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SNSキモいけど、実物イケメンですね

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:石川隆敏(ライティング・ゼミ)

 

いきなり、キモいと言われた

 

「SNSだとキモいけど、実物はめっちゃイケメンですね」

 

初対面の男性から、そう言われた。

 

東京、代官山。店のなかに、螺旋階段をまるごと1本入れてしまったような、ぜいたくな作りのカフェだった。オレはホットのカフェラテを両手で持ったまま、3秒くらいフリーズしていたと思う。

 

褒められたのか。けなされたのか。

 

とりあえず、両方だった。

 

ずいぶん見る目のある人たちだな

 

そもそもオレは、この日この人たちに会う予定なんてなかった。

 

家族でやっているタカファミリーのInstagramに「いま東京にいます」と書いたら、「会ってみたいです」と連絡をくれた人がいた。それがこのご夫婦だった。オレは妻が2人いる。第1夫人のえりさまと、第2夫人のあやさま。子どもは4人いる。一夫多妻という珍しい家族の日常を、赤裸々に動画で語っている。そういうアカウントだ。それを見て「ただものじゃないと思った」らしい。ずいぶん見る目のある人たちだな、と思いながら会いに行った。

 

会って3分で、見る目がないのはオレの方だとわかった。

 

旦那さんは、夏らしい白いポロシャツにハーフパンツ。爽やかさを絵に描いたような格好だった。仕事のできそうなイケメンが、そのまま夏らしさをまとってやってきた、という感じだ。

 

法律を扱う仕事をされていて、話し方が静かなのに、言葉の置き方に芯があって、いちいち正確だった。仕事ができる人特有の、あの余裕と余白のある喋り方をする。

 

奥さまは医療従事者で、そのうえご自身でも事業をされている方だった。何を着ていたかはもう思い出せないけど、ただ「代官山を歩いていて一番しっくりくる人」の服装だった、という記憶だけがある。洗練という言葉は、この人のために作られたに違いない。

 

美男美女で、しかも2人ともたくさんお金を稼いでいるパワーカップルで、そのうえ人格者だった。

 

神さまは、たまにこういうことをする。

 

失礼を承知で、踏み込んだ

 

3人で話しはじめると、2人はぽつぽつと悩みを打ち明けてくれた。中身はここには書かない。それはあの2人のものだからだ。

 

ただ、聞いているうちにわかったことがある。この2人は、お互いをものすごく大事にしている。大事にしすぎて、言えなくなっていることがある。

 

だからオレは、初対面のくせに、ずかずかと踏み込んだ。

 

思ったことを、そのまま言った。オレの家も特殊な家だから、夫婦の話については、たいてい世間の常識の外側から言うことになる。失礼だったかもしれない、と話しながら何度か思った。

 

怒られると思っていた

 

そのときだ。

 

旦那さんが、まっすぐこちらを見て言った。

 

「SNSだとキモいけど、実物はめっちゃイケメンですね」

 

嬉しかった。

 

理由は、たぶん普通の人が思うのと違うところにある。

 

この手の話は、逆のパターンをよく聞くのだ。SNSではキラキラしているのに、実際に会ったらぜんぜんだった。あの人、加工と言葉づかいだけで生きてたんだね。そういう感想を、オレは何度も人から聞いてきた。

 

うちは、逆だったのだ。

 

なぜキモいのか、白状します

 

しかも、これはオレの努力の成果ではない。単に、SNSのオレが本当にキモいだけである。

 

正直に書く。うちの動画に映っているオレは、かなりキモい。第1夫人のえりさまと、第2夫人のあやさまの前でだけ発動する、甘えモードのオレだからだ。声が1オクターブ上がる。デレデレする。子どもみたいなことを言う。つまりあれだ。甘えているわけだ。全国甘えん坊検定、1級である。

 

その顔のまま、カメラを回している。

 

あれは、外に出す顔ではない。それを、あえて外に出している。

 

人はたぶん、1つの塊ではなくて、面がいくつもある多面体だ。仕事のときのオレは、あんな声では喋らない。数字の話をするときのオレは、たぶんそれなりに切れている。ただ、その面をわざわざ撮ってはいない。撮っているのは、家族に甘えている、いちばん締まりのない面だけだ。

 

だから「キモい」は、わりと正しい評価だと思う。ありがとうございます。

 

その夜、メッセージが届いた

 

そして、そのうえで「実物はイケメン」と言われた。

 

でも、それが嬉しかった本当の理由は、その夜に届いたメッセージのほうだった。

 

旦那さんから、こう書いてあった。

 

「顔とか、雰囲気とか、オーラの話じゃなくて。生き方が、イケメンですね」

 

うわーーーーーーー、と声が出た。

 

そして、メッセージはこう続いていた。

 

「妻に言おうと思っていたけど、ずっと言えなかったことがあって。それを、今日タカさんが言ってくれました。初対面なのに、ちゃんと配慮しながら言ってくれて、すごく良かったです」

 

イケメンかどうかは、自分では決められない

 

念のため書いておくと、オレは戦略でキモくしているわけではない。

 

「あえてダサいところを見せて、ギャップで勝つ」みたいな計算ができる人間なら、もっと早く成功していたと思う。あれは計算ではない。えりさまとあやさまの前だと、ただ本当にああなってしまうのだ。そして、なってしまったまま、カメラを止めなかっただけだ。

 

隠さなかった。それだけしかしていない。

 

オレは今、30代だ。

 

若さと顔で勝負ができる時期は、たぶんもう終わっている。だからここから先は、生き方のイケメンでいるしかない。それなら自分で決められることだから、まだ勝負になる。

 

ただ、ここでひとつ問題がある。

 

生き方がイケメンかどうかは、自分では判定できないのだ。

 

ドラゴンボールに、こういう場面があったと思う。フリーザ様が強すぎて、クリリンにも悟飯にも、その強さがまるで測れない。桁が違いすぎると、人はもう相手の大きさを読めなくなる。それどころか「こいつ、たいしたことないんじゃないか」と勘違いすることさえある。

 

強さを測れるということ自体が、実力のうちなのだ。

 

だから、あの日オレの生き方を「イケメン」と言い当てたのは、あのイケメン旦那さんの器がでかいからだ。オレの手柄ではない。初対面の相手にずかずか踏み込まれて、腹を立てるどころか「良かったです」と言えてしまう人だから、こちらの中身まで見えたのだと思う。

 

生き方がイケメンかどうかを見抜けるのは、生き方がイケメンな人だけだった。

 

オレにできることは、2つしかない。

 

生き方を磨くこと。そして、キモい面まで全部さらけ出すこと。

 

隠していたら、見抜ける人が目の前に来ても、なにも起こらない。

 

キモさは、たぶん一生直らない。えりさまとあやさまの前では、この先もデレデレしていると思う。

 

でも、そのキモさごと、全部さらけ出しておく。

 

そうしておけば、いつかまた、それを見抜ける人が向かいの席に座ってくれる。ホットのカフェラテを飲みながら、こう言ってくれるかもしれない。

 

「SNSだとキモいけど、実物はめっちゃイケメンですね」

 

そのときオレは、もう3秒もフリーズしないでいたい。

 

《終わり》

 

 

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