目覚めなくてもいい
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:吉田実香(26年9月ライティング・ゼミwith AI)
私はいつも、白昼夢の中にいる。
いやいや、そんなわけはない。
ちゃんと起きているし、真面目に仕事をしているつもりだし、現実世界を生きているつもりだ。
それなのに、いつも夢の中にいるなんて……。
どうしてあの人は、いつも人の話をちゃんと聞いていないんだろう?
どうしてあの人は、普通に聞いていればわかるようなことが理解できず、何度も質問するのだろう?
どうしてあの人は、メモも取らずに平気で何度も同じことをきいてくるんだろう?
会社での、いつものあるある。
自分の説明の仕方が悪いのかと丁寧に説明してみたり、わかりやすいメモを作成して渡してみたり、いろいろ工夫をしてみても、同じことが繰り返される。
そういうことが積み重なっていくにつれて、その人を見下す気持ちになってしまう。
いいところもたくさんあるはずなのに、それはまったく見えなくなってしまう。
そうなると、もうその人が何をしても気にくわない。
何かにつけて、心の中で悪態をつき、イライラしてしまう。
でも、職場でイライラしている私は、変幻自在な女優だ。
私にしか演じきれない、さまざまな役を演じているのだ。
しかし、女優を自覚する前は、イライラしたり人を見下したりしてしまう自分は、器が小さくて性格が悪いのだと悩んでいた。
でも、あっちがちゃんと仕事をしないのが悪いんだし! と開き直る。
でもまた、自分のドロドロした感情に嫌気がさし、自分を責めてしまう。
何様のつもりなんだ。
そんなこんなの、負のループから抜け出せずにいた。
しかし、最近Audibleで『脳を休めればすべてはうまく回り出す』(大嶋信頼著)という本を聞いていたときのこと。
「これだ!」という答えと出会えた。
この本によると、現代の情報過多や複雑な対人環境によって、脳に炎症が起きているとのこと。
その炎症によって、現実とは異なる白昼夢に入り込んでしまうのだ、と。
白昼夢とは、「自分の分身」を作り出してしまう状態。
他人が自分の分身になってしまうから、自分と同じ理解力や常識がないことが許せなくなってしまうのだ、と。
たしかに。
他人に自分と同じことを求めてしまう。
当たり前だけれど、自分と他人は違う。
それは、頭ではわかっているけれど、白昼夢の中ではそれに気付けない。
自分の常識が他人にも常識とは限らないし、自分の能力が他人にも必ず備わっているわけではない。
もちろん、その逆もしかり。
人の時間を奪うことは悪、人の手をできる限り煩わせたくない等々の私の信念は、他人の信念ではない。
人の話を真剣に聞かなくてもいい、わからなければ聞けばいい、頼れることは頼ればいい……、そういう信念の人だっている。
よほど非常識ではない限り、とはいえその常識・非常識の判断も難しいところではあるけれど、信念の良し悪しなんて決められない。
だから、感情に振り回されそうになったら、まずは白昼夢の中にいると気付くこと。
他人にイライラしたら、「自分の分身を作り出してしまった!」とも。
そして、それは脳の炎症のせいだから、仕方がないのだとあきらめてみる。
そうしたら、自分を責める負のループに陥ることは避けられるし、他人は自分ではないから自分と違っていいんだよ、と。
そして、なにより、白昼夢の中にいることに気付いたら。
つまり夢の中にいるのだから、その私も私の分身ともいえる。
夢の中の私は、私であって、私ではない。
だから、何でもできる。何をしても自由。
そうだ、夢の中の私は、女優さん。
舞台の主演女優として、唯一無二の表現者なのだ。
それならば、その役をとことん演じて、楽しもう。
夢でイライラしているのなら、短気で怒りっぽく、腹黒い役を演じきろう。
会社の人がまた同じことを聞いてきたら、笑顔で教えつつ、振り返って誰にも見られていないときには、表情とオーラで怒りを表現し、その人への罵詈雑言のセリフを心の中で叫ぼう。
いやいや、せっかくの夢の中の自由な私が、怒りを募らせていくなんて、もったいない。
もっと楽観的で軽やかな役を演じてもいい。
切り替え上手なさっぱりとした性格の女性を演じてみよう。
そして、業界を牽引する格好いいビジネスパーソン役とか、定時で仕事を終えて颯爽と会社をあとにしてジムでストイックに鍛えている役とか、週末には大自然の中の別荘で優雅にくつろいでいる成功者の役とかを演じてみよう。
ついでに、どの役であっても、すごく美人でセンスのよい設定にして、気分を上げよう。
そうだ、こうやって、理想の自分を演じ続けていこう。
演技力に磨きをかけていこう。
夢の中で演じ続けた役は、きっと現実になる。
そう思うと、脳の炎症バンザイ!
白昼夢バンザイだ。
白昼夢からしっかり目覚めて現実を見つめなければと思っていたけれど。
目覚めなくても、いいのだ。
《終わり》
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