スピードの時代に逆行するけれど
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:眞水純子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「行ってきます。行かせてくれて、ありがとう」
羽田空港まで送ってくれた息子と夫に、軽やかな気分でこの言葉を伝えた。これから青森に飛び立つのだ。久しぶりに会う友人と青森の奥入瀬渓流を楽しむために。
仙台在住の友人とは青森空港で待ち合わせ。私は飛行機で、友人は自動車で。現地集合、そして現地解散。この自由な感じがとても心地いい。最近、大人になってからの友だちと旅することが増えている。趣味嗜好、目的が同じだと年齢や付き合いの長さは関係ないのだ。
しばらく会っていなくても、ありがたいことに今はSNSというツールがある。それを見れば日常の様子がわかるのだ。友人の投稿を見て、東北に行ってみたいとコメントしたことがきっかけで実現となったのだ。
今回の旅は、新緑の奥入瀬渓流。カメラ好きな私たちは、自然の中を自分たちのペースでじっくり歩き、美しい景色を好きなだけ撮影するのだ。時間からも開放されゆったりと心豊かに過ごすのだ。妻としてではなく、母としてでもない。一人の私として過ごす時間も必要だ。誤解がないように言っておくが、決して家族が嫌だというではない。たまには家の事から解放されてゆっくりしたい時もあるのだ。そんな時は自然の中に身を置くことをおススメする。雄大な自然の中にいると、悩んでいたことなんてちっぽけで、どうでもいい事に思えて来る。
初めての奥入瀬渓流は想像以上だった。写真を見てある程度イメージしていたのだが、そんなイメージを遥かに超えるものだった。奥入瀬渓流は、巨大なカルデラ湖である十和田湖から下流へと約14kmも続いている。全部歩くと5時間位はかかるらしい。14本の滝と変化に富んだ美しい流れ。そして渓流だけでなく、大きな奇岩とシダの群生。岩にも木にも橋の欄干にもあらゆる場所に生えている200種類もの苔たち。こんなに変化に富んだ風景は見たことがない。見どころ満載だ。全く飽きさせない。美しい風景は私の心をギュッと掴んだ。夢中になってシャッターを押した。歩けば歩くだけ新しい風景と出会うことが出来るのだ。次はどんな景色と出会えるのかワクワクが止まらない。気がついたらすでに2時間以上も歩いていた。自然の中にいると不思議と疲れないものだ。
フカフカと足の裏で感じる土の感触。踏みしめるとやわらかさが心地いい。新緑のやさしい光、キラキラ輝く水面、太陽を浴びて一斉に鳴いているエゾハルゼミ。
「来れて本当によかった」
そう友人に何度言ったことだろう。顔の筋肉が緩んでいるのがわかる。五感が全開だ。自然の音だけを聞き、自然から生まれたものだけを見る。とても贅沢な時間だ。きっと細胞も喜んで活発に動き出しているに違いない。
そんな中、人気の場所に車でさっと来ては写真を何枚か撮り、そしてさっと帰る人もいた。まるで目的地をまわっては集合写真を撮り予定通りにスケジュールをこなしていく修学旅行のように見えた。目的は果たしているが途中がすっぽり抜けている。行くには行ったが、何も心に残っていないのではないだろうか?
それぞれに事情があるとは思うが、出来るならば奥入瀬渓流は歩いてみることをおススメする。全長14kmもあるのだから一部だけでもいいので歩いてみて欲しい。ガイドブックに載っていない自分だけの感性に響くポイントがきっと見つかるはずだ。
疲れるかもしれないし、時間もかかる。だが、歩いているからこそ出会える風景がある。楽していては決して見えてこないものがあるのだ。
これはまるで天狼院のライティングゼミではないか。楽していては書くことが出来ないのだから。ライティングゼミで「ABCユニット」を学んだ。2000字の文章を第三者に最後まで読んでもらうためのスキルだ。だが、教えてもらったからと言ってすぐに書けるようになるわけではない。読みやすくするためのポイントや心構えも教わった。わかった様な気になるが、ポイントを「知った」だけなのである。知ることと、出来ることとは別物である。
「知る」→「わかる」→「できる」の段階があるのだ。「できる」になるためには、実際に書いてみるしかないのだ。書くことが思い付かなくても何とかひねり出し、選ばれなくても書き上げて毎週課題を提出するしかないのだ。そうすることでコツを掴んで行くのかも知れない。そのコツを使いこなした時にやっと「わかる」に進めるのだ。悩み苦しみながらも逃げないからこそ得られるもの。落ち込んでも立ち上がるからこそ見えてくる世界なのであろう。文章が「書ける」という新しい世界は。
時間がかかってもいい。楽をしないで一歩一歩自分の足で歩いて行こう。
奥入瀬渓流を歩きながら、そんな風に思った。
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