その旅が人生を変えた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:井上あやの(2026年4月開講・京都/通信・2週間集中コース)
「その旅の何が、そんなに大きな決断をさせたんですか?」
そう聞かれて、私はすぐに答えることができなかった。スリランカへの旅の何が、25年間勤めた会社を辞めると決めさせたのか。うーん、何が……。いくら考えても、
「その旅で経験したことすべてが」
という答えしか出てこなかった。
その旅は、まさに私の人生を変えた。
2024年2月に、スリランカにリトリートで1週間行った。リトリートなので、観光地を忙しく見て回るというよりも日常から離れて心と体を癒す旅で、3年前から学び始めた、インドやスリランカ発祥の伝統医学であるアーユルヴェーダがテーマの旅だった。
2023年秋にその旅の募集があった時に、アーユルヴェーダの本場であるスリランカに行ってみたいという気持ちと、この旅に参加することで自分の未来が何か変わるような気がして、直感で行くと決めた。2月は会社の長期休暇の時期じゃないから休みが取れるかなとか、家族に相談してからとかは全く思わず、参加すると決めてから上司や家族に話した。
2月のスリランカは気温が30度ぐらいで、滞在中ずっと良い天気だった。オイルマッサージを毎日受けたり、現地のアーユルヴェーダ医師からスパイスのことを教えてもらったりと、アーユルヴェーダおたくの私には夢のような1週間だった。とにかく毎日が楽しくて、朝から晩まで幸せな気持ちでずっと笑って過ごしていた。
1週間の予定を終えて日本に帰る飛行機の中で、旅で体感したことをしみじみ振り返っていた。ホテルの敷地内を自由に動き回る野生のクジャクやオオトカゲ、新鮮な食材を使った野菜と豆が中心の料理、オイルマッサージを担当してくれたセラピストの優しさにあふれた笑顔、鳥たちの鳴き声で目覚めた朝、原住民の魂を込めた踊り、ボートサファリの休憩中に見た真っ赤な夕日、湖を泳ぐ象の親子、出会った現地の人たちの純粋さ、一緒に旅をした人たちとの会話……。あらゆる瞬間を一つ一つゆっくり噛みしめながら、この旅に来られたことに深く感謝していた。
すると、突然涙がはらはら流れ落ちてきた。とにかく流れ続けて、止まらなかった。その涙は、間違いなくこれまで生きていた中で流したことのない種類の涙だった。歓喜の涙だった。もしその涙に色があるとしたら、たぶんキラキラ輝く金色だったと思う。そして、
「私はアーユルヴェーダが本当に大好きなんだ!」
「このすばらしいアーユルヴェーダを仕事としてたくさんの人に伝えたい」
という思いが、心よりもずっと奥深くの場所、魂の底からすごい勢いで湧き上がってきた。
私は飛行機のテーブルに突っ伏して、とにかく泣き続けた。自分の使命に出会った瞬間だった。もし周りに人がいなければ、立ち上がって両手を広げて喜びを全身で表現していたと思う。
歓喜の涙をどれぐらい流していたか分からない。しばらく泣いていたら自分でもびっくりするぐらい落ち着いてきて、今度は静かな固い決意が私の中に生まれた。会社を辞めて、アーユルヴェーダを伝えることを仕事にしよう、そう決めた。
そして、静かな固い決意を持った日から1年4か月後に、私は25年間勤めた会社を辞めた。恵まれた環境だったし、やりがいのある仕事で楽しかった。不満も特になかった。
辞めることを同僚や家族に伝えたら、
「勇気あるね」
「井上さんは、定年までいる人だと思ってた」
「今までのキャリアがもったいない」
「もう少し早く相談されてたら、間違いなく反対してた」
など、いろいろな反応があった。どんな反応があっても、私の気持ちは揺れ動くことなく、いたって落ち着いていた。数えきれないほどたくさんの経験をさせてもらった会社には、心から感謝している。と同時に、会社を辞めたことは今でも一ミリも後悔していない。
飛行機の中で流した歓喜の涙は、私の魂の奥底でずっと静かに強烈な光を放っている。そして、何があっても揺るがない、いつでも立ち戻れる軸になっている。何もないところから自分でビジネスをやっていくのは、正直孤独に感じることもあるし、悩むこともある。そんな時はいつも、金色に輝きながら流れ続けたあの歓喜の涙のことを思い出して、アーユルヴェーダを伝える使命という原点に戻れている。
今あなたには、いつか行ってみたいと思っている場所があるだろうか。行ってみたいけれど、ついお金がないからとか、仕事の休み取れないしとか、行かない理由が先に頭に浮かぶかもしれない。でも、行ってみたいと心が動いたことをまず大事にして、その場所に足を運んでほしい。「いつか」をそのままにしたら、永遠にいつかのままで終わってしまう。見える景色、感じる空気、聞こえる音、出会う人や動植物、交わす言葉、食べる物、それらに触れて感じること……。その旅はあなたの人生を変えるかもしれないですよ。
<終わり>
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