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25m泳げなかった私

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:草野 香(26年9月ライティングゼミwithAI)

 

「私は前世、魚だったかもしれない」

「は?」

友人が発した言葉を理解できなかった。

魚って何?水の中ってそんなに楽しいの?

 

幼い頃、海で溺れた記憶があるからだろうか。このまま死んじゃうのかなと思った記憶は微かにある。

 

小学生になると水泳の授業があった。周りはすいすい泳げるのに私は5mすら泳げなかった。

「なんでみんな泳げるの?」

スイミングスクールに行ってた?親に教えてもらった?センス?天性のもの?

 

泳げる人からしたら、5mなんて壁を蹴れば泳ぐとも言わない距離なのだろうが、私はどうにも進まなかった。

泳げない私にとって「泳げない」という事実は甘くなかった。

 

暑い日が続く夏休みの午後、みんなは楽しくプールに行く中、それに加えて午前中には補講という25mを泳げない子どもに対してさらなる時間が強要されていた。1日2回も学校に行って水の中に入るという過酷な日々だった。

 

もちろん私は例に漏れず、対象となっていた。

5mが必死の私にとって、25mなんてとんでもなく果てしない距離なのに。

 

そんな私にとって、夏休みは全然楽しいものではなかった。

もう何の記憶も残っていないが、いやいやプールに通っていた覚えはある。

消毒槽の匂い、なんともいえない水の中の音……泳げない者には恐怖でしかなかった。

 

そしてこの時の私は思ってもいなかった。この感覚を大人になってまた味わうことになるとは。

 

消毒槽の匂いが今でも鼻に残っている。

水に入る前から体が固まった。25mのコースがまるで海に見えた。

 

それでも私は通い続けた。何が正しいのかわからないまま、ただただ水を掻いた。

何日通っただろう。そしていつの日か必死に25mを泳ぎきり、補講を卒業できた。

「泳ぎきった」という達成感はあったが、泳ぎが好きになることはなかった。

「泳げた!」という達成感より、もう補講に行かなくてもいいという思いのほうが強かった。

 

その後、私の通った中学、高校にはプールがなく、願ってもないありがたい環境だった。

「暑いからプールに入りたい」という子もいたが、私には天国だった。

だから私は小学生以来、真剣に泳いだ記憶がない。

大人になった今も水の中は怖いままである。

ただ泳ぐことは得意でないが、全く泳げないということはないと思っている。

 

 

そして今、私はライティングという新しいことに挑戦している。

2000字なんて文章を書いたことはない、というか気にして書いたことがない。

必死に作文用紙を埋めたのは、読書感想文くらいだろうか。

 

今回、講義を受け実際に書きながら、過去に何か同じように感じたことがあると思っていた。

 

水泳だ。

水を掻いても掻いても縮まらない距離。

私にとって2000字というのは、小学生のころの私が感じた25mを泳ぐという果てしない距離と同じということに。

 

書いても書いても埋まらない距離。

 

私は前世、魚だったのかもしれない。

ただしそれは悠々と泳ぐ魚ではなく、水面をはねながらそれでも前に進もうとしている魚だ。

 

手が止まった瞬間の感覚、書いた文章を消したときの虚しさ、2000字に到達せず文字数ばかりを確認している画面……文章を書けない私だ。なかなかゴールにたどり着けない。

 

書ける人からしたら大したことない文字数なのだろう。

「そのうち書けるようになる」とも言われた。

 

でも、無理ではない距離なのかもしれない。

慣れないことはできない。慣れたらできるようになる。

誰でもできないことをできるようになった経験はある。

 

今回のライティングは水泳とは違い、自分でやりたいと思い始めたこと。スタートラインは違っている。

しかし、まだまだ私は、義務感の中で内容を考え、文字を連ねている。

どうしたらそんなにうまく書けるのだろうと提出されている文章を見て思っている。

 

今は5mしか泳げなかったときの私と同じ。

ライティングはどうなるだろう。

 

「今は目の前にある課題提出をこなすのみ」になっているが、書くことが楽しくなるようになりたいと思う。いつか魚のようにすいすいと書けるようになる日を夢見て。

 

≪終わり≫

 

 

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