相手の求める家族の形や、相手に期待する関係性について話し合っておくことで、かつて私が味わったような悲劇を回避できると考えます。
さて、出会って2ヶ月。57歳の誕生日にプロポーズを受けた時、私は心の中でかつての同僚に答えました。「私は、この人との人生を一緒に完成させるために生きているの」と。
幸せの扉を開くのに、遅すぎることはありません。 もし今アナタが「自分が何のために生きているのか」「何を楽しみとして人生を送っているのか」自信を持って答えられないなら、ぜひ勇気をもって新たな一歩を踏み出してください。その先には「今が一番幸せ」と胸を張れるアナタがきっといます。今まで充分頑張ってきたのですから、今すぐ幸せになっていいのです。
この記事は、アナタへエールです。アナタが人生の「第二章」を書き換えるきっかけになれるのなら、これ以上の喜びはありません。
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